表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/132

第四章:放課後

「裕海……どうしたの? すっごいやつれてるよ」


 昼休み、灯が心配そうな表情で私の席まで来た。

 授業中ずっと誰かの視線を感じるってのは、結構精神的に来るんだよ、うん。


「うん――大丈夫、元気元気~!」


 腕を振って見せたが、灯は表情を変えずお弁当を広げた。


「朝から委員長さんに何か言われた?」


 ギクッ 鋭いなこの子は……。


「気にしなくて良いよ~委員長さん、誰にでも厳しいし」


 私は氷室さんの席を見た。彼女は黙々と小説を片手に一人で食べている、目立ってたから気にして無かったけど――特別仲が良い友達とかいないんだな……。


「どうしたの、裕海?」


 灯がきょとんとした表情で私を見た。


「ううん、何でも無いよ」


 何だか今日のお弁当が、普段と違い味気なく感じたのは、気のせいだったのだろうか。



 ---



「んじゃ、私は部活行くから――先に帰ってて良いよ」


 放課後、灯はテニスラケットを持って教室を出て行った。練習が厳しいらしく、暗くなるまでやってるらしい。


「さて、私は――」

「蒔菜さん」


 普段通りキツい表情をした氷室さんが声をかけてきた。


「ちょっと良いかしら?」

「別に良いよ?」


 私は氷室さんに連れられ、普段使われていない空き教室に入った。


「ふぁ……疲れたぁ」


 氷室さんは朝と同じ、優しい表情に戻った。メガネを外し、肩を回している。

 疲れた、ってことは、優しい表情の方が素なのかな。


「蒔菜さん――その……してくれない――かなぁ?」

「え? 何をですか?」


 氷室さんはモジモジしながら、チラチラ視線をそらしたり唇を指で突っついたりしているけど――もしかして……。


「きっ……キスですか?」


 氷室さんは恥ずかしそうに頷いた。


「して……いっぱい、私に……」

「分かりました――」

「敬語止めてってばぁ……」


 ギュッと目をつぶる氷室さんの首に腕を回した。昨日の後輩ちゃん程はしなくて良いよね……?


「蒔菜さんが……これまでにしたキスで一番激しいのを頂戴……!」


 するんですか!? あのねっとりしたヤバいやつを?

 思い出しただけでクラクラしてきた。でも今回は私がするんだから、嫌になったら止めれば良いよね!


「じゃあ……するよ?」

「うん……蒔菜さん……」


 柔らかい唇が触れ合い、ふわふわした感じになってきた。少し抵抗あるけど――。


「んむぅ……」


 氷室さんの口の中に舌を突っ込んだ。流石に口の中舐め回すのは無理だけど、これでも十分満足してくれるよね?


「ちゅるぷ……」

「!?」


 氷室さんの舌が口の中に入ってきた。えぇ!? これじゃ私が舌抜いただけじゃ終われないよぉ……!


「んっ……んんっ――んぅ……」


 後輩ちゃんとのキスと違って、無我夢中に舐め回すと言うよりは大人しく――丁寧に舐めとるように氷室さんの舌が口の中を踊った。


「ぷはぁっ……!」


 唇を離し、私は思わず座り込んでしまった。――ってか……立てない!?


「大丈夫!? 蒔菜さん!」


 どうやら私は腰が砕けてしまったらしい、力を込めようにも――力が入らない……。


「ゴクん……」


 氷室さんが喉を鳴らした。私の事を危ない目つきで見下ろしている。


「あのっ……氷室さん!?」

「蒔菜さん……」


 氷室さんが私に覆いかぶさってきた。両手首を掴まれ、脚と脚が絡みつき、顔を紅潮させ近づけてきた――。


「やっ……ちょっと、氷室さん!」


 嫌――それ以上のことは駄目! でも――身体が震えて声が出ない……。


「あ……あ――」


 しばらく私の顔を眺めていたが、氷室さんはふぅっと溜息をつき、身体を離した。


「ごめんなさい、急ぎすぎたわ」


 氷室さんは普段の感情を込めない表情になった。


「気持ちよかったわ、また明日ここで会ってくださらない?」

「は……はい」


 氷室さんは教室から出て行った。私はそれから三十分ほどして、やっと動けるようになり、鉄のように重くなった足を引きずるようにして、やっとこさ教室を出た。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ