嗤うカメレオン
「やったな、逆転だぞ、おい!」
自陣に戻ると、ぶーちんが興奮気味にあたしを迎える。菜々さんも明るい表情になっていたので、ガッツポーズで好調をアピールしておく。
椅子に座ると、水を含んでうがいをする。心なしか、さっきよりも水が美味しいように感じた。
「よく逆転した。闘い方は変えなくていいから、今みたいにチャンスがあればすぐに距離を詰めて連打だ。あいつは腕が長い分、接近戦はそれほど得意じゃない」
ぶーちんが相変わらず真っ当なアドバイスを送ってくるけど、まさにその通りなので次もうまくいった闘い方でいこうと思う。
このインターバルではそれほどたくさんの指示が出ることもなく、出来たら倒して来いで次のラウンドが始まる運びとなった。
――3ラウンド目が始まった。
ゴングが鳴ると、あたしはまたスピード重視で前後左右に細かく動く。トトントトンと変則的なリズムで揺さぶりをかけながら、迦米の懐へと入り込むタイミングを計る。今のあたしは絶好調だった。
じゃあ、倒しちゃおうか――
チャンスはすぐモノにした方がいい。そうしないと勝てる試合も勝てなくなることがあるからだ。
いける。今の迦米にはあたしの攻撃が見えていない。
一気に距離を詰め、いきなりの右で飛び込む。その時……。
「うわ」
パンチを盛大に空振りしたあたしは、思わず前につんのめる。
かわされた?
っていうか、そんな単純な問題じゃない。
「嘘でしょ……」
思わず試合中にひとりごちる。
目の前で薄笑いを浮かべる迦米。その体が透けている。
いや、違う。透けているんじゃない。
迦米レオンはその名の通り、周囲の風景と同化していた。




