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【本編完結】“足りない”令嬢だと思われていた私は、彼らの愛が偽物だと知っている。  作者: ぽんぽこ狸


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その後のショートストーリー 1






 結婚してからというもの、充実した生活が続いていた。


 ティアニー侯爵家での一件があって以来、図書館への寄付は増えていく一方で、ヨエルがクレメナ伯爵家に移ることになり、もう一つ小規模なものをクレメナ伯爵家領地に立てることになった。


 幸い、蔵書も増えてきて、置く本には困らないし、その話を聞いて王家も出資をしてくれることになった。


 なのですんなりと作ることができ、ライティオ公爵領の図書館はエリオットに、こちらの図書館はヨエルの管轄ということになった。


 そしてレーナはすぐそばに図書館が出来たことによって、仕事を終わらせた後はしょっちゅうこちらにいることが多かった。

 

 そういう事情を鑑みて、時折、リリーはクレメナ伯爵領の図書館の方へとやってきてくれた。


 こちらの図書館には貴重な本よりも、大衆向けに作られている物語などの蔵書が多い。


 まったく同じものを近くに作るよりも、それぞれに特色を出した方がいいという事でそういう風になっているのだが、それらを目的にクレメナ伯爵家図書館にやってきているとリリーは言ってくれる。


 ただレーナとしては王都から少し距離があるので少し申し訳なく思っていた。


 けれども、何にせよ彼女は楽しそうだ。


 今はペラペラと本をめくって自分に必要なページを探し出してぱっとレーナに視線を向ける。


「あ、ありました! レーナ、ほら見てくださいここのシーンです」


 さされてレーナはその部分から目で追っていく。


 どうやらそれは、淑やかな令嬢が愛の物語の曲を、意中の相手のいるお茶会で披露して、演奏中に視線を送り思いを伝える。


 それを受け取った相手は次のお茶会で、彼女の誕生花を飾ったお茶会に招待し想いに答えたということらしい。


 貴族同士の話なのでもちろん、回りくどい展開が多いのだがこれについて言えば、回りくどいどころか意味が分からない可能性まであると思う。


「この告白の仕方が今は最もブームなんです! ロ、ロマンチックでしょう? レーナには今は関係ないと思われたかもしれませんが、もちろん既婚者の間で思いを伝えるのにも良いのです」

「愛情は日々、言葉で示しています」

「それはもちろん大切ですが、その、ほら。これをして、今夜は……とお伝えするという意味もあるのです」


 何故だかリリーは声を潜めてそんなことを言い、レーナは首を傾げた。


 今夜ということは夜に何かしら二人の合意が必要な事柄があるのだろうか。


 考えてみても思い浮かぶことはなく、しいて言うなら夜に二人でこっそりと会って交流を深めたいという事だろうかと思う。


 ……深夜に会うというのは、きっととても特別感のあることなんでしょう。私は日が暮れると眠くなってしまいますが、楽しそうです。


「目線をおくりながら、愛に関連する話を弾けばいいのですか」

「はい、そ、それだけです! やってみたいと思いますか?」

「はい。楽しそうなので。それにリリーに教えてもらった事ですから」

「きょ、恐縮です。それで、レーナは……その、ヨエル様とは仲睦まじいのですよね?」


 彼女は少し頬を染めて聞いてくる。


 その言葉に、もちろんだと頷く。それに、そのことを確認するためにこの話題を出したのだろうということも察しがついた。


 しかし、何故それを気にするのかという点については少し難しい問題だったが「それなら……わ、私がアプローチしても……」と小さくつぶやく彼女を見て、合点が言った。


「……リリーにも思い人が出来たのですか? それはもしかして」

「あ、え? どうして、わかったんですか」

「エリオット様ですか?」

「っっ!! あ、わ、う、ちが、いや、その」


 反応を見ればすぐに間違っていないと思える。


 リリーはあの舞踏会の場にもいたし、エリオットが一時期レーナに思いを寄せていたことを知っていたのだろう。


 しかしアレから交流も持ったエリオットとリリーは良い仲になって、恋愛小説に出てくるようなアプローチをかけたくなった。


 ただ、友人であるレーナと万が一繋がっていたらいけないので確認をしようと思った……で、間違っていないだろうか。


「隠さなくても問題ありません。とても良い人だと思います」

「そ、そんな。っ、な、なんでわかったんですか!?」

「……なんででしょう?」

「っ、最近のレーナは本当に……か、かなわないですね。その通りです。私なんか、釣り合わないかもしれませんが……その、優しい人ですし……」

「他には、どんなところを良いと思っているのですか?」

 

 レーナは、少し好奇心も含んだ瞳で彼女に問いかける。友人の恋路というのは、どうしても気になってしまうものなのだなとレーナは新しい知見を得たのだった。




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