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11 戦闘力【5万勇者】は強すぎる

 軽い公園なみの広さがある格納庫Aには東西南北に4つの転移門があり、

 俺たち勇者が出てくるのはそのうちのどれか一つだった。


 いずれも床に対して高さ100メートルほどの崖の奥にあって、

 万が一、床からドラゴンがブレスを吹いても届かない設計になっている。


 しかし、対ビヒーモス用ではない。これが今回裏目に出た。


 俺たち第50勇者連隊は、周りを取り囲む高台から伸びたスロープのような坂を下り、

 屍があちこちに転がった、血なまぐさい戦場を駆けていった。

 飛龍のツメが、俺たちをビヒーモスの元へと連れて行く。


『陽動部隊は、死亡数が2500勇者に達する前に攻撃しろ! 現在、第四十連隊が攻撃中! 第五十勇者連隊は攻撃準備!』


 第四十勇者連隊が先に攻撃を仕掛けている。

 攻撃と同時に花火のような音がボンボン響いて、

 さらにダメージが表示されるので、よく見える。


 とてつもない高さまで飛びあがり、

 魔法付与がかけられた5000本の巨剣で次々と攻撃を加え、

 ビヒーモスの注意をひきつけている。

 ひきつけようとしている。

 それぞれの勇者が持つ魔法や異能力を駆使して、

 全力で攻撃を加えているのだ。

 にもかかわらず、1ポイントのダメージが最大で。

 2ポイントを超えるダメージは皆無だった。


 それでもダメージは5000ポイント近く与えられたはず。

 だが。

 ビヒーモスの顔上に浮かぶライフゲージは、腹立つぐらい、相変わらず微動だにしない。

 少しは表情を変えるぐらいしたらどうなのか。


 あるとき、ビヒーモスの視線は、

 上空を飛び交う残り七体のドラゴンから、

 俺たちを無視して、別の方角に向けられた。


 その崖の上は、奇妙な光に包まれて見えた。

 ちょうど吹き上げ式の花火のような光だ。

 ひときわ広い高台の上に、いつの間にかローブを着込んだ勇者連隊が並んでいる。


 その光は四つの方角に確認できた。

 それぞれ光る杖らしきものを握っている所から、どうやら魔法兵士がいたらしい。


 そちらに接近して行くビヒーモスの足元に、無数の結晶の形をした魔法陣が生まれる。

 俺のサブカル的解釈によると、結界という奴だろうか。

 まるでアジサイのように、数千個もの、恐ろしい数の結界が生み出されている。


 そして間髪入れず、

 ビヒーモスの死角にあたる二つの高台の上から、

 攻撃魔法が放たれた。

 総火力による、一斉攻撃だ。


 生まれてはじめて見る魔法がこんなに派手なんていいのか、と思う。

 属性は火で統一されている、

 多種多様の巨大な火の玉が、高台から一斉に放たれる。

 力が漲っている。

 大きさはまちまち、それぞれの世界の炎を、最高の魔法で放っていると思われた。


 二方向から、一斉に。

 クロスファイアだ。

 グリルの中みたいに熱い。


 しかも、蜘蛛の巣に捕らわれたみたいに、ビヒーモスの動きが鈍っていった。

 こういう相手の動きを封じ込める魔法は、大抵のボス級には通じないものと思っていた。

 だが、魔法勇者連隊が、数の力で強引にボス級を封じ込めているのだ。


 さすが魔法勇者。

 もう歩兵勇者いらないんじゃなかろうか。

 そう思っていた時期が、俺にもありました。


 ビヒーモスは崖の前まで来ると、その場にうずくまった。

 口から淡い光がこぼれ出て、不気味に微笑んでいるように見えた。

 足元の結界が、

 まるで脆いガラス細工みたいに

 バキバキと音を立てて砕け散っていく、


 俺たちは、数瞬動きを封じただけだった。

 結界に封じられている筈の足が、

 強引に持ち上げられた。


 そしてそのまま体を翻したビヒーモスは、

 さっきの総火力攻撃より、一回り巨大な炎を口から吹きつつ、

 高台の上の魔法兵連隊や出て来たばかりの歩兵連隊を、ひとつずつ、

 炎でなぶるように首をスイングさせた。


 炎の中に無数のライフゲージが浮かび、

 それらは一瞬で緑色から赤へと変わっていく。

 視界の左下の兵士数がガリガリ減っていった。


 首の動きに合わせて、

 大きく右から左へ振られるビヒーモスの尻尾に、

 軍隊アリのように歩兵勇者達がはりついていた。

 もう、なぎ払われたとかいうレベルですらない。

 チラシみたいに張り付いていたのだ。

 鎧を着た砲丸みたいに、凄まじい速度で周囲の壁に追突していった。


 俺たちはわき目も振らず、その下を駆け抜けていった。

 相手が埒外の怪物なのはとっくに分かっている。

 もういちいち立ち止まってもしょうがない。

 その間にも、死者数のカウントがうなぎ登りに上昇して行く。


 被害者数:安全→危険水準

 原因 極大火炎放射アポカリプティック・ファイアによる攻撃

 死亡数 2万8000勇者


 俺がようやく足元にたどり着いた頃には、

 魔法兵連隊が3つ、歩兵連隊が2つと半分消し飛んでいた。


『陽動部隊! さきほどの攻撃で転移ゲートが落盤によってふさがれた! 復旧に時間を要する!』


 幼女軍師の声が響く。


『蘇生が間に合わない!

 派兵数が少なすぎると格納庫の壁を突破される危険性がある!

 今そこに居る部隊で、3ターンかせげ!』


 ……なんて無茶振りだ。

 俺は肩で息をしながら、そいつを見上げた。

 圧倒的火力で高台の上を焼き払ったビヒーモスは、

 上空のドラゴンには見向きもしなかった。

 どうやら、お腹いっぱいというところだろうか。

 口からげっぷのように炎を吐いていた。

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