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第二十章:無防備

「ところでさ、裕海は何で委員長さんとそういう関係になったの?」


 灯の疑問は最もだ。つい数週間前まで、普通の恋愛感情持ってた人が急に女の子を好きになるなんて、何かあったと思うに違い無い。

 はっきり言って、私だってそう思うし。


「ん――前に私、女の子と毎日キスしなくちゃ治らない病気の話、したでしょ?」

「してたね――ええ!? まさか!」

「病気じゃ無いんだけど、女の子と毎日キスしなくちゃならなくなって――二、三日は適当に済ませてたんだけど……四日目くらいかな? 梨花と初めてキスして――凄く気持ちよかった。それに、そこまで悪い気はしなかったんだよね」


 梨花から告白された事と、背後霊の話はしなくて良いかな。

 あまり突っ込んだところまで話して、逆にひかれたりしても困るし。


「それで――続けてる内に、ああ私はこの人の事が好きなんだなぁ……って」


 灯は表情をコロコロ変えながら私の話を真剣に聞いていた。


「じゃあもう、倉橋君のことは……」

「かっこいいとは思うけど、付き合いたいとは思わないかも」


 灯は脱力し、「ふへ~」などと溜息混じりの息を吐いた。


「実はさ……、倉橋君、前の彼女さんとは別れたんだけど、遠川さんに告白されて――OKしたみたいなんだよね」


 遠川さんに好きな男子が出来たってのは本当だったんだ。っていうか、倉橋君どんだけモテるのよ。


「はぁ~……。私も少しスっとしたぁ。今のこと裕海にいつ言おうって、ずっと迷ってたんだよね」


 灯は知ってたんだ。それで私にずっと黙ってたの……?


「灯はそのこといつ知ったの?」

「金曜日、帰り道で手繋いでんの見た」


 まさか遠川さんの貧血って告白成功の後遺症か?


「ちょっと不釣り合いにも思うけど」

「え~、どっちが?」


 そんな話をしていると、私と灯は教室についた。何の授業だか忘れたけど……まあ何とかなるよね?



 ---



 昼休みになっても、梨花は戻って来なかった。

 私は灯に梨花の様子を見てくると言い、灯は普段通り文田君のクラスに向かって行った。


「失礼しまーす」


 保健室の入ると、先生が机に突っ伏して昼寝をしていた。

 勝手に入って平気だよね? 保健室だし。


 カーテンが閉まっているベッドは一つだけで、他に人がいる気配は無かったので、私はそっとカーテンを開けてベッドの横に立った。


「りーんかっ」


 すやすやと眠る梨花の姿――こんな無防備な寝顔見たこと無いかもしれない。

 この間のお泊りの時はいつも私が先に寝ちゃったし――。


「可愛い寝顔……」


 顔を近づけたが、全く反応が無い。微かに聞こえる寝息が私の何かを刺激したらしい。


「梨花……」


 思わず私は梨花にキスしてしまった。柔らかい唇、程よく聞こえる寝息――そして無防備で可愛らしい寝顔。


「――――、」


 舌を入れた。全く抵抗しない梨花の口内を舐めまわすのも何か違う意味でドキドキする――これが俗に言うSっ気と言うものなのか?


「すぅ……すぅ……」


 頬をくすぐる梨花の寝息も、私の心を刺激する。梨花を求める私の身体はもう、止めると言う言葉が無くなっていた。


「――ん、――――ん」


 しばらく続けていたが、何か物足りない。

 自分だけ舌入れてもそのうち飽きてくる――っていうか、梨花よく起きないなぁ。


「ゴク……」


 少し私の頭にいけないことが浮かんだ。先生も寝てるし、こんな何しても起きない()を目の前にして、我慢も限界って事だ。


「梨花……」


 梨花のベッドに入り、身体をすり寄せた。流石に寝ている梨花を脱がす事は出来ないけど。

 私は制服の上を脱ぎ、梨花を抱きしめた。梨花は制服越しだけど、私は自分がやってることの背徳感もあり、鼓動も気持ちも高まった。


「梨花……梨花梨花梨花梨花、梨花ぁ!」

「つかまえた」

 

 突然梨花に腕を回され、私は身動きがとれなくなった。


「わぉ! 裕海ちゃんったらこんな格好で……だいた~ん」


 梨花にがら空きの背中を撫でられ、下着に手をかけられた所で流石に抵抗した。


「梨花! ここ学校!」

「その学校で脱いでるのはどこの誰かなぁ――?」


 梨花の発する声がいちいち艶っぽい。ああもう、声だけでもう何かドキドキする。


「寝込みを襲うなんて裕海ちゃんも、危ない子だなぁ。そう言う子には――」


 梨花も布団の中で制服を脱いだ。素肌がかなり露出し、その身体で私に抱きついてきた。


「んへぇ!?」


 思わず妙な声が出た。学校でこんなことしちゃうなんて……。


 色々な柔らかい部分が触れ合い、布団の中と言う体温のこもりやすい場所で正常な判断など出来るはずも無く、私は全身で梨花の身体を感じ、堪能した。――このままずっとこうしていたい。


 そう思ったが、世の中そんなに甘くなかった。


「こら! ベッドでそう言う事すんの止めなさい!」


 先生が呆れ顔でカーテンを開けた。怒ってはいなかったけど、溜息混じりにこう言った。


「早退して良いから、とりあえず服着なさい」

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