実は真面目だったぶーちん
「ダメージは?」
「大丈夫。見た目ほどひどくない」
セコンドのぶーちんに答える。ぶーちん、思ったよりもセコンドがサマになっているのは気のせいか。って、そんなことはどうでもいい。さっきのラウンドは初っ端から結構な大惨事だった。
「水を」
「はい」
ぶーちんに指示されて、菜々さんがペットボトルの水を差し出す。うがいをして水を吐き出すと、血が混ざっていた。大して痛むわけでもないけど、口の中を切ったみたい。
「いいか。相手はやたらとリーチが長い。これまでの感覚でやっていればやられる。パンチを外して、素早く中へ入るんだ」
「……やけにまともな指示を出すね」
「そりゃそうだ。夜中に死ぬほど映像を観てきたからな」
なんと。
ぶーちんは想像以上に真剣な態度でセコンドに臨んでいた。この男とかつてやりあったことがあったなんて。
「多分相手は近距離で速い連打を打たれると対応出来ない。どうにか中に入ってボディーから顔面へとパンチを散らしていくんだ」
「ふっ……」
あたしは思わず笑いそうになった。
「俺、何かおかしなことでも言ったか?」
「いいえ。的確過ぎて笑っちゃっただけ」
「そうか。所詮は素人の戯言だ。最後は自分で決めてくれ」
ぶーちん、あんた実はセコンドに向いているかもよ。
笛が鳴り、セコンドアウトのアナウンスが会場に響く。
「さて、さっきのお返しをしなくちゃね」
「ラウンド2」
第2ラウンド開始を告げるゴングが鳴った。




