彩光
モトキとヒカルは……
○彩光
「あ、あのね……」
「うん」
ヒカルは言おうとすると言えなくなる自分の癖が苦手だった。どうしても大事な時に限って言葉が出なくなる。こんな自分の癖は、きっと、そばにいる人たちには迷惑なんだろうな……。そう想って、ますます声が出せなくなった。
モトキは、ヒカルのいつもの癖が出ても気にならなかった。それよりも、この癖にかかる時間が長ければ長いほど、ヒカルにとっては大事なことになるのだと分かっているから、モトキにとってはいくらでも待ちたい時間だった。
「わ、私ね……」
「うん」
「わ、私は……」
「うん」
ヒカルはモトキが呆れてしまわないかとヒヤヒヤした。恐る恐るヒカルはモトキの瞳を見上げる。モトキは変わらずヒカルの眼差しを見つめてくれていた。
(モトキくん……変わらないね)
ヒカルはモトキの変わらない瞳に勇気を得た。そこから声を振り絞って答えた。
「私ね、モトキくんとは、ずっと一緒にいたい……」
「ずっと……? 一緒……?」
「うん、ずっと一緒がいい」
「ずっと一緒って……俺がお前をずっと好きでいれば良いってことか?」
「ううん……モトキくんが私のことを嫌いになっても……ずっと一緒にいたいの……」
「お前、それって……?」
モトキは両手をヒカルの両肩から離すとそのまま両腕をヒカルの背中へと回した。
「もう、それって、永遠の誓いじゃん?」
「うん……そうかも?」
「かも? じゃねえよ、そのまんまだろうが?」
「うん、きっと、そう……」
ヒカルはギュッとモトキの背中を掴んだ。
「返事……、これで良い?」
「ダメ」
「ダメなの?」
「こんなんじゃ足りねえ」
「どうして?」
「俺の好きが止まんねえから」
モトキはヒカルの体をグイッと離した。モトキはヒカルと見つめ合うとクシャリッとヒカルの髪の毛を撫でた。
「俺のそばに居るか?」
「うん」
「ずっとか?」
「うん」
「俺がお前を嫌いになってもか?」
「うん」
「ば〜か、嫌いになんてなる訳ないじゃん? それくらい分かるだろう?」
「うん……分かりたい」
「よっしゃ。これからの時間をかけて、お前にそれを分からせてやるよ、俺が。いいよな?」
「うん!」
ヒカルは重たい荷を下ろしたかのように満面の笑顔をモトキに見せた。モトキはヒカルのその笑顔に向かって額にキスを下ろした。
「えっ?」
「えっ? って、キスじゃん?」
「う、うん」
「初めてか?」
「モトキくんも?」
「さあな〜」
「えーっ!」
モトキはサッと体を翻すとカバンを手に取った。振り返るとヒカルがおでこに両手を当てて、顔を真っ赤にして突っ立っていた。
「お前、顔が赤いぞ?」
「だ、だ、だって〜」
「ば〜か、キスぐらいなんだよ?」
「ぐ、ぐらいって〜」
ヒカルは泣きそうな顔をしてモトキの肩をポカポカと叩き続けた。モトキは痛そうな顔をしてその手をグイッと掴み取った。
「叩くなって」
ヒカルはモトキに掴まれた腕がビクともしないことに焦りを見せた。モトキは焦るヒカルに静かに言った。
「お前なあ、男の力をなめてっと、いつか痛い目に遭うからな」
「モ、モトキくんでも……?」
「俺のことなめてんのかよ?」
「そんなこと……ないけど?」
「ないけど、なんだよ?」
「ゆ、許して……くれるかな……って?」
「暴力を?」
「暴力だった?」
「暴力だろう〜?」
「痛かった?」
「まあまあだな」
「ほら、許してくれた」
「ったく、調子狂う……」
モトキはヒカルの手を離した。ヒカルはもう一度モトキの手を取って、モトキの肩に額を乗せて言う。
「ごめん……」
「良いって」
「ほら、許してくれた」
ヒカルは嬉しそうに真っ白い歯を輝かせて笑顔を見せる。モトキはつないだ手の甲にキスを落とした。
「まったく、俺のお姫様。こうもオテンバじゃあ、目が離せないな」
「モトキくん、目を離すつもりだったの?」
「いいや、まったく」
「クスクスクス」
「ハハハハハ」
モトキは家に帰ると今日の出来事を思い返していた。思いがけずヒカルに告白したこと。上手く二人とも両想いであったこと。思い出すだけでもハッピーな時間だった。
(なんだか上手く行きすぎて怖いくらいだなあ……)
モトキは端末を枕元に投げ捨てると灯りを消して眠りについた。
モトキが夢の世界へ旅立つとアマガミとオモイカネの両神が夢の世界へと姿を現した。
「トモ〜? この者で良かったのかの〜? おなごの気持ちが知りたいと言うのは?」
「ええ、間違いないはずですが」
「おなごはどの娘だったかのお〜?」
「ああ、ちょうどいま、夢を見ている最中ですよ?」
「誠か……」
モトキはヒカルとの夢を見ていた。夢の中でヒカルはモトキのお嫁さんになっているようだった。
「どうやらお互いの気持ちは分かり合えた様子ですよ……」
「なんと……。また、ワラワは願いを叶えることが出来なんだか……」
「そうとばかりでもないようですよ?」
「誠かのう……」
「ええ、大丈夫ですよ。この者の願う言葉を聞きつけたのはアマガミ殿だけでしたから」
「そうであったか」
「願いを聞き遂げられたからこその成就でしょう」
「なら良いのじゃ」
アマガミとオモイカネはフッとモトキの夢の世界から姿を消した。両神はそのまま天界の泉へと姿を現した。
「トモも、恋をするのかえ?」
「ハハ、どうしたんですか? 急に?」
「ワラワもいつか恋をするのかのう……?」
「さあ……でも、きっと、それは素敵な恋をなさるのでしょう? アマガミ殿?」
「それならワラワは、トモが良いぞ」
「はいっ?」
「恋をするならトモが良いと言うとるのじゃ」
アマガミは照れを隠すようにして泉に向かってしゃがみ込んだ。
「恋をするならトモとする。それがワラワの願いじゃ」
「それは、いつからですか?」
「いつからとは、何じゃ?」
「私は、いつからでも良いですよ? アマガミ殿?」
「トモ……」
アマガミは感動を示すとそれと共に本来のオーラが立ち上った。アマガミが発するオーラに幼神が身を委ねると、見る間にその姿は女神へと変化した。
「おお〜、さすがは、天界を揺るがすほどの美しさ……見る者すべてが心を奪われまする……」
オモイカネは思わず頭を下げた。
「トモ……そなたに永遠を誓う」
「仰せの通りに」
オモイカネの幼神は自身のオーラで以って本来の神の姿を現した。その男神は凛々しく、その賢明さが眩く輝いた。
「幾久しく……」
「幾久しく……」
男神と女神はこうして結ばれると天界に喜びの雨が降り注いだ。その水はやがて地上へと流れ、あちこちに彩光を現した。
モトキたちは、その光を愛する者たちと眺め続けた。
完
未だ恋をしらないアマガミ天使ちゃんがヒトの子のガールズ&ボーイズたちに恋の甘味をおしえます……エグ味はあとで……フウー ここに完結いたします 長らくありがとうございました




