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日々、才女なギャルと魔法オタクは教え合う  作者: 宮原 ワタル
第4章:妖精の魔法

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22/28

22話:魔法オタク、喧嘩を売る。


「にゃーーー!?ミーの強化魔法が負けたにゃあああああ!?」

「マジか!ネコマルの【物体強化】に勝ったの、板見が初めて一級魔法成功したとき以来じゃね!?」

「フシャー!」

「威嚇すんなて」


 ネコマルは頭を乱暴に搔き、本気で悔しそうにしている。

 そのままの勢いで赤枝先輩に突撃しそうな勢いだったため、首根っこを掴んで抑えておく。


 しかし……本当に驚いた。雰囲気が軽いヤツだしお調子者ではあるが、ネコマルも涼葉学院魔学部の一員だ。

 ふざけて見えても、魔法に関してはそんじょそこらの人よりも遥かに上を行く、たしかな実力者なのだ。


 そのネコマルが本気で強化魔法をかけた的に、真正面からヒビを入れる出力の魔法を出せる女子高生?……え、こわ。



「エース候補じゃなくて、エースの間違いなんじゃないの?」

「フシャッ……マジでそれにゃあ……」


 魔力の動きから見ても、精神的にいつも通りとは言えないはず。それでも、あの精度と規模を成立させた。

 必要なのは、〝理論〟と〝感覚〟それぞれの高い基礎力と、魔法が身体に染みつくほどの反復練習。

 姫道先輩が話していた赤枝先輩の実力的に、この魔法を使えるようになったのは──長くても多分、ここ1週間。


 尋常じゃない。というか、正気じゃないレベルの努力量だ。

 ……その努力の引き金になったのはやっぱり、姫道先輩との喧嘩なんだろうか。


 視線を的から戻すと、赤枝先輩はかなりの魔力を使った名残からか、まだ膝をついて動いていなかった。



───動くなら今、か。



 あらかじめ立てておいた作(・)戦(・)を実行するため、座席から立ち上がる。

 横にいたネコマルは顰(しか)めていた顔を両手で擦り、一息ついてから大きく背伸びをした。


「んにゃー?作戦開始にゃ?」

「うん、僕らの出番ももうすぐだし……行ってくる」

「いってらにゃ~」


 拳をコツンと合わせ、足早にその場を離れる。




 3分ほど歩くと、参加者側の観覧席へ続く通路に出る。

 人影はなく、僕の足音だけが響いていた。

 外から聞こえていた歓声は、少しずつくぐもった地鳴りのような響きに変わっていく。


「よし」


 足を止め、いくつかの魔法陣を空間に、そして己の身体に展開する。

 同時に、ゆっくりと深呼吸をした。吐いた息は、思ったよりも長く続いた。


 魔法が発動しきった瞬間、身体の内と外に整然とした静寂が広がっていく。


「……やっぱコ(・)レ(・)、変な感覚になるんだよな……」


 散らばっていた感情が無理やり整列させられ、一律に並んでいく。

 表情筋がほとんど動かなくなったのを確認してから、眼鏡を外す。


 そしてポケットから携帯を出し、通話ボタンを押してから胸ポケットに携帯へしまった。


「音、聞こえますか?」


 僕の言葉に対し、返事の代わりにブーという通知音が返ってくるのを確認し、再度軽く息を吸う。

 そのまま、曲がり角の先へ視線を向けた。

 



 ──ほどなくして、壁の向こうから、赤枝先輩が姿を見せる。


「ぁ……」


 彼女の息は、まだ整っていない。壁にもたれかかりながら歩いており、その足取りも重そうであった。

 やはり先ほどの【風ノ華】で、想像以上に魔力を消耗したのだろう。


 僕を認識した瞬間、赤枝先輩の目がわずかに見開かれる。

 だが、それも一瞬だった。

 すぐに視線を伏せると、そのまま何も言わず、僕の横を通り過ぎようとする。




「あの」

「……なに?」


 身体の向きは変えないまま、赤枝先輩は立ち止まった。


「…………」

「……なにも、ないなら。私、席に戻りたいんだけど?」


 淡々と、ハッキリとした拒絶。

 女の人と話すのは、まだどうにも苦手だ。ましてや、怒っている女の人と口論した記憶なんて、母さん以外では一度もない。

 それでも、ここまで来て引き返すわけにはいかなかった。


 波紋一つ立たない心の中で、そう独りごちる。

 逃げ道は、自分で塞ぐ。そのために、言葉を選ばず、踏み込んだ。




「なんで、姫道先輩が〝魔法を使えない〟って、思いたがってるんですか?」

「…………は?」




 赤枝先輩の身体から、魔力が噴き出す。

 視界に映っているだけのはずなのに、そこに込められた強い感情は、肌を刺すような圧となって伝わってくる。

 そんな動きをする魔力は、間違いなく。あの時、窓越しの運動場で見えたそれの片割れと同じだった。


 ゆっくりと、赤枝先輩はこちらを向く。


「喧嘩、売ってる?」


 その瞳には、先ほどまでの疲労など微塵も残っていなかった。


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