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ショートレンジの打ち合い

 第2ラウンド。さっきのようにはいかない。


 あたしは軽くステップを踏みながらUMAを睨む。UMAは相変わらず感情のない視線をこちらへ向けている。本当に得体の知れない生き物のようだった。


 小刻みにステップを踏み、左右へと動いて揺さぶりをかける。こいつ相手にはどれだけ離れても離れすぎということはない。


 UMAは自分のリーチに自信があるのか、低いガードで攻撃の機会を窺っている。


 長い腕が、かすかに動く。


 ――今だ。


 伸びる左。一気に踏み込みながら、身体を前傾させて外す。フルスイングの右オーバーハンドフックで襲いかかる。


 右フックは空を切る。会場からどよめき。見ている側でも、このパンチには驚いたようだった。


 そのまま前に突っ込む。一気に距離を詰めて、身体を密着させた。左右のフックをパパパパンと連打して、ボディーから顔面へとつなげていく。


 そのうち左ボディーが効いたようで、UMAが背中を丸めた。ヨシ。顔面が近付いた。


 そのままショートレンジの速いパンチで左右のフックを放ち、空いたガードの真ん中を素早くアッパーで打ち抜いた。手ごたえとともに、UMAの顔面が撥ね上がる。踏み込んで、ワンツーで追撃した。


 ワンツーは綺麗に当たり、UMAは横へ回転するように倒れた。ダウン。レフリーがカウントを数える。逆転に会場から悲鳴が上がる。


「よっしゃ、やった!」


 ぶーちんが快哉を叫ぶ。あたしはナチュラルにぶーちんへ向かってガッツポーズをした。


 彼のアドバイスは的確だった。いや、アドバイス自体はそう物珍しいものでもなかったけど、ダウンを取られたあたしの思考を短時間で整理してくれた。お陰ですぐに切り替えてダウンを奪い返せた。


 レフリーがカウントを数える。UMAは初めて動揺らしき表情を浮かべてフラつきながら立ち上がる。眉間がざっくりと切れて、血が流れ落ちていた。こんなところでもあたしのカミソリパンチは健在だった。


 ほとんど観客の懇願めいた声援を受けながら、UMAが何とか立ち上がる。レフリーも破産した奴らから怨まれたくないのか、何のためらいもなく試合を再開させた。


 あたしはガードを上げたまま距離を詰めていく。怯えるUMA。打てば届く距離なのに、長い腕で顔面を覆って防御に徹している。今までこんな風に倒されたことがなかったのだろう。


 ジャブで遮られることもなかったので、一気に距離を詰めたあたしは再度上下にショートフックを打ち分ける。近距離の防御が初心者レベルの選手に、この連打は防げない。


 左ボディーが肝臓に突き刺さる。無表情に徹していたUMAの顔が苦悶に染まる。もう一発左ボディーを放ってから、対角線上から右を打ち下ろした。


 拳にサクっとした手ごたえ。抜けるような感覚。UMAは十字架へはりつけにされた人のように、両腕を広げてキャンバスに叩きつけられた。


 もう誰が見ても勝敗は明らかだった。さすがにレフリーもノーカウントで試合を止めた。


 一撃KO。規格外のバケモノを2ラウンドで仕留めた。

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