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第2話 モヤモヤ

 翌日から俺は少女の練習風景を見る事になった。

 練習風景と言っても、ただ公園内を走っているだけの代わり映えのしないものなのだが。

 それにどちらかがいない日もある。

 今日は練習の気分じゃないとか、公園以外でダラダラしたいとか、そういう理由で。

 でも別にそれで相手に何か思う事はない。

 お互い、そんな薄い繋がりでしかないと理解しているからだろう。

 そんな日々が何日も続き、今日も今日とて俺は公園のベンチに座っている。


「こんばんは太郎さん」

「よぉ、ナツキ」


 手を振って走って来る少女に俺も軽く手を振り返す。


「ねぇ太郎さん。仕事決まったの?」


 ナツキは俺が腰掛けているベンチにちょこんと座って来る。


「俺の事はほっとけ。それよりどうなんだ?そっちは大会出れそうなのかよ」

「うん。出れると思うよ。中3までこの調子でいれたらね」

「いけるだろ。ナツキが努力してるのを俺は見てる」

「うん。後悔はしたくないからね」


 努力は必ず実を結ぶ。そんな戯言を言う気はない。

 だがナツキなら大会に出れる実力はある。そこに努力も重なっているのだ。きっと……。

 ふと、俺は心のモヤモヤが混み上がってくる気配を感じる。

 ここ最近……。いや、ナツキと出会った時から感じている感覚だ。

 正体は分かっている。

 それは過去の後悔。心にこびり付き、錆び付いて決して取れる事のないものだ。


「どうしたの?」

「いや何でもない。早く練習してこいよ」


 表情に出ていたのだろう。ナツキは心配そうにかけてくれる。

 中学生にも関わらず、こんな浮浪者相手でも気を遣い接する事が出来る。

 それに比べて俺はナツキの努力する姿を見て、後悔だの何だのと過去の思いを掘り起こしてナーバスになっている。つくづく自分が嫌になる。

 しかしだからと言ってどうにも出来ない。

 その後もナツキの走る姿を見ていると、言葉に表しにくい気持ち悪さが込み上げてくる。

 努力する姿が、後悔したくないというナツキの思いが俺の押し込めている思いを刺激している。


「すまんナツキ。今日は帰る」

「どうしたの?」

「ちょっとな」


 俺はナツキを見る事なく公園を去る。

 これ以上は耐えれそうにもなかったんだ。


「明日も来てよ!待ってるから!」


 返事は出来ない。来れる気がしなかったから。

 きっとナツキは悲しい顔をしているだろう。

 でも俺には直視する勇気も、返せる言葉もない。


「あぁクソ……」


 一人夜空を眺め歩く道で、俺は心底自分の事が嫌いになった。

 そして俺は暫くの間、あの公園に行く事はなかった……。

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