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第二十八章:永遠の愛

 放課後、午後の授業なんて聞いて無い、次のテストなんてどうでもいい。

 ――落第は困るけどさ。

 今私に必要なのは――、氷室梨花、ただ一人の愛する女の子だ。


「梨花」

「!? ええ、蒔菜さん、ちょっと!」


 まだ半数以上が残っている教室で梨花を名前で呼ぶ、バレる? 私は別に悪いことをしてるんじゃ無い、バレるって言う言葉は悪い事をした人が使う物だ。


「ちょっと来て!」


 動揺している内に梨花を教室から連れ出した。目をしろくろさせ、困惑したような顔をしていたが抵抗する感覚は無く、腕を引っ張れば同じ速度でついてくる。


 私は梨花を連れ、いつもの空き教室に入った。誰かが入った様子は無く、最後に来た時とまるで変わって無かった。


「……何よ」


 梨花は少し怒っているような声を出した。――私は梨花の顔を両手で支えると、愛の込もった熱いキスをした。


「んんっ……!?」


 最初は力を込めていた梨花も、徐々に力が抜け――しっかりと閉じていた唇を少し開いた。


「んんっ、コク……コクン……」


 舌を進入させ、梨花の口の中を暴れまわった。ここ数日分のキス欲を全て絡め、躊躇うことなく梨花に流し込んだ。


「んっ……ぷはぁっ……!」


 梨花は顔を紅潮させ、驚いた様子だったが、すぐに我に帰り無表情になった。


「何? キスがしたかっただけ?」


 私は梨花の肩を掴んだ。キスするためじゃ無い。男の人とかが良くやる、目を見て真剣さをアピールするってやつだ。この間やってたドラマでも社長に自分の意見を真剣に受け止めてもらうシーンで、真剣な目つきで見つめていた。……肩に手は置いて無かったけど。


「何……よぉ……」


 梨花は目をそらそうと必死だけど、私は必死に梨花の目を見つめた。

 ――真剣に向き合えば、きっと梨花も解ってくれるはず……!


「梨花、あのね……」


 私は全てを梨花に話した。背後霊の事、毎日キスしなくちゃいけない事。最初の告白をOKした理由だけは言わなかったけど、今現在もずっと梨花の事が好きって、それが真実だから。


 梨花は無表情で黙って聞いていたが、今現在でも――の辺りで顔を赤らめた。

 ――本当、可愛いなぁ。


「じゃ、じゃあ……裕海が別の人とキスしてても……私は黙って見てろって言うの!?」


 私は無言で梨花を抱きしめた。


「だからぁ……ずっとそばにいて? 梨花とずっと一緒にいれば、梨花以外の人とキスしなくて良いんだもん。私だって梨花とだけ――梨花とキスがしたいの!」


 抱きとめた梨花の頭が熱でも吹いたように、熱くなった。言ってから、私もちょっと恥ずかしくなる。


「もぅ、裕海ぃ……」


 梨花の顔が普段通りの、愛らしい表情を浮かべた。


「ごめんね、梨花……」

「もういいから、早くしよ?」


 梨花の腕が私の肩に回され、顔が近づいた。吐息のかかる距離。

 私はその唇を、自分の唇で受け止めた。


「んっ……」


 温かくて柔らかい感触。久しぶりに感じた――梨花の味、梨花の匂い。


「はむっ……んんっ……」


 舌を入れ合い、口の中をかき混ぜあう――これだ。――義務的なキスでは無く、私自身がしたいからするキス。心から気持ち良いと感じる事のできる、最上級のキス。


「ぷはっ……」


 お互いの舌を絡めながら、ゆっくりと抜き取った。トロ~んとした表情のまま目が合い、何となく照れくさい。

 でも今は、そんな照れくささも凄く心地よくて、


「もう他の子とキスなんてしないでね?」

「時と場合によっては……駄目?」

「もう! 裕海!」


 夕日が差し込んだ静かな教室で、私たちは学校が施錠されるギリギリの時間まで一緒にいた。

 このまま何も起こらず、ずっと梨花と一緒にいられるよう願いながら。

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