5人いる!
部員募集が始まって2週間。季節は5月中旬になっていた。ミニ講座やポスターも工夫したけれど、それ以上の部員は集まらなかった。 必要なのは5人、でも今いるのは蓮、エカテリーナ、澪、ゆり4人だけ。
放課後の部室予定の教室で、4人は机を囲んで肩を落としていた。
澪が言う。「だめかもね…」
連も弱気になっていた。「あとひとりなのに・・・悔しいな」
そのとき—— 窓の外から不思議な声が聞こえた。
「アイヌの古式舞踊、あれ・・・学校でやってるの?」
振り向くと、向かいの高校の制服を着た車椅子の少女が、こちらを見つめていた。
彼女の名は仁科 詩織。中学のすぐ向かいにある特別支援高等学校の1年生だった。彼女は小学5年生の時、交通事故で下半身が付随となり車椅子生活を余儀なくされ、特別支援高等学校に通っていた。
普通高校に通う選択肢もあったが、家庭の事情で特別支援高等学校を選択していた。
「いつも放課後に音が聞こえてて・・・気になってたの。わたし、踊りはできないけど・・・ 語りとか、音楽とか、何かできることがあったら・・・手伝ってもいい?」
驚きと共に、4人の胸に温かい風が吹いた。
「人数の条件は“中学生の在籍者”かもしれないけど・・・」
エカテリーナが言った。「本当に必要なのは“心から一緒に伝えたい”仲間だと思うの」
連が頷きながら言った。「そうだな。学校がダメって言ってもさ、俺たちの“はじまり”にしてもいいかもな」
部員がやっと5人集まった。しかし、5人目は極北中の生徒ではない。
エカテリーナは教頭先生に相談した。
「5人集まりました。部として認めてもらえないですか?」
「5人目はうちの生徒じゃないよね?しかも高校生でしょう?ちょっと無理だな。」
「そんな・・・もうすぐ銀の滴祭ですよね。それまでには部として活動したいのです。」
「今のままじゃ無理だよ。」
「じゃ、せめて銀の滴祭で古式舞踊を踊らせてください。」
「うーん・・・校長がいいと言えばいいけど。」
エカテリーナたちは校長に申し出た。
校長は少し考えて、言った。
「生徒が自主的に踊るというなら、学校も認めない理由がない。短時間なら認めよう。ただし、部活動として認めたわけではないので、勘違いしないように。」
こうして、短い時間だがエカテリーナたちは、古式舞踊を披露することになった。