俺と悪魔と、悪魔とナニと
「つまりこういうことですか。あなたは悪魔憑きで、全身のいたるところに、悪魔を飼ってらっしゃる」
「そうだ。人間の容量にゃあ限りがある。オールマイティな大物を一匹入れるより、こまごまとした、その道のスペシャリストを雇ったほうが応用も利くってもんだ」
「なるほど」
「どうせ死んじまえば、身体なんざあってもしかたねえ。残らずこいつらが食い尽くしてくれれば、むしろ後始末も楽ってなもんだ。そして残るのは……ンンン、悪魔の入ってねえ、俺の『息子』だけ」
「そんな情報はいりません」
「たとえばこれだ」
「右手の、小指ですか」
「俺はここに、『耳かきがやたらに上手い悪魔』を入れてる。上手くすれば鼻の穴もキレイになるって寸法よ」
「はぁ」
「そして、俺の腹だ」
「そこにはなにを?」
「『悪玉菌を食っちまう悪魔』だ」
「とりあえず、あなたが人畜無害なことだけはわかりました」
「ハ、ハ、ハ」
「それで、あなたはそれを、すべて祓いたい。そういうことですか」
「おおっと、これだからエクソシストってやつは困る。いまも言っただろ、こいつらはワイフみたいなもんだってな」
「じゃあ?」
「こいつだ。こいつにだけは手を焼いてる」
「はぁ、左手の、薬指」
「つい最近、俺はここに、インキュバスを入れた」
「陰魔ですね。ハーレムを狙ったんですか」
「そうだ。おかげで、女にはことかかねえ」
「じゃあ、どうして祓う気に?」
「こいつはとんでもねえイカモノ食いでな。引き寄せるのは、ババアばっかり」
「ああ、それであなたは、おばあさんをおんぶしてるわけですか」