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永遠にライバル

 勝ち名乗りを受けてリングから降りると、盛り上がった男子部員に囲まれて大騒ぎになった。ドルオタの由奈ちゃん派も大騒ぎ。まるで日本シリーズの9回裏で満塁ホームランでも打ったかのような賑わいとなった。この会場内限定なら今のあたしは大谷以上に人気があるだろう。


「死ぬかと思った」


 大騒ぎする周囲をよそに、思わず本音が出る。


 アマチュアボクシングでは、基本的に倒し合いの展開はあまりない。その前に試合が終わってしまう場合がほとんどだからだ。


 だけど、今回の試合についてはお互いが倒している展開というのもあり、レフリーも止めるに止められなかったというのが正直なところなんだと思う。


 天城は派手に倒れたものの、復活するのは早かった。ダウンから目を覚ますと「ああ、やっちゃった」という顔で倒された経緯に耳を傾けていた。


 一応、試合が終わったということで挨拶に行く。これも高校ボクシングあるあるの恒例行事になる。


 すっかり素に戻った美少女の天城楓花。互いに健闘をたたえ合い、前世からの因縁については口にしない。


 毎試合の後で口にする「次に会った時は負けない」も、もう何年も繰り返したセリフだ。佐竹先生や他の男子部員も、この一言がどれだけ前から交換されてきたかを知らない。


 先ほどの言葉通り、これからも天城楓花とはライバル対決が待っている。転生したあたしは高校一年生。高校のボクシングはインターハイだけじゃなくて国体、選抜とメジャーな大会がある。実質的には全部で8大会あるはずだから、これかも嫌になるぐらい拳を合わせることになるだろう。


 前世での勝敗は五分五分だった。だからお互いに世間で騒がれているような高校六冠やら八冠にはなれなかった。


 これからも彼女とは足を引っ張り合いながらキャリアを重ねていくのだろう。そう思うと、何やら自虐的な笑いが出た。


 だけど、あたしというか、あたしたちはまだ知らなかった。


 このすぐ後で、笑えない事態が発生するということに。

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