第十七章:お風呂
「ごめんなさいね、バタバタしてて……」
母は綺麗な服を着て、出かけて行った。父さんが長期出張に入ってから、度々こう言う事がある。
夫婦仲はそこまで悪く無かったと思うんだけどなと、若干気になる部分が無いこともないのだが。
私が気にしてもどうにもならないことなので、最近はあまり気にしないようにしている。
「ゆ~みぃ~……」
甘えるような声が、背後から奏でられる。
その声に引き寄せられるように振り返り――途端、私は思わずクラっと倒れそうになった。
梨花! それは駄目!
私服をダラ~んと着崩し、女豹のポーズって言うの? 良くアイドルとかが男の人を悩殺するとか言ってしてる格好――科を作る、とでも言うのだろうか、そんな格好で上目遣いをして、唇を人差し指でいじくっていた。
「今、二人っきりだよ? ねぇ~……早くしよ?」
背中を床に付け、身体をくねらせた。もう私の理性は限界レベルを超えていた――が、
「まず、お風呂入ってくる……! 沸いてるかな?」
私はとりあえず理性を冷まそうと、その場を離れたのだが――、
「一緒に入ろう?」
もう無理――限界、襲っていいですか?
そんな風に理性が飛びかけるほど、今の私は若干ハイになっていた。
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「同性でも、流石に恥ずかしいよぉ……」
「恋人同士で何言ってんのよ」
私は恥ずかしくて中々脱げなかったが、梨花はスルスルと脱いでいき――立派なボディを見せつけた。
――はぁ……やっぱ梨花、スタイルいいなあ……。
「ほらー、早く脱がないと私が脱がしちゃうぞ」
「分かったわよぉ……」
私も素肌を梨花にさらした。もう一目見ただけで、喩えようもない劣等感を感じてしまう。
「わぁー……。肌綺麗……」
「ひゃぅん!」
肩から腰にかけてのラインを躊躇無く撫でられ、ゾクゾクっとする快感と
ともにくすぐったさに襲われた。
「こことか……。凄い、ボディライン完璧じゃない」
「やめっ……くすぐったい――ひゃん!」
両手で私の腰の辺りを撫で回している、何か触り方がちょっとエロいよぉ……。
入る前からすっかり気分が高揚してしまう。
湯気がもうもうと立ち込めるお風呂場に入ると――もう正常な判断は出来なかった。
「梨花……」
「裕海……」
お互いがお互いを求め合う、必然だった。何も阻む物も無い、その美しい素肌をすり寄せ――愛しい相手の唇を求めた。――最初は大人しく、だんだん激しく……視界が霞む程の心地よさ、気持ちがいいなんて薄っぺらい言葉は軽く通り越し――快感と言う言葉が的確だった。
「んぅ、ん、んっ……」
「んんっ……ちゅっ……ちゅぅっ……」
もう身体は止まらない、理性もその行動を止めようとは思わない……ただただ自分の本能に従って――お互いを求め合った。
「ぷはっ……これ以上したらのぼせちゃうかな……」
「そうだね、頭クラクラしてきた――」
普段はそれで頭が冷めるのだが――ここはお風呂場であり、暑く、余計に気分が高揚するだけだった。
「裕海ぃ……」
「駄目、続きは後にしよ――流石に倒れちゃうよ」
浴槽に浸かってもいないのに、すっかりのぼせてしまい、私たちは一応シャワーだけ浴びて、お風呂からあがることにした。
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「はぁー……。涼しい」
「まさか秋に扇風機が必要とは思わなかったわ……」
普通にお風呂に入ったより、ひどく顔などが紅潮していたため、私は押入
れから扇風機を引っ張り出し、二人仲良く肩を並べ、風にあたっていた。
「裕海ぃ……、そろそろ続きしようよ~」
梨花に甘えられ、少し早いけど私たちはベッドに入る事にした。
気分は高揚し、聞かれるのが恥ずかしいほどに鼓動が強く打つが――その前に、決めておくべきことがある。
「先に取り決めね、絶対後々後悔するような事にはしないこと」
「分かったわ、裕海」
それだけは絶対だった。将来的に――いつかは私たちだって、この関係を終わりにして、別れるだろう。もしかすると、男性とお付き合いするかもしれない――もしくは凄く大切な女性と出会うかもしれない。そうなった時、私も梨花もお互いを恨まず――素晴らしい思い出として、私たちの関係を残せるように、身体的に問題のある行動は絶対にしないと心に誓ったのだった。
「でも、お触りはOKだよね?」
「……まぁ? そう言うムードだったら……」
今までで思ったが、私はかなり雰囲気に流されやすいタイプなので――梨花がその気なら多分OKしちゃうだろうな……。
「裕海――」
「梨花――」
軽いキスを数回交わし……後はもう――流れでいくとこまでいっちゃおうと思う……それではっ!