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【本編完結】“足りない”令嬢だと思われていた私は、彼らの愛が偽物だと知っている。  作者: ぽんぽこ狸


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18/43

18 策略




 レーナはあの場にいたうえで唯一よくしてくれた令嬢であるリリーとひそかに連絡を取って会う約束をした。


 最近は忙しくしていて、ヨエルにマメに手紙を出せていないが、彼の教えには従っているので大丈夫だろうと思う。


 宣戦布告を受けたからには鮮烈にわからせて、完膚なきまでに叩きのめす。


 そのために彼女と会った。


 屋敷に招いて、きちんともてなすと彼女は申し訳なさそうな顔をして世間話もそこそこに話を切り出した。


「……あの、レーナ様、先日のティアニー侯爵家では申し訳ありませんでした、お気を悪くされたでしょう?」

 

 不安そうに問いかけてくる彼女に、レーナは紅茶を一口飲んでから、頭を振って否定する。


「いいえ、あそこまで大勢の前でああいう事をされたのは初めてでしたが、私は何も悪い事はしていませんので気にしていません。それにリリー様が謝る必要もない事です」

「そ、そうかもしれませんが止めることができませんでした。……わ、私は……きちんとあなたのことを知っていたというのに」


 予想外の発言にレーナは首をかしげる。


 彼女とはティアニー侯爵家での一件の前にも話をしたことがあったが、そこまで深い仲ではなかったと記憶している。


「あ、すみません。あの、ええと……図書館でお見掛けしていたんです。ヨエル様とお話しているところも何度か……」

「リリー様も利用していたのですか」

「はい。わ、私の家系は魔法使いの多い家系でおじいさまの代で爵位をいただきましたが、何かと知識不足な面も多く利用させていただいていました」

「なるほど」

「そ、それに! とても真剣に本を読んでいらっしゃるところを見て、いつか、声をかけさせてもらおうと思っていたんです!」


 リリーは食い気味にそう言って少し身を乗り出した。


 レーナとしては少し協力をしてもらおうと思って、来てもらっただけなのだがこんなふうに彼女が思ってくれていたとは予想外だった。


「できれば、友人に……と思っていましたが、ヨエル様ととても仲がよろしいようで、邪魔をするわけにもいかないので」

「そうだったんですね。……では図書館仲間ですね、私たち」

「ええ、嬉しいです! 私の友人は知っての通り、ルビー様のような家同士のつながりがある人たちばかりで、ああいうことを好むので深く打ち解けることもできず……と、図書館にはあまり年頃の近い女性もいませんでしたしお話しできる人が出来て本当に、嬉しい」


 言われてみると、たしかに男性の利用者が多く、女性も令嬢たちではなく既婚女性が多かった。

 

 ぜひとも、同じ年ごろの利用者のリリーと面白い小説などを共有してみたい。


 それはきっと楽しいことであろう。


「それに、わ、私は先ほど言った通り魔法使いの家系ですので多少なりとも知識があると自負しています。いつか自分の魔導書を書いてライティオ公爵領図書館に寄贈するのが夢なんです!」

「それはすごい夢ですね。本を書くですか、想像もしていませんでした」

「難しい事だとはわかっていますが、本は私をいつも導いてくれましたから私も誰かの導きになれたらと……壮大な夢で恥ずかしいです」

「いいえ、とても良い夢だと思います」


 自分にはなかった彼女の発想に素直に肯定の言葉が出てくる。


 しかし、魔法という言葉を聞いて、レーナも彼女をここに呼んだ理由を思い出す。


 彼女の家がそう言ったことに精通しているということについてレーナは知っていて話を持ち掛けようと思ったのだ。


「そう言ってもらえると嬉しいです。……それで、そ、その、こうして声をかけてくださったのは、こういう話をするためだけではないのですよね?」


 丁度良く彼女も本題の方へと話を切り替えようとする。


 その言葉に深く頷いてレーナは問いかけた。


「はい。もちろんリリー様と交流を深められたらという気持ちもありますが、話は、ルビー様の事です」


 コクリと彼女は頷いて真剣な顔をした。


「私は彼女に、足りないだけの令嬢ではなく多くの事を知っていると示したいのです。その協力をしてくださいませんか」

「……な、何か策があるのですか?」

「はい。少なくとももうああいった事をさせないようにはできると思います」

「く、詳しくお聞きします」


 そうしてレーナはリリーにお願いをした。


 幸い、彼女はレーナの想定通りにアンドリューとの交流の糸口を持っていて、魔法の知識もとても深いものだった。


 しばらく時間はかかるだろうが、目新しい情報や、やったことのない事への挑戦はレーナの心を躍らせて時間を忘れて取り組んだのだった。





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