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デートなのに

 最高の朝を迎えた。そして、最高の日になるんだろうか・・・勝手にそう思っていた私は、9時と言うのに既にギザニアの前に立っていた。するとそこへ会いたくもない。あの娘が・・・知代が雄二と一緒に現れたのだった。のっけから足払いを掛けられたような・・最悪の展開・・・ギザニアに隠れようとしていると私を彼女は目ざとく見つけた。


 「あら・・・イケメンと付き合っている香さん」


 「あ・・・知代・・・何よ」


 何もそこまで、嫌味たっぷりに言わなくても、そう思っている私の顔はかなり引きつっていた・・・それを見逃すはずもなく、すぐさまに私に突っ込んできた。


 「あれ~まさか一人?」


 もう・・・本当に嫌味な奴・・・でも、ここはうまいこと逃げておかないと・・・麟太郎が来るまでまだ一時間近くあるんだから・・・だから・・・


 「ええ・・まぁ・・」


 「あの彼氏は?まさか来ないわけないわよね~」


 私の言動に思いっきり揚げ足を取って、完全に勝ったと思ったんだろう、知代はあのいつもの勝ち誇った顔をし始めたその時だった。


 「何やってんだ?」


 「えっ?」


 その声がした方を見て、びっくりしたも何も・・・そこには麟太郎が立っていたのだ。多分、呆然と見ている私を見て、麟太郎は、クスリとわらった・・・そして


 「なんて顔してるんだ?」


 だってまだ1時間近くあるし・・・って・・・ふと、知代の顔を見ると完全に引きつっていた。面白いくらいに・・すると彼女は雄二の手を引いて


 「じゃぁ・・・」


 そういい残して、そそくさとその場から逃げて言った。すると、麟太郎は、親指で彼女らの方を指して


 「どうしたんだ?」


 「いつもの嫌味よ・・」


 「そうか?で?香は、何故こんなに早く?」


 そう言うと私の顔をジロジロと見始めた。少したじろいだけど・・浮かれてましたなんて言える訳もなく・・・麟太郎が何故早くついたのかを聞き返した。


 「それは、私の台詞よ」


 「あ・・おれ?・・今から朝メシを食おうと思って・・」


 麟太郎は、近くの喫茶店を指した。


 「えっ?」 


 「あそこのモーニングがいいんだよ。一緒に行く?」


 「うん・・」



 その頃、理恵は、大手前音楽堂へ向っていた。彼女にとっては、

奇跡としか思えなかった。それは、今までこうやって二人で会おう・・・そう何度も言ってが、淳也は、何か理由をつけて、会うことすら出来なかった。だから、理恵としては、時々、淳也と一緒に帰るくらいしか手はなかった。それが、今、二人きりで会うことが出来る。そんな気持ちで一杯だった。






 10時少し前くらい、食事を終え喫茶店から出た麟太郎と香は、目の前の光景に驚いていた。そこには、理恵と淳也がまさに大手前音楽堂へ入って行く瞬間だった。香にとっては、なんとなく分かっていたんだけど、それが確信へと移って言った瞬間だった。

 やっぱり・・・あの二人・・付き合っているんだ・・・そうなんだ・・・だから、この間、麟太郎にあんなこと言えたんだ。ふと、麟太郎を見ると二人の光景から目を逸らしていた・・・


 麟太郎にとっては、見たくない光景だった。だから思わず目をそらせてしまった。そこへ、鈍い香は


 「どうしたの?」


 「あ・・ああ・・」


 変な質問しやがるから、答えに困った。そして、


 「なんでもない・・・ギザニアへ行こう。」


 「あ・・うん・・・」


 こうして、私たちは、ギザニアに向うことにって・・・なんでもない・・って・・・あの光景見てそんなこと言うなんて・・私の心にも少し暗雲が立ち込めてきた。



 一方、淳也は、気付いていた。香と麟太郎が一緒にいたのを、丁度、そこへ理恵が来たのだった。


 「待った?」


 「いや・・・行こうか」


 「うん」


 やはり、あの二人は付き合っていたのか・・・そんなことが時々思い出されていた。




 理恵も気付いていた。麟太郎と香を、そして、うまくいっている様子を見て、喜んでいた。


 


 映画を見終わった二人は、遅めのランチを取っていた。そして、香は麟太郎の様子がおかしいことに気付いていた。やっぱり・・・私じゃないんだ・・・くやしいけど・・・そんな思いがこみ上げてくるとなんだか、今までのことが走馬灯のように甦ってきた。そして、箸を置いてしまった。そんな様子にも気付かない麟太郎・・・やっぱり・・くやしい・・・


 「どうした?」


 「えっ?」


 「さっきから箸をおいて・・」


 「あ・・ちょっと・・」


 「ちょ・・っとって?」


 「ちょっと緊張して・・・」


 「何も緊張しなくても・・」


 「えへへ・・そうだよね・・」


 私は軽く自分の頭を叩いた。そして、無理して、食事を取っていた。すると今度は麟太郎も箸をおいて窓の向こうをじっと見つめていた。その視線の席には先輩と理恵が並んで歩いている姿があった。その姿を確認した私は再び麟太郎に目をやると、彼らの姿から視線を逸らしていた。


 「どうしたの?」


 思わず声をかけると彼は驚いて私のほうを見た。そして、笑顔を見せて、


 「あっ・・・なんでもない。」


 再び食事を始めていた。こうして奇妙な無言の時間が私達を支配していた。そして、食事が終っても勢力は衰えることを知らず、私たちは、しばらく、無言で過ごしていた。すると


 「何か話せよ。」


 「えっ?」


 「さっきから、黙って・・」


 そんな無茶振りをされても困る。だいたい、麟太郎が・・・と言いたいけど・・・とりあえず、目の前の食事を詰め込んでいながら・・見つからない言葉を無理矢理言った瞬間に、思いっきりむせてしまった。


 「まだ・・・緊張してて・・ぐっ・・・・うっ・・・げほげほげほ・・・・」


 私の言葉に麟太郎は目を見張って驚いていた・・・そして、急に目の前で笑い出した。


 「な・・・何が・・・緊張して・・・って・・そんなに頬張るから・・むせるんだよ・・・くくく・・・」


 「げほげほ・・」


 未だに咳き込んでいる私を見ながら 麟太郎の笑い声はしばらく続いた。そして、ようやく咳き込んでいたのが終った私を見て、謝ってきた。


 「すまん・・・すまん・・・」


 「もうっ・・」


 こうして、私達の最初のデートは終ったんだけど、気持ちは複雑・・・所詮、私たちは偽装カップルなんだけど、麟太郎が本当に好きなのは、理恵さんだとなんとなく分かったことが・・・





 家に着いた麟太郎は、一人ベットの上で寝そべっていた。そして、今日のことを思い出していた。そう・・淳也さんと理恵が一緒にいたのを・・・そんな時、あの間抜けな話をしてきた香はいきなりむせ返って・・・・っ本当に・・・あいつのおかげである種、和まされたようなものだ・・・・あのすっとぼけた感じで何が緊張だ・・・本当に・・・・気がつくと俺は、携帯を手にして香に連絡を取った。


 「も・・・もしもし・・・」


 「あ・・・俺だけど・・・」


 「あ・・はい!!」


 俺の声を聞いた途端、香の奴の声はいきなり大きくなった。まだ緊張しているのか?そう思った俺は素直に聞いてみた。


 「まだ・・・緊張してるのか?」


 「あ・・いや・・・いきなり・・・かかってきたもんで・・・」


 本当に笑わせてくれる・・・なんて返事なんだ・・・


 「香」


 「は・・はい!!」


 「今日はありがとうな・・・」


 「えっ・・・あ・・・うん・・・」


 本当にどうしたんだと言うくらい緊張して・・・本当に笑わせてくれる・・・



 憂鬱な気分で一人部屋にいた香・・・いきなり携帯が鳴り出して、慌ててとった。


 「もしもし・・・」


 すると、相手は麟太郎だった・・・本当に、慌てたのなんのって・・・まさかこんな時間にかけてくるなんて予想だにしていなかった私にとって、びっくり仰天の境地だった・・・だいたい、さっきまで麟太郎のことで塞ぎこんでいたときだったもんだから・・・本当に・・・で・・・最後のありがとう・・・って?どういう意味?・・・私の心は、麟太郎に引っ掻き回されたままだった。

 



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