表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
40/132

第四十章:寝不足

 姫華がいつ戻って来るかと心配で、あまり深く眠る事が出来なかった。

 ――ってのは冗談で、寝る前に科学の教科書なんて読むから、頭の中を用語がぐるぐる回ってしまい、集中して眠りにつくことが出来なかったのだ。


「あれ? 裕海、眠そうだね」


 灯の元気そうな声に、私は「あと五分~……」などと意味不明な言葉を返し、灯に身体を揺さぶられた。


「こら――! 起きろー、ホームルーム始まっちゃうぞ~」


 身体を揺さぶられ、ほっぺたをうにーっとつままれ、耳元で「起きろ~」と言われたが、


「あとちょっと――」

 とかまた脱力気味に返答しようとしたのだけど、突然寒気がして目が覚めた。

 何!? 何今の! 

 首筋につららを押し付けられたような感覚に、思わず背筋がぞわっとする。

 そっと教室の斜め後ろに目をやると、冷たい眼をした梨花がこっちを睨んでいた。

 ……灯はそう言うんじゃ無いから大丈夫なんだけど。



 ---



 担任教師が来て、あいさつ前に嬉しそうな顔をした。


「あいさつの前に良いニュースがあるわよ。――なんと新学期に川村(かわむら)先生が戻って来ます!」


 教室中から喜びや感激の歓声が聞こえた。――川村先生。私の背後霊のせいで精神療養しなくちゃいけないからだになった人だ。

 胸の奥がきゅぅぅ……と痛む。川村先生のおかげで、そのいじめられていた子も、徐々にクラスに戻って来れたと言っていた。

 凄くいい先生だったからなぁ……。


「良かったね! 裕海」


 灯も嬉しそうに振り返った。

 私はできるだけ笑顔を作り、それに応じた。




 昼休み、教室の生徒は来週のテストに向けて参考書片手に昼ごはんを食べている人が多数だった。梨花も例外で無く、一人で黙々とお手製の単語帳を眺めている。

 灯は文田君の教室へ行っちゃったし、私はお弁当箱を空にすると、腕を枕にして一眠りすることにした。

 ――なんとかなるさ、うん。



 ---



「ふあっ!?」


 メイド服を着た姫華に、何故か踏まれる夢を見た。

 しかも何故か私は男の子の姿になっていて、嗜虐新たっぷりな目を向ける姫華に、「もっと踏んでください!」って懇願していた。

 ……誰よ、夢は現実を写す鏡って言った人。


 午後の授業はテスト対策だかで、模擬問題を解き続けると言う過酷な物だった。だが、授業をボサッと聞いているよりはかなり身につきそうだったので、私は真剣に取り組むことにした。




「ふへ~……疲れた」


 流石に二時間続けての模擬テストは心身共にくるものがあり、私は机に突っ伏した。


「蒔菜さん」


 梨花の声だ。でもごめん、今は起き上がれない。


「いつもの教室で待ってるから……」


 耳元で囁かれ、私はうんうんと頷いた。

 ……私はこの後、心から思った事がある。――寝かかっている時に頷いてはいけない。



 -----



「んん~……」


 寝ちゃったのか……。今何時だろ?

 時計は四時を回ったところだった。――ざっと一時間以上寝ちゃったなぁ……と、呑気なことを考えていたが――。


「ああ!」


 誰もいない教室で大声で叫んでしまった。いや、叫ぶしか無かった。


「梨花……!」


 私は記憶を辿ってみる。

 確かに授業終了後、梨花に呼ばれた。――いつもの教室。


 私は走った。全速力で、転ぼうが怒られようが構わない――梨花を裏切ってしまったと言う罪悪感から逃れるため、私はいつもの空き教室まで走った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ