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第四十七章:二人で勉強

「あら、おかえりなさい……」

「……………」

「ちょっと! 何で無視するのよ!」


 大きなメイドさんに制服を(つか)まれた。――だって……ねぇ?

 姫華の着ていた服は、この格好で外に出れば確実に変な視線を向けられそうな派手で目立つ姿だった。


「姫華……よくそんな格好で外に出られるわね」

「可愛いでしょ~?」


 私の目の前でクルッとターンした。スカートがふわりと揺れ、裾をつまんで「ぴょこり」と頭を下げる。

 まあ、可愛くないと言えば嘘になる。


「確かに可愛いけど……」


 これに心を奪われるようになると、何かしら人生に負けたように感じるのは私の考えすぎだろうか。


「最近おばさんいないけど、何かあったの?」

「うん……社長さんが忙しいらしくって、年末までに終わらせる仕事が山

積みなんだって……」


 姫華は人差し指を唇に当て、


「じゃあ、寂しく無いように姫華ちゃんが一緒に寝てあげよう」


 私は丁重にお断りしたが――。この子、私ん家の鍵持ってるのよね。



 ---



 今日こそは部屋も片付け、ベッドのシーツも取り替え、準備万端――という完璧なタイミングで梨花が家に来た。


「今日は他に誰もいないの?」


 梨花はキョロキョロと家の中を見渡し、玄関から私の部屋まで一緒に来

た。


「親忙しくてねー」


 私は綺麗に片付いた部屋に梨花を入れ、ベッドの上に転がった。


「梨花っ……!」


 両腕を広げて、ギュッてして欲しいことをアピール。

 メガネ越しの瞳がこっちを向き、視線が交錯する。――が、梨花はとくに私に興味をしめさず、簡易テーブルを出して黙々とテスト勉強を始めた。


「あのー……。梨花?」

「今週末くらいは……、ね?」


 梨花に真面目な顔で返され、私はそれ以上何も言う事が出来なかった。



 ---



「ちゅぷっ……はっ……」


 とりあえず毎日しなくちゃならないキスだけは、勉強の休憩時間にしてくれた。勉強中の真面目な表情を崩し、トロ甘な愛らしい顔で私の唇を迎え入れてくれる。


「ぷはっ……。梨花ぁ、がっつきすぎだよ?」

「裕海のが気持ちいいんだもん」


 このまま二人っきりで眠れたらどんなに幸せだろう。朝起きたら目の前に梨花の寝顔が――的な展開。


「今日は徹夜かなー……。古文の範囲が全然終わんないし」


 私の夢は儚く崩れ去ったが、あと二週間もすれば冬休み! 冬休みはいっぱい梨花と一緒にいよう。


「裕海は? 解らないところあったら教えるよ?」


 抱きしめ合いながら勉強の話するのもなんだけど――


「科学教えて?」

「いいよ、私理数系得意!」


 梨花はガッツポーズをして、幸せそうに私にもう一度軽くキスをした。



 ---



 流石に徹夜で勉強するのは、眠気や疲れに邪魔され集中できたものじゃ無いが――休憩タイムにするキスが私のやる気をかきたてた。


「ちゅぅっ……。 はい、また一時間後ね?」

「どうせなら三十分周期にしない?」


 私の提案に梨花は(あき)れ顔で、


「それじゃ、勉強する時間無くなっちゃうじゃないの」

「そりゃあそうだけどぉ――」

「いいわ、する回数を増やしましょう」


 梨花は顔を赤らめ、フイとそっぽを向いた。――私このテストが終わったら、梨花といっぱいいっぱいキスするんだ……。




「ああ……疲れたわ」

「うぁー、もう朝かぁ……」


 窓から朝日が差し込み、部屋に電気が必要無くなった。


「流石に眠いわ……」

「じゃあ、ちょっと寝ましょうか?」


 これじゃ徹夜しても本末転倒だなあなんて思いながらも、徹夜明けのテンションで、梨花は私を抱きしめベッドに横たわった。


「柔らかくて――あったか~い……」


 梨花にしっかりと抱きしめられ、私は梨花の胸の中で最高の心地よさを感じ、ゆっくりと睡魔に襲われていった。

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