表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
41/131

40 クエスト「瓦礫撤去」(1ターン目)

 転移門を通り、戦場の洞窟に再びあらわれた俺は、

 そのまま格納庫Bへ通じる転移門を目指した。


 目標は無論、1ポイントのダメージだったが、

 ここで幼女軍師から緊急ミッションが入った。


『現在、格納庫Bの入り口が2箇所崩落している! ただちにそちらに向かい、瓦礫の撤去と通路の確保をしろ!』


 今まで他人任せにしていた事だったが、

 いつかはやらなければならない、と思っていたミッションだ。


 幼女軍師の差配は的確だ、

 ようやく俺のストーム機能が真価を発揮する時である。

 決してネタスキルではない、裏方として活躍するスキルなのだ。


 格納庫Bの転移門に飛び込み、お馴染みの長い通路を抜けると、

 壁沿いに伸びている道を瓦礫が塞いでいた。


 俺より先に、すでに数千人の勇者達がそこに居たが、

 瓦礫の撤去よりも、崖の先に見えるビヒーモスの姿に見とれ、ぼう然としていた。


 何に見とれているのか、

 俺も立ち止まって、その姿を見て、ぎょっとした。


 ビヒーモスの鱗が、数カ所剥がれている。

 黒ずんだ鱗の間から、生々しい皮膚に覆われた肉体が覗いていた。


 一体どういう事なのか、俺には分からなかった。 

 俺がうなじの鱗を剥いで、

 さっきようやくスキンヘッドが腰の鱗を剥いだところだった。


 ところが、さらに背中、腕、反対側の腰、腹部、顔面、あらゆる場所に弱点が覗いている。

 ビヒーモスを倒したい勇者達にとっては、朗報に違いない。

 これなら、どの角度から攻撃しても弱点を狙い撃ちに出来るはずだ。


 だが……一体誰がこんな事を。

 さっきまで、腰の鱗を1枚剥がそうと必死になっていた勇者達が、勢いをそがれてそれを見ていたのである。


 その勇者達の中に、見慣れた脱色っぽい金髪を認めて、俺は近づいて行った。

 勇者クレゾールだ。


「勇者クレゾール、どうなってる」


「分からん、俺が死んでから復活する30分の間に、6箇所も鱗が剥がされていた。こんな事は前代未聞だ」


 いや、正確には俺が死んでから、準備時間を挟んで復活するまでの15分少々だ。

 他の勇者達は全滅してしまったし、その後も、俺は最後まで粘っていた。

 俺が蹴り飛ばされるまで、ビヒーモスはあんな状態になっていなかったはず。


「勇者マキヒロ、お前は何か見てないのか」


「1箇所は、分かる。スキンヘッドの勇者だ。それ以外は俺も知らない」


「スキンヘッド、あいつか」


 勇者クレゾールにも、スキンヘッドで通じるらしい。

 なにか気に食わない表情を浮かべていた。

 とにかく目立つ勇者であるらしい。


「噂によると、後の5箇所は新人の勇者が1人でやったそうだ……それについては分かるか?」


「……いや、全く」


 俺もはじめてそれを聞いて、戦慄を覚えていた。

 25万人の勇者が何十時間もかけてやってきた事を、そいつは15分であっさりこなしたと言うのか。

 それまでのダメージが蓄積していて、運良く5箇所も剥ぐことができた、という訳ではないだろう。

 偶然にしてもおかしすぎる、5箇所も同時にだ。まったくありえない……。


「そうか、お前じゃ無かったのか……勇者マキヒロ」


「なんで俺だよ? 俺なんて、まともに鱗を叩くのにも苦労してるのに」


「お前は知らないだろうが、噂が広まっているんだ……第四宇宙から来た、恐ろしい勇者がいるという……」


 第四宇宙、というと、俺の来た世界の事で間違いない。

 俺の世界に、果たしてそんな勇者がいただろうか?

 魔法も使えないし、他の世界に比べれば、ごく平凡な気がするが。


「お前の世界には、『チート』あるいは『TAS』という、得体の知れない能力を持った勇者がいるそうだな……勇者マキヒロ、それは本当か?」


「へ? い、いや、それはゲームの話で……」


 そう言いかけて、俺はふと思い直した。

 そういう勇者が実在しないなんて、俺には言い切れない。

 ……なぜか能力を手に入れてしまった、ごく普通の異世界トリップ物みたいな勇者が、この世界に居ても別に驚くことじゃない。

 しかし、実際にそうとしか考えられないような出来事を、実現させた奴がいる。

 こんな奇跡を起こしてみせる勇者がいるのだとすれば、他に考えられない。


「それ……具体的にはどういう勇者だ……?」


 勇者クレゾールは、視線を少し下げた。

 会話のログを探っているのかもしれない。


「『チート』は、世界の仕組みそのものに介入して、世界の構造を根底から改竄してしまう勇者……こいつは言わばダークヒーローだそうだ」


「俺の知っているのと大分同じだな……もう片方は……?」


「もう片方『TAS』は、見えない物の流れを見る魔眼を持つ勇者……時間軸を自在に操って、都合のいい結果を積み重ね、時に隠されたバグを呼び出す事も出来るという……『チート』と対をなす正義の勢力だそうだ」


「えーと……」


 どうなんだろう、それ……。

 どちらもゲームの専門用語のような気がするが……。

 それとも、両方ともこの宇宙には実在する能力なのだろうか?


 チートは創作の転生物でよく使われているが、TASは珍しい。

 ツール・アシステッド・スーパープレイの頭文字だ。

 簡単に言うと、プログラムを書き換えてしまうチートじゃ無くて、パソコン(ツール)にコントローラーを握らせて操作させる奴。

 スロー再生したり、プログラムを覗き見たりのテクニックを駆使して、人間には出来ないようなスーパープレイをする。

 RPGなんかじゃ会心の一撃を連発したり、モンスターに1回も遭遇せずにクリアしたりするらしい。


「本当に、それ俺の世界の勇者なのか? ……俺の知っている限りでは、俺の世界の中のゲームの世界の勇者っぽいんだけど……?」


「そうだと思った……勇者ドバルが言いふらしているんだ」


「情報源から不審だろ、なんで真に受けてるんだ! 真っ先に疑えよ!」


「仕方ないだろう? 実際、お前の経歴は分からない事が多すぎるし、他の勇者が何をやっているか、俺たちはほとんど分からないからな。噂ばかりが広まってもおかしくないさ」


「だとしても、そいつには気を付けろ、そいつ、俺を妄信的に担ぎ上げようとしている勇者だから……!」


 情報源が勇者ドバルなら、間違いない、ゲームの専門用語だった。

 ……俺が黒髪で黒い目でMPゼロってだけでハーレム主人公だって決めつけていた、

 あの厨二病勇者ドバルの仕業である。

 しかし、あいつの世界、どこまで俺の世界と文明が似通っているのか……甚だ疑問である。


「まあいい、そろそろ行くぞ」


 勇者クレゾールは、右手に大きな風の渦を生じさせた。

 大きく手をふると、巨大な竜巻が4つぐらいあらわれ、目の前の巨大な瓦礫を数個、同時にまとめて崖下に放り投げる。

 その先に続く、まだ塞がっている道をじっと見て、勇者クレゾールはペース配分を計算していた。


「3ターンくらいかかるか」


 ……俺にはお前の方がよっぽどチートに見えるのだが。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ