桜川先輩 3
淳也にとって、理恵は妹と言う存在でしかなかった。彼女が好意を寄せているのは十分知っているがどうしてもそれ以上に思えないそれが本音だった。
俺の話を聞いた理恵は、思った通りの反応だった。あの表情からして怒っているんだろう。確かに、理恵は可愛くて常に好意を寄せてくれているのは分かる、けど、俺にとって理恵はどうしても妹にしか思えない。だから、最近、理恵の態度が俺にとって重くのしかかっているそんな気がしてならなかった。
しかし、香は俺のことを先輩として同じ楽器を演奏する仲間として接してくれた。だから、香にイケメンの彼氏が出来たと言う噂を聞いた時は驚いた。けど、実際は違った。そして、香の話を聞いた時、自然とあの言葉が漏れた。
「だったら・・俺が、やってやろうか?」
あの時の香の顔は本当に面白かった。驚きと恐縮が入り混じったなんとも言えない表情、しかし、あんなに必死に断るとは思わなかった。あれは、本当に俺のことを気にしているのだろうか、それとも、俺は、麟太郎に聞いてみた。
「淳也さん、どうしたんですか?こんな時間に?」
「あ・・悪ぃ・・麟太郎、ちょっと聞きたいことがあるんだけど・・・香についてなんだけど。」
「えっ?何?」
俺が香の彼氏役をするといった途端、麟太郎の顔色が変わってしばらく黙り込んでいた。
「おーい」
俺の声に気付いた麟太郎は、何時になく声を荒げていた。
「ほ・・本気ですか?」
「まぁ・・」
「やめといたほうがいいですよ。」
「なぜ?」
「なぜって・・・それって香と付き合ってますって、学校中に噂が・・・」
「それが?どうしたんだ?」
俺の台詞に麟太郎は切れた。
「だったら好きにすればいいじゃん!!」
そう言い残して麟太郎は、家の中に入って行ってしまった。何故だ?ま・・・いいか・・俺は一人家路についた。