不安を煽る山中
部屋へと戻ると、すぐにベッドへ倒れ込んだ。
思った以上に消耗している。やはりUMAは強敵だった。明日はさらに強敵が出てくる可能性もあるから、体を休めないといけない。
『勝てて良かったな。俺も見ていてヒヤヒヤしたぜ』
スピーカーから山中の声が響く。
「まったくだよ。あんなバケモノ、どこからスカウトしてきたの?」
『俺は色々とコネがあってな』
山中は「フフ」っと笑う。
「何がおかしいの」
『いや、次はもっとすげえ奴が出てくるからよ』
「……なんて?」
さっきまで眠かったのに、血の気がサーっと引いていくとともに目が覚めた。
『次の奴はもっととんでもない奴が出てくるからよ。せいぜい負けるなよ』
「どんな相手なの?」
『平たく言えば、動きが人間じゃねえな。その他もだが』
「映像はあるの?」
『残念ながら今回はない。今大会から初出場の選手だからな。お前がいなければ俺もそいつに賭けたかもな』
「嫌な予感しかしないんですけど」
『見たら驚くだろうな。俺も最初はCGなんじゃないかって思ったからな』
「……どういうこと?」
『まあ楽しみにしておけよ。あと喜べ。次の試合が準決勝だ。つまりは、あと2勝すればお前はこのトーナメントで優勝になる。そうなれば晴れて自由の身だ』
「あと2勝……」
『そうだ。当然のこと決勝に進むにつれて敵は強くなる。だが、それでも俺は毎回お前に全額を賭ける。それが俺の美学だ。だから絶対に負けるんじゃねえぞ』
それだけ言うと山中は一方的に通信を切った。静かな部屋でぶーちんや菜々さんと目を見合わせる。誰も言葉を発しないが、その目には一様に嫌な予感を感じている気配があった。
次で勝てば決勝進出というのは初耳だった。UMAと闘った時は「まだこんなのが何人も出てくるの?」って思っていたけど、あと2戦だけならどんな相手でもギリ精神的には持ちこたえられる。
まあ、そうは言っても次にグリズリーとかが出て来なきゃいいけど。そんなのが出てきたら勝てるはずがないし。これ以上のサプライズはもうたくさんだ。
「今度はどんなバケモノが出てくるんだろうね」
誰にともなく言い、あたしは再びベッドに寝転がった。
今度の敵は映像がない、か。まあ、アマチュア時代は相手の映像がないのが基本だったから別にいいけど、UMAを超える変態が来ると言われると気になるというか嫌な予感しかしない。
いずれにしても、今悩んだところでどうにでもなる話じゃない。さっきの試合では腕が伸びる敵が出てきた。次の対戦相手が火を噴いてきたりナイフで切りかかってきても驚かないようにしておこう。それがボクシングかどうかはさておいて。




