表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/132

第十一章:双海灯

 午後の授業には遅れなかったが、頭の中がほわ~んとして授業の内容は半分以上理解出来なかった。

 全身が甘々で、もうこのままとろけそうな気分――。


「裕海、行こう」


 灯に声をかけられ私は我に帰った。そうだ忘れてた――今日は灯と帰るんだっけ。


「手、つなご?」


 灯に手を掴まれ、私は灯と昨日行ったゲームセンターへと向かった。


「最近委員長さんと仲良いよね?」

「そ……そうかなぁ……?」


 大当たりなんだけど、私は何となくお茶を濁した。


「止めといた方が良いよ……。あの人――コレらしいし」


 灯は薬指同士をチョンチョンとくっつけ合った。――お姉さん指同士がくっついてるからこれは……。


「百合って事?」

「百合ってかレズだよね、この前も同じクラスの……えーと誰だっけ――ああ、遠川さんだっけ? あの子とも結構派手にやってたみたいだよ」


 ……本当、こう言う変な噂ってどこから流れるんだろう。


「前にも言ったけどさ……。裕海には、そっちには行って欲しく無いんだよね……」


 灯は歩きながら言葉を紡いだ。


「裕海と倉橋君……わりとお似合いって感じだし――四人でダブルデートってのもしてみたいし、裕海には倉橋君と幸せになって欲しい! ……それが――私の願いだから……」


 灯はゲーセンに着くまでそれ以降一言も話さなかった。



 ---



「えへへ! また取った~!」

「灯上手いな~」


 灯はUFOキャッチャーだけでなく、押し出す型のやつや、ショベルカーみたいなやつでも欲しいものを的確に取っていった。


「はい、裕海」


 昨日のうさぎの色違いを全色取ってくれた。黄色――白――薄緑、それから……水色。


「これには全て意味があるのを知ってるかい?」


 灯は自慢げに人差し指を立てた。


「黄色は金運、ピンクは恋愛運、白は新しい自分、薄緑は落ち着き、水色は癒し――。私もピンク付けよう。文田君ともっと進展出来るようにって」


 梨花はそれを知ってたのかな……。

 私は梨花と出会った時の事を思い出した。

 ――癒し……か。




「じゃあね、裕海」

「また明日」


 私たちは駅で別れ、私は碧町行きの電車に乗った。


「灯……今日は突然どうしたんだろう」


 電車の程よい揺れに……私は少し眠ってしまった。



 ---



「はぅっ……!」


 電車がガクンと揺れ、目が覚めた。電光掲示板を見ると次は碧町……危なかったぁ!

 電車が止まり、ホームに出ると心地よい風が吹いた。どこから飛んで来たのか、茶色くなった葉っぱが何枚か落ちていた。


「もう秋ね……ちょっと前まで暑かったのに」

「あっ! 裕海お姉ちゃん!」


 志央ちゃんが、薄茶色のメガネと白い帽子をかぶった女の人と歩いてきた。

 誰だろう、あの人。


「裕海ちゃん久し振り、分かるかしら?」

明美(あけみ)叔母(おば)さん!」


 どうしたんだろう、その格好……。


「やっと退院できたんだよ!」


 志央ちゃんは嬉しそうに私の周りをグルグル回った。


「先週末は志央を預かってもらって……ありがとうね」

「もう大丈夫なんですか?」

「まだ危ないらしいんだけど……。軽かったから、入院はそれほど長くは必要無いって――しばらく通院生活だわ……」


 叔母さんは鳩を追いかけている志央ちゃんを眺めた。


「それに……志央が心配だったから早めてもらったのよ……。あの子凄く心配性だから――ふふっ……誰に似たのかしらね」


 志央ちゃん――家ではそんな素振り、これっぽっちも見せなかったのに……。


「ママー! 裕海お姉ちゃ~ん!」


 志央ちゃんはこの間と同じ笑顔を見せ、私たちに手を振った。



 ---



 家に帰り携帯の履歴を見ると、灯から一つ二つメールが来ていた。

 しばらくメールを続けて、その日はそのまま晩御飯を食べ――シャワーだけ浴びて寝ることにした。

 そういえば……梨花の番号とアドレス知らないな。


「明日聞こう」


 私は疲れていたので、そのままゆっくりと夢の世界へ心身を溶け込ませた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ