最初の部活動
顧問のついて、アイヌ文化研究会は部として認められた。
今日は、記念すべき最初の部活動の日である。
部室であるアイヌ文化資料室に部員全員が集合していた。
エカテリーナ「まず、部長を決めたいと思います。」
澪「エカテリーナしかいないじゃん。」
エカテリーナ以外の部員が頷く。
エカテリーナ「みんながいいというなら、私がやるわ。じゃ副部長は?」
澪が続ける。「入った順番でいいんじゃん。連でいいよ。」
連以外の部員が頷く。
連「俺?」
澪「男は連しかいないし、男女平等でいいんじゃない。」
連「男女平等の使い方、間違っているよ。でも、まあ、仕方ないか。」
こうして部長と副部長が簡単に決まった。
顧問の田中さんが聞く。「部活動は具体的に何をするか決まっているの?」
一同が言葉に詰まる。
澪「とりあえず刺繍かな?」
ゆり「踊りの演出効果を研究するとか」
詩織「やはり踊りじゃないかな。」
田中さん「みんな違うことをしていたら、部の意味はないと思うの。みんなで協力して出来ることはないかな。」
皆「うーん」と考え込む。
田中さん「過去の部活動がどんなことをしていたか、参考にしたらどうかな」
エカテリーナは「あ、それいいですね。活動記録ならありますし。」
そして活動記録を読み返してみた。
エカテリーナ「ここ見て。トンコリを自分たちで作って、演奏している。」
連「トンコリって楽器屋で買うものかと思っていた。」
詩織「自分で作るなんてすごいわ。」
エカテリーナ「決まりね。最初の活動は、トンコリを作って演奏出来るようになって、秋の文化祭でみんなで発表しよう。」
連「ハードル高いな・・・でも、面白そうだな。」
澪「トンコリには自分の好きな模様を入れていいんだよね。」
ゆり「映像的に映えるトンコリを作ってみたい。」
詩織「いいね。車椅子での舞も好きだけど、私にはトンコリを演奏する方が向いているみたい。」
こうして部員全員がそれぞれトンコリを作って、演奏することを目標とした。
澪「でも、トンコリってどうやって作るんだろう?」
エカテリーナ「活動記録には、木彫りの職人から教えてもらったと記録しているわ。」
連「俺、叔父さんに聞いて見るよ。アイヌ記念館にもトンコリがあったし、館長の叔父さんなら職人を知っているかも。早速明日の土曜日に行ってくる。」
エカテリーナ「私も行くわ。」
そうして連とエカテリーナは2人でアイヌ記念館に行くことになった。
連は部活動でトンコリを作って、文化祭で演奏する計画を叔父に伝えた。
叔父は「ほう、いい計画だな。しかし、トンコリを作れる職人は、今は少なくなってな。俺の知っている限りでは1人だけだ。」
連「その人を教えて。」
叔父「教えるけどな、トンコリ作りまで教えてくれるかはわからないぞ。ちょっと変わり者なんだ。」
連「誰なの?」
叔父「ほら、連の家の近くに木彫りの工房があるだろう。そこの職人だ。」
連「ああ、いつも学校に行く途中にある、あの工房ね。そこならわかるよ。」