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24 地味な経験値稼ぎ

 ビヒーモスと勇者達が遠ざかって行くと、

 俺は、足元の瓦礫の不思議な音に気づいた。


 今まで騒音でなにも聞こえなかったのだが、

 瓦礫が何もないのに、ミシミシと音を立てているのが聞こえる。


 ふと、そう言えばサモン・ロッドの召喚石は

 飛竜の『ツメ』と『ダッシュ』を常に召喚し続けて居る、

 そんな事をチュートリアルで言っていたのを思い出した。


「……瓦礫の下で浮いているのか?」


 そう言えば、『ツメ』の方は俺が手放しても消えたりしなかった。

 同じパッシブスキルの『ダッシュ』の方もまだ召喚し続けている、という事だろうか。

 ならば……。


 飛竜のツメは、手をかざせば遠隔操作することができる。

 俺は試しに、念じてみる。


【スキル石(L)、アンロック】


 瓦礫の下から、びゅうっ、と風が吹いてきた。ジャンプ機能が解放されたのだ。

 巨大な瓦礫は、軽く下から押されたように上下しただけで、まるで動いた様子が無い。

 俺は、この石のもう一つの機能を思い出す。

 たしか、ツメの攻撃エネルギーはスキル石(R)にほとんど吸収されるんだったか。


【スキル石(R)、アンロック】


 ため込まれた攻撃エネルギーが解放されて、瓦礫がぼこっと音を立てて持ち上がった。

 そして、がらがら、と小さな瓦礫を崩しながら、元のようにばたん、と倒れる。

 家の壁そのものは、元の位置から、まったく動いていない。


 ……ダメか。

 攻撃力300あっても、まだこの壁は壊せないようだ。

 だが、今度はもっと力を溜めればどうなる。

 力を両方同時に解放すればどうなる。


 上の瓦礫が持ち上がる事は確かだ。その隙にジャンプ機能を解放させれば。

 細かい瓦礫なら動いている手応えはある、中をくぐって、どこかから脱出させられるんじゃなかろうか、と思った。


 エネルギーは、常に召喚石が発し続けている。

 必要なのは根気と俺自身のテクニックだ。

 瓦礫の下で岩との衝突を繰り返させて、もう一度攻撃エネルギーを溜めて、再挑戦する。


 二つの命令を同時に念じるのは、思ったより難しかった。

 思考の素早い切り替えが意外と難しい。

 二つのスキル石を連続で解放しようとすると、どうしても間隔が開いてしまう。


 少し持ち上がった家の壁が、ばたんと倒れて、それからジャンプ機能で、少しばかり砂利の中を移動する音がする。

 それのもどかしい繰り返しだった。

 途中でダレて何度か座り込んだ。


 ひょっとすると、アクションゲームみたいに、もともと一つのスキルを使うと次のスキルを使えなくなる硬直時間が発生するのかもしれない。

 だとしたら、俺の目論見は最初から無駄という事になる。


 まあいい、どうせダメ元だ。

 ネトゲのマゾいレベル上げには、慣れている。

 そして、こいつはゲームじゃない、俺の命を預かる、この世界で唯一の俺の武器だ。

 そのうちスキル石の操作にも慣れてくるだろうし、今はトレーニングの時間だと割り切る事にした。


 そう思って、立ったり座ったり、絶望したりネガったりしつつ、しばらくツメを取り出そうと悪戦苦闘しているうちに……。

 やがて、俺は視界に訪れたある変化に気づいた。


 ……何かが見えるのだ。

 分厚い岩の下に、飛竜のツメの輪郭が浮かんでいるのが見える。

 そして、視界に表示されていた情報も、先刻とは明らかに違っていた。


 視覚の下端に、スキル石や召喚石の文字が、ずらっと浮かび上がったのだ。

 さらに、左右には見覚えのない2本のメーターも表示されている。

 そのメーターは、数秒ごとに下から徐々に溜まっていく。

 縁には緑色のメタリックなフレームまで追加されて、

 ネトゲで言うなら戦闘機のコックピットの中みたいだったのである。


 俺はこの不可解な現象に、すぐにある仮説を立てる事が出来た。

 まさか、とは思ったが。

 試しに、その文字に指で触れてみる。

 今まで徐々に溜まっていた左のメーターが、一本分無くなって、

 瓦礫の下のツメが動いた。


 どうやら俺の視界は、いきなり飛竜のツメ専用にカスタマイズされてしまったらしい。


 何が起こったのかは分からないが、思い当たる節はある。

 いまさらこの世界が、プレイヤーがなにか行動するごとにスキルが成長していくタイプの、スキル重視制RPGに似ていたって驚かない。

 つまり……飛竜のツメがレベルアップしたのだ。


 そして、チュートリアルが始まったときと同様、飛竜の声が聞こえてくる。


『ふぅーははははぁー! 絶望の世界へようこそ! どうやらまたしても吾輩の力が必要なようだなぁー!?』


「飛竜!」


 俺は地面に頭をつけるようにして呼びかけた。

 この軽薄な声は、聞き間違えようが無い。

 恐らくこのツメの持ち主である、第五宇宙の飛竜である。


『勇者マキヒロよ、先ほどは見事な戦い振りであった!

 初陣にてファーストアタックを成功させ、さらにビヒーモスの鱗を剥ぐという快挙!

 吾輩の「飛竜武器開発評議会」でも、評価はうなぎ登りだ!』


「は、はぁ……どうも」


 えっ、なに、その評議会。

 俺はじめて聞いたんだけど。

 お前ひょっとしてこの武器の開発責任者か何かなの? 偉い人なの?


 飛竜は、鼻を膨らませているのが見えるような陽気な声で言った。


『初出陣ボーナス、ファーストアタック成功ボーナス、ドロップボーナス、超級ボスドロップボーナス!

 かような素晴らしい戦績に加えて、たったいま飛竜のツメの利用回数が規定数に達したため、

 貴様に与えられる《飛竜のツメ》スキルが5ランク上がることが決定した!

 そして貴様のランクの上昇に伴い、《飛竜のツメ使い》の称号を与え、さらに《飛竜のツメ》の新たなインターフェースと機能を解放したのだ!』

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