表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/3

序章‐狂った歯車‐

世界は、

不可解で、

不明瞭で、

不親切で、

不平等で、

不公平で、

不思議で。


無価値で、

無感情で、

無機質で、

無意識で、

無防備で、

無気力で。


だからこそ、

世界は素晴らしく、

世界は残酷で、

世界は……素敵だ。





「や、あ……うっぷ」


吐き気が襲う。

何もかもが信じられないこの世界。

信じるな。

認めるな。

これは現実ではない。

ゲームの世界。

非現実。それだけだ。



だから。

この目に焼き付いている光景は。

全て嘘であり、幻であり、無なのだ。

こんなの嘘だから。大丈夫。



そう言い聞かせるたびに、襲うのは恐怖。



「母さん……父、さん……」



鮮血で染め上げられた視界。

強い鉄の匂いが鼻の奥まで漂い、吐き気を誘う。

投げ出された四肢。

だらしなく開いた口からは今だとくとくと鮮血が流れ続けている。

えぐられた肉。そこから放たれる腐臭。

目は明後日の方に剥き出しにされていて。

毛穴、鼻など問わず、穴と思われる穴から血が噴き出している。



肉の塊。血の塊。赤い塊。

それだけ。もうそこに人間と思われる要素は全くない。

だから、怖くない。

「コレ」は、人間じゃないんだから。

人間じゃないって事は、お母さんやお父さんじゃないということだ。

そうだよ、だから、大丈夫。

認めるな。信じるな。現実から目を背けろ。もうこれは非現実の世界。


信じるべき世界では、ない。



「認めろ。これはお前の愛しい愛しいお母さんとお父さんだぜ」



そう言いながら、嗤う男。

歪んだ口元、頬に流れる鮮血。


……嗚呼……そうだ、この男が……



この男がぁああああああああ!!!!



「そんな目で見るなよ。可愛い顔が台無しじゃねーか」


嗤う。

嗤う。

憎たらしい顔で。

憎い顔で。

死ぬほど憎い顔で。



ワタシハ、コノオトコヲ、コロサナクテハイケナイ――……



「ああああああああ!!」



駆ける。

その手に、ナイフを携えて。

光に反射し不気味に輝く鋭利な物を携えて。

駆ける、駆ける。

狙うは男の心臓ただ一つ。


しかし。

男は……冷静に……嗤った。



いとも簡単に私の手にあるナイフを叩き落とす。

そして、そのまま突っ込んできた私を抱きとめた。




「俺を……殺したいか」




耳元で囁かれる言葉は甘く。甘く。甘ったるく。

まるで蜜のように耳の奥までを絡め取る。




「殺したいよな。なら……殺せ。俺を。殺してみせろ」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ