バケモノと対峙
翌日になって、試合の時間になった。
前の試合から24時間も経っていないので、やれることはシャドウにミット打ちと、ひたすら繰り返すイメージトレーニングだけ。というか、あんな相手にどう闘ったらいいのか何度考えても分からない。きっと現役の世界王者だっておんなじことを思うだろう。
どうあれ、もう迷っている場合じゃない。覚悟を決めたあたしは、選手入場の時には勝つイメージしかしていなかった。
相変わらず会場にはブーイングが響いている。無理もない。前の試合で何人ものアホを破産に追いやったのだから。今度はあたしの方に賭ける人間も増えているのだろうか。
リングの向こうからひょろ長い体をした男が歩いて来る。浅黒い肌。タイ人かインド人か分からないけど、とにかくどこかのアジア圏の選手なんだろう。
先にリングインすると、超高速シャドウで遠くから相手を威嚇する。あたしは一応前世で世界戦の決まっていたトップランカー。こんな格下に負けるつもりはない。
UMAは暗い眼でこちらを見つめている。その表情から何を考えているのかは読み取れない。
両選手の名前がコールされると、相変わらずあたしの時には盛大なブーイングで、UMAの方は人間ですらないリングネームのくせに英雄のように歓声が沸いていた。世の中間違っていると思う。
リング中央でレフリーの注意を受ける。思わず見上げてしまうほどの身長差。公式の試合であれば絶対にありえない。というか、山中は本当にあたしの方に賭けたのだろうか?
不平等の要素しかないことを確認し終わると、あたしは自陣で試合開始を待つ。
「ラウンド1」
試合開始のゴングが鳴る。
間違いなくバケモノが相手だけど、もう引き返すことは出来ない。




