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三題話噺(依存 百合 姉妹)

作者: 春夏冬 悪姫

私、赤井 桜は極度の引っ込み思案で高校まで友達が居なかった。

高校に入ってもそれは変わらないと思ってたし、変える勇気もなかった。

そんな私に友達ができた理由が分からない。

きっかけは多分普通に話しかけられてだと思う。

もうそれすらも分からないくらい自然に友達を作る。

白井 百合はそんな女の子だ。

誰もが眩しくて目がくらむくらい明るくて、誰もが彼女に憧れていた。

「桜ちゃんは無理しなくていいからね。」

そう笑う彼女が私は好きだった。


高校卒業して大学は別々にそして、そのまま連絡が取れなくなった。

私は1人で今働きに出ている。

いつも通り働いていつも通り家に帰り、適当に胃に何かを入れて眠る。

それだけ。

百合のことも忘れていたのだ。

その時まで。

ある日の帰り、駅でふと百合っぽい人が見えた気がした。

私は慌てて見えた方に歩き出す。

見間違えかもしれない。

それでも確かめずには居られなかった。

そして、見つけた。

百合は駅近くの銅像に背を預けて誰かを待ってるようだった。

私は近づこうかと思って直ぐにやめる。

彼女は私なんか忘れてるかもしれないし、それになにか用事があるようだ。

お洋服もどう見てもよそ行きのもの。

私が話しかけたら迷惑になるだろう。

そう思って踵を返そうと思った時、男が百合に話しかけている。

知り合いだろうかと様子を伺うが百合は目線を合わせようとしてない。

それに気づくといつの間にか近づいていた。

「お久しぶり。何してるの?」

そう百合に話しかけたが彼女は目を細める。

多分誰かわかってない。

それはそれでいい。

隣で何か話してる男を無視して百合の手を掴むと歩き出した。

心臓の音がうるさかった。



「さくら?」

その声で我に返る。

振り返ると百合は少し残念そうな顔をしていた。

「さくらなんだ。」

私はよく分からなった。

「ごめん。余計なこと……したかな……。」

私の言葉に彼女は首を振る。

少し話そうか。とベンチに2人で腰掛けた。

しばしの沈黙。

百合……こんなに静かだったっけ。

そんなことを思ってしまう自分が嫌になる。

「さくらはさ、私のことどう思ってた?」

ふと、そう切り出した百合。

私は素直に答えた。

明るくてみんなに好かれてる人気者かなと。

私の言葉に百合はそうよねと呟く。

「私ね姉妹がいたの。お姉ちゃん。」

知らなかった。そういえば百合と話してる時家族の話になったことないかもしれない。

「お姉ちゃんはとても明るくてみんなに優しくて……。」

そういう彼女はどこか遠くを見ている気がする。

「でも、お姉ちゃん大きな病気になって死んじゃった。」

「それはいつ?」

「確か、私が中学卒業する少し前かな。私はお姉ちゃんみたいになりたかったから。頑張ったの。」

辛そうな声で彼女は続ける。

「お姉ちゃんだったら。お姉ちゃんなら。それを考えて私なりに実践していったの。」

私は相槌はうたず言葉を待った。

「さくらはさ、私に似てたんだよね。引っ込み思案なところとかさ。」

少し区切って……彼女は続ける。

「私はさくらに依存してたんだよ。」

理解出来ずに私は聞いた。

彼女は答える。

「さくらを見ていると私は頑張らなきゃって思えたの。この子を見れるのは私だけなんだって。私が頑張らなきゃ。この子は1人になるんだって。」

そこで、ずっと遠くを見ていた百合は私を見る。

「さくらは大学どうだった?」

私は思い返しながら答える。

「百合に迷惑かけたくないから。頑張ったよ。友達は少し出来たかな。」

良かったね。そうつぶやく彼女は言葉とは違って残念そうだった。

「ほんとに私は最低。」

そう吐き捨てるように呟く。

「私はさ、さくらがダメで私に連絡すると思ってたんだ。そう決めつけてた。」

さくらは頑張っていたのにね。そう続けたあと目を閉じる。

少し息を吸って彼女は続けた。

「私は頑張れなかった。無理して続けたお姉ちゃんごっこに疲れちゃった。でも、周りが知ってるのはごっこ遊びしてる私じゃん?」

私は頷く。それを見て少し苦笑しながら彼女は続ける。

「だから、どんどん周りから離れようとして。1人になって。そしたら、本来の私がこういうの。生きるの疲れたね。って。」

その言葉は消えそうなほど淡い。

「今日は本当は死ぬつもりだったんだ。話しかけてきた彼には悪いことしたな。」

話が見えない。彼とは駅近くで話しかけてた男性だろうか。続きを待った。

「1人で死ねなかったからさ。集団自殺の募集に応募したの。彼が準備して私を迎えに来てくれたんだけど私なんか怖くなって。」

そこでまた少し彼女は目を閉じて、息を吸った。

「そしたら、さくらがきてさ私の手を取って歩き出したんだよね。最初は誰かわかんなかったけど。」

「余計なことした?」

私の言葉に彼女は首を振る。ただ……と言葉を続けた。

「さくらは私無くても大丈夫だったんだなと思うと悲しくなって、そして理解したんだ。私がさくらに依存してたんだって。」

全部聞いても私には理解できなかった。

私はそう伝えると彼女は笑った。

「さくらは素直だね。」

そうだろうか。私は今度は自分の話をする。

二人の時間はまだ続いた。

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