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17 1→5ポイント

※前回のお話(16話)は0時きっかりに投稿されませんでした。申し訳ありません。

 ビヒーモスが、ゆっくりと上半身を持ち上げていく。

 うなじに噛みついた虫に気が付いたように、

 あるいは、獣だけが察知できる、不快な感覚でもあったかのように。


 宙を飛び上がった飛竜のツメも、俺の方に近づき、

 爆発地点と俺の真ん中辺りに、がらん、と横たわった。

 俺は走った。

 だが、届かない。

 ビヒーモスのうなじは、どんどん凄まじい傾斜になってゆく。

 ついには足がすべりはじめ、鱗に両手両脚をはりつけて、じっと耐えた。

 傾斜が45度を越えたあたりで、息が切れてしまう。

 もう俺は身動きとれなくなってしまった。


 すぐ目の前に横たわった飛竜のツメは、

 急な傾斜の為に、からから、と音を立てて滑り落ちてくる。


 いや、落ちてくる。すごい勢いがついていた。

 そういえば安全装置は、さっきアンロックしたのだった。

 攻撃力は全開のはずである。

 そう思って、ぞっとした。

【スキル石R、ロック】、念じたが、間に合わない。

 ぶっとい刃を向けて、凄まじい勢いで落ちてくる飛竜のツメを、

 俺は地面にへばりつくことで、なんとかかわした。


 かわしてしまった。

 まずいことになった。

 なんでかわしたんだ。

 振り返ると、飛竜のツメは、火の海にむかって真っ逆さまに落ちていく所だった。


 痛いのが恐かったのか。

 突き刺さって死ねばまだよかったではないか。

 そうすれば、剣を持ったままリスタートできたのに。

 冷静に考えてみれば、【スキル石R、ロック】なんて教わらなかったじゃないか。

 1回攻撃したら、自動的に安全装置が作動してロックされる設計だったら、とんだ笑いものだ。


 苛立ちとか、後悔とか、ほんとうに戯れ言ばかりが募ってくる。


 俺は一体なにをやっているんだ。

 便利機能満載の、こんなゆとり世界で、なぜ失敗ばかりする。


 他人とは違う事や、出来ない事ばかり悔やんで、

 けっきょく出来たはずの事すら出来なくなっている、

 2つ目の世界でも同じドツボにはまっているのか。


 まあ、予想はしていたから、ダメージは少なかったさ。

 希望なんて抱いていなかったからな。

 所詮クズは何を頑張っても、どの世界に召喚されても、何度生まれ変わってもクズにしかなれないってだけだ。


 そして、この絶望の世界は、俺に『希望』を与えたのだ。

 頑張った俺に対して、そんな俺を今後も弄ぶための、いずれ『絶望』に転化するための『希望』。

 そいつを一欠片、俺の頭に投げつけてきた。


 岩盤か何かが降ってきている、と最初は思った。

 ビヒーモスのうなじあたりから、

 爆発の煙に紛れて、

 岩盤のような物が一枚、

 ぐるぐる回転しながら降ってきていた。


 アイテム獲得:ビヒーモスの鱗


 ――総プレイ時間27時間48分23秒。

 俺がこの世界に召喚されてから約2時間。

 ビヒーモスの『鱗』が1枚、ようやく剥がれ落ちる。


 煙の奥に、

 ダメージ 0ポイント

 の表示が浮かぶ。

 ノーダメージ。


 どうやら、HPに与えるダメージとは別に、

 装甲にも《耐久値》があるらしい。

 それがさっきの俺の一撃で、ゼロになったのだ。


 俺は嫌悪感をあらわにし、顔をしかめたまま、煙の立ち昇るビヒーモスのうなじを見上げていた。

 なんて世界だ。

 俺は心底震え上がった。

 この世界は、この上、まだ俺にさらなる『絶望』を与えようとしているのか。


 凄まじい雷光が、鱗の剥がれた部位を狙って放たれた。

 高台のあちこちに分散していた魔法勇者部隊が、雷撃の魔法を放ったのだ。


 俺はビヒーモスの肩から振り落とされ、

 炎の海へ真っ直ぐ落ちていった。

 5000本の雷が、

 大樹みたいにうねって、

 ビヒーモスのうなじに絡みついている。


 多種多様な世界の『雷』。

 原理も呪文も恐らく一本一本が違うはずだが、

 確実に『効いている』。


 無数に浮かび上がるダメージ。

 その中に、

 5ポイントという数字を、俺ははじめてみた。 


 つまり、ダメージは一気に5倍。

 となると、どうなるんだ。

 ビヒーモスのライフゲージは、3本。

 そのうち1本が、28時間までに4割削れているわけだから……。

 単純計算で……あと、30数時間ねばれば、倒せる計算か……。


 ネトゲ脳の俺は、そう解析する。

 そこには、別な悩みもあった。

 ……トイレとか、みんなどうしてるんだろ。

 ……ボトラー量産ゲームだな、これ。


 落下している最中、ドバルからの着信があった。

 どうせまた死亡フラグだろう、と思いながら、出てみる。


「おい、勇者マキヒロ。今、女の子が空から降ってくるのが見えるんだが……」

「ああ……それ女の子じゃねぇ、多分俺だよ。じゃあな」


 通話を切ると、

 間もなく俺の体は炎に包み込まれ、

 ぼっという音と共に、この世から消え去った。

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