INTERLUDE
足音を殺し、誰にも気取られないよう廊下を歩く。車両の間の渡り板が金属音を立て、けたたましい音が廊下に木霊する。先頭にたどり着き、個室の扉を開けると、中年の男の死体が見える。現場を崩さぬよう近づき、顔を覗き込む。
「.........やはり、違う.........」
疑惑が確信に変わった私は、廊下を引き返す。上着を裏返し、同一人物だと悟られないようにする。誰もいない食堂車を通り、車掌室の前まで来た。
『ここで見られては拙い.........』
見られるわけには行かないと、私は、体を屈めて、車掌室から死角になるようゆっくりと歩く。その時、服のポケットから何かが滑り落ちた。床に当たり、音を立てる。
『ん?何だ?』
中から声が聞こえる。大森だ。拙い。見られては全てがお陀仏だ。逃げようとしたその時、外側の扉を開ける音が聞こえた。
『佐伯さん、今まで何をしてたんですか?』
『ただの連絡ですよ。こちらでは......』
......どうやら注意が逸れたようだ。助かった。今だけはあの探偵に感謝しなくてはならないな。
落としたモノを拾い、歩みを進める。車掌室を通り過ぎた私は、最後尾の荷物室にたどり着いた。走行中の移動は想定していないのだろう。安全性もクソもない。手すりを強く握り、車両を渡る。
なんとか渡り切ると普段は閉まっているはずの扉は開き、中の小部屋には一人の男が立っていた。
「ん?誰だ...ってお前は!!」
こちらに気がついたようだ。だがもう遅い。素早く近づき、男の背後に回る。
「やめろ!離...れ......」
後頭部、大後頭孔を狙って錐を突き刺した。延髄を貫き、先端が脳に達する感覚を覚える。
男は暫く痙攣した後白目を剥き、一筋の血を流して倒れ込んだ。私は冷たい目でそれを見やり、上着を再度裏返して荷物室を後にする。
こうして、この列車には、二つ目の死体が出来上がった。
次回: EP10. 小樽駅




