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41 クエスト「瓦礫撤去」(2ターン目)

ゆえあって昼投稿になってしまいました。すみません。

 瓦礫の撤去作業はとてつもなく地味だった。

 ダッシュ機能をブリーズ機能に替え、

 他の勇者達と手分けして、ちまちまと瓦礫を崖下に飛ばしていく。


 小さな瓦礫は飛竜のツメで殴れば、ぶっ飛んでいった。

 大きな瓦礫はストームが溜まるまでしばらく待ち、

 溜まったら1個ずつ宙に浮かばせ、崖の方まで移動させ、落とす。

 これを延々と繰り返しながら、進んで行く。


 どこかに小さな魔物が居てくれたら、攻撃力を試せるのに、と思うのだが、

 あいにく、今回は小さな魔物など1匹もいない。


 一度に数個の岩を持ち上げられる勇者クレゾールは、やっぱり他の勇者と比べてもぬきんでていた。

 この世界では、それぞれの勇者がそれぞれの世界の能力を持っている、

 言わば25万人全員がチート能力者なのだ。


 勇者ドバルの流した情報も、まるっきりウソとは言い切れない。

 現に、エルフ耳みたいに人の心が読めるような能力を隠し持っている勇者がいるのだから。

 言わば、あれは見えざる物を見る魔眼、TAS能力とでも言うべき能力だ。

 ひょっとしたら、この中にも鱗を大量に剥いだチート能力者がいるかもしれなかった。


 そう言えば、1本目のライフゲージが消滅するまで、予想より早かった気がする。

 今なら、それもチート勇者が中に混じっていたせいなのかと思えてくる。

 つまり、この中に1人だけ、異様に攻撃力の高い勇者が混じっているのだ。

 25万人の勇者の中の、誰か1人。いや、複数かも知れない。

 そいつのステータスが覗けたら、

 きっとSTRがカンストしていたりするのだろう。


 ビヒーモスは、先ほどから皮膚が赤っぽくなって見えた。

 黒い鱗の表面と相まって、まるで備長炭みたいに見える。

 変わったのは見た目だけでは無い、傍目にもイライラして攻撃的になっているのが見て取れた。

 地面を抉るように尻尾をフルスウィングし、1200勇者。

 足踏みもさらに破壊力を増し、800勇者の死者数。

 近づいてくる1000人程度の分隊にも敵意を向け、ちまちまと神経質に追い払っている。


 鱗が剥がれているのを気にして、さっきより過敏になっているみたいだ。

 ……ひょっとして、前より近づきにくくなってないか。


「ちょっと難易度が上がったな……ここから攻撃が難しくなるぞ」


「えっ……ひょっとして、段階的に攻撃が難しくなっていくのか?」


 勇者クレゾールは、うん、と肯いた。


「大抵のボスはそうだな。残りHPで動きが変わる。今のうちに叩いておかないと、もうじきほとんどの勇者が近づく事もできなくなるだろう」


 ウソ、マジで……。

 それもそうだ、相手は生き物、これはゲームでは無い。

 HPが減ってくれば、今まで通り、のんきにドラゴン狩りなんかしてくれるはずがなかった。


 戦況は逼迫していた。

 いくら鱗の剥がれた箇所が増えたとは言え、

 ビヒーモスの攻撃がどう猛さを増したせいで、HPの減少もさほど早くはない。

 2本目のライフゲージは、1時間経ってもまだ1割も削れていなかった。


 今はまだ、ドラゴンにも注意がそがれているが、

 そのうちビヒーモスが本気になれば、ドラゴンを完全に無視して攻撃を始める。

 そうなれば、歩兵勇者は近づく事さえ出来なくなる。

 その間、ダメージを確実に与えられるのは、魔法勇者による遠距離攻撃だけとなるだろう。

 俺たち歩兵勇者に出来るのは、ほとんどヘイト管理のみ。

 というのが、勇者クレゾールの見込みだった。


 ……俺にとっては絶望的するしかない、最悪の見込みである。


 勇者クレゾールは、鈍色の剣を構えて、そんなビヒーモスに向き直り、

 体の表面に風を集めはじめた。


「……今のうちに叩いてくる、勇者マキヒロ、後は任せたぞ」


「えっ……! ちょ、ちょっと待てよ、俺だって叩きたいよ!?」


「お前はもう鱗1枚剥いだだろ?」


 勇者クレゾールは、ぴしゃりと言った。

 俺は、うっと言葉に詰まる。

 この戦い、いくらダメージポイントを稼ぎ続けたところで、大した評価は得られない。

 鱗を1枚剥ぐ、ということは、他の勇者から頭1つ抜け出ている、という事でもあった。


「たしか鱗を1枚剥ぐのは総ダメージ1万ポイントぐらいの評価があったはず」


「そ、そんなにあったのか……」


「それに、総ダメージ数が評価に数えられるのは、1000とか5000のキリのいい単位だけだから、少し攻撃しづらくなっただけで効率が悪くなる。地道にこういう裏方クエストをこなしていった方がいいだろう。

 俺は瓦礫の撤去が得意だから、これだけでずっとポイントを稼いでいける。あとは今のうちに総ダメージ5000ポイントぐらいまで上げて、他の連中と差をつけておきたいんだ。頼まれてくれないか?」


 知らなかった……総ダメージ1万ポイント稼いだ事になってんのか、俺。

 ……てか、勇者クレゾール、総ダメージ5000ポイントって、お前それ俺の何倍か知ってるか?

 何倍にしても追いつかないよ、だって俺ゼロポイントだから。


 ……確かに、聞いた感じではそれが一番効率のいい方法だろう。

 ビヒーモスの攻撃が激しくなってしまった以上、俺がいくら突進していっても、もう手も足も出ない可能性だってある。


 けれど、俺は他の勇者以上にダメージポイントを稼がなければヤバい。

 稼がなければ、俺の不正なレベルアップがバレてしまう、なんて言えない。

 たった1ポイントだけだ。

 たった1ポイントだけ、ダメージを与えられれば、それでいい。


 この作業、勇者クレゾールに抜けられるのは痛手だが、他にも数千人の勇者がいる。

 もう2ターンもあれば瓦礫の撤去は完了するだろう。

 今はごねて彼を引き留めるよりも、先に行かせた方が懸命だ。


「……ああ、分かったよ、先に行け。こっちもすぐに終わらせてやるから」


「よし、これで助けてやった貸しはチャラだ」


 ……一瞬、何のことか分からなかったが、

 そういえば最初彼には瓦礫の下から助けてもらった恩があったのだ。

 俺たちはそれについて、恩返しはしないという事でお互いに了承していたはずだ。

 けれども前回、俺は勇者クレゾールを助けようとして、逆に苦しい思いをさせてしまった負い目があった。

 彼からすれば、俺が恩返しをしようとして、失敗したように見えるのか。

 勇者クレゾールは、その事を俺が気に病んでいると思っているのかもしれない。

 いやいや、そこまで俺は繊細じゃないし。

 まあ、ここは素直に従っておくか。


「ああ、これで貸し借りなしだな」


「だから俺が死にそうになっても、下手に助けに来るなよ」


「うるせぇな、そういうのはビヒーモス様に頼めよ。第二形態で待ってるぜ」


 ……俺もさっさとこのクエストを終わらせて、前線に復帰しよう。

 諦めずに粘ってさえいれば、いつかはポイントが稼げるはず。


 なんて、そんな考えはやっぱり甘かったらしい。

 俺たちのやり取りを聞いていたらしい、隣で作業をしていた勇者が、びしっと自分の事を指さした。


「まてよ……だったら俺も行かせてくれ!」


 熱い勇者が現れた。

 彼の放った大声に、多くの勇者達が作業の手を休め、そちらを見やっていた。

 ……嫌な予感がする。

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