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10 第一クエストの結果

※グロ描写あります注意。

 気が付くと、俺は巨大な魔法陣の中央にいた。

 周りに勇者達はいたが、見知った顔はない。


 無限ループにはまって、5分ちかく空けてしまった、

 戦況をすばやく把握する。

 ミッション「ドラゴン救出」は既に終わっていた。

 視界の隅で、光るのを止めて小さくなっている。

 仲間のドラゴンの残数を確認してみると、


 ドラゴン 8匹


 ……俺が落下している間に、すでに12匹死んでいた。

 役立たずの俺を除いても、25万人も勇者がいて、それで半分以上も守れなかったというのか。


 なんだこのゲーム。

 最初のミッションからすでに絶望的。

 チュートリアルでさえ何度も失敗する高難易度。

 おまけに、穴に落ちると無限ループにはまって抜け出せない。

 クソゲーここに極まれりだ。


 絶望的だった。

 俺が出しゃばって、失敗して、足を引っ張った所で、

 結局は失敗するものだった、俺が何をやったところでこの流れを覆すことは出来ない。

 本当は割とどうでもいい事だった。

 それで割を食うのは名も知らぬ他の世界の連中だ。

 だが、逃げれば確実に俺をこの世界に召喚したバージリーが責任を負わされるだろう。

 逃げるのだけは封印しておこう。

 まだ死ぬのには耐えられる。


 飛竜のツメを握りしめると、待ちかねたようにぶわっと勢いよく浮かんだ。

 俺は目の前を駆けていく勇者達の背中を追って、駆けだした。


『ドラゴンの拘束はすでに解かれている! 歩兵勇者はビヒーモスを陽動し、可能な限り攻撃を引きつけろ!』


 猛ダッシュの行軍の最中、幼女軍師の声が響いた。

 ミッション「ドラゴン救出」の表示を見る。


 Conquest

  成功!


 の表示が浮かんだ。


 続いてミッション「敵の陽動」が浮かぶ。

 敵の陽動。

 つまり、ヘイト値を高めて攻撃を受けろってことか。

 死ねって言ってるんですね、わかります。


『補助魔法部隊が武器に付与魔法をかける! 各員、通路脇の魔法使いから補助魔法を受け、格納庫Aに急行しろ!』


 通路の壁に、ローブを着た魔法使いがずらっと待機していて、

 勇者達の武器に魔法をかけている。

 魔法をかけられた武器はオレンジ色の光を吹き、

 勇者達はそれを担いで、再び猛ダッシュする。


 俺も空いている魔法使いの前に駆け寄った。

 魔法使いは飛竜のツメに両手をあてがい、なにがしかの魔法を込めていた。


 飛竜のツメがオレンジ色の光を吹き、

 ステータスの変化が視界の隅に表示された。


 飛竜のツメ:通常→付与魔法《ブレイム》

 一度だけ攻撃と同時に鋭い閃光を放ち、衝撃を伴う爆発を巻き起こす。


 ――なるほど、強そうだ。

 俺は飛竜のツメを担ぎ直すと、マップを見る前に駆けだした。


 もうすでに転移門までのルートは頭に入っている。

 周囲の勇者達の動きを確認しながら移動していく。


 この世界のシステムに順応性が高いのが、俺の唯一の利点かもしれない。

 ネトゲだけなら一日に何時間でもやりこんでいるのだ。


 格納庫Aの転移門を通過し、再び巨大魔法陣の部屋へ出た。

 飛竜のツメを握る手に、力がこもる。

 戦場へと向かった俺は、

 とてつもなく嫌なにおいが立ちこめているのに気づいた。


 ――そこで希望が絶望に転化した。

 血のにおいだ。


 俺は再びビヒーモスの姿を見て、

 吐き気を覚えた。

 格納庫Aはまさに血の海になっていたのだ。


 匂い分子を飛ばすディスプレイが開発されているとか聞いたが、

 どれほどゲームが進化しても血の海だけは再現されないだろうと断言できる。


 まあ体を切り裂かれたら普通は血だけじゃなく体の内側の物が外に出るわけだから、

 血の海には実際アレとかアレとか色んな液が混じって、ぐちゃぐちゃになった臭いがするらしい。

 しかも体温で37度ぐらいに温められていたものだ。

 つまりそれが血の海の臭いだ。

 クソゲーのくせに無駄にリアル。


 ビヒーモスは口に、巨大なドラゴンを咥えていた。

 あれは遠くからじっと様子を伺っていた、老獪なドラゴンである。


 母ネコに咥えられた子ネコみたいに、だらりと首や尻尾を垂れ下げ、

 すでに息絶えているのが分かる。

 頭上に浮かんだライフゲージを見ると、

 ドラゴンのライフゲージは4本あったがすべて真っ赤になっている。

 対するビヒーモスは、

 1本目のライフゲージが4割ほど減少していた。


 ビヒーモスは空を向いて顎を大きく開き、

 その巨大ドラゴンを丸呑みにした。


 丸呑みである。

 口腔が膨らみ、

 ごき、べきっ、という音と共に、ゆっくりドラゴンを飲み下していく。


 視界の左上に状況が表示される。

 ドラゴン 13匹死亡


 ああ――やっぱり世の中そんなもんだよな。


 俺は冷静にその様子を見ていた。

 ドラゴンは残り7匹。

 すでに13匹も命を捨てて、

 ライフゲージの1本も無くせていないのだ。

 この超巨大モブに人類が勝つ見込みなどあろうはずがない。


 そして絶望的な戦いだと分かっていながら、

 25万人の勇者達は挑み続けている。

 俺みたいに「もう召喚師は俺たちに時間を稼がせて逃げる準備をしているのかも」なんてネガってる奴はひとりもいないだろう。


 俺はもうさんざん希望に裏切られるのには慣れていたから。

 バージリーが逃げているのなら、俺はそれでいい。

 けっきょく人生のあらゆる問題には、妥協か逃避でしか答えられないのだから。


「――ちくしょおおおおおおおっ!」


 僅かながらでも希望を抱いてしまった自分を呪いつつ、

 俺は飛竜のツメを抱え、うなり声をあげながら、大群と共に猛ダッシュを続けた。

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