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死に際と化け物
「なんなんだ。これは……」
蒼炎に覆われた森、果てない空の宵闇。
それはまさに『死』の光景だ。
俺は地面に倒れている。
起きあがろうとしても、手に力が入らない。
(何が起きているんだ……)
傷だらけの体はズキズキと俺に苦痛を与える。
「ヴヴゥゥゥ……ギャアアァァァ‼︎」
体の右側から、モンスターの鳴き声のような大きな音がした。
目を向けると、そこには巨大な化け物が立っていた。
ゴリラのような黒い体に、猪のような頭、
角と牙が生えていて、体長はおよそ五メートルと大きい。
言語を扱うほどの知性はないみたいだ。
「ヴボオォォォ‼︎」
化け物は吠えながら、赤く光る目で俺を見ている。
まるで、地面に倒れ、もがき苦しむ俺の姿を嘲笑っているようだ。
明らかに俺を敵視していた。
俺は力を振り絞って声を発した。
「おい、デカブツ‼︎ 何が起きているのか分からないが、俺はこんなとこでは死なねーぞ‼︎」
化け物は大きな腕を振り上げて静止した。攻撃の構えだろう。
(ヤバい。動けない……)
化け物は勢いよく腕を振り下ろす。
反射的に、俺は目を閉じた。
(あぁ、俺、死ぬんだ……)