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虚色の葬送曲  作者: 井伏山椒
第一章 悲劇
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化け物①

京極檻人 『東京総会』の幹部の1人。警視庁長官の一人息子。『東京総会』の資金源であるカツアゲを仕切っている。


浜田景 京極檻人の右腕にしてカツアゲグループの隊長。大学生時代、京極に拾われる。


代吉 景の側近。でかい。

ある夜遅く、人通りの少ないトンネルの中で五人の男達が一人のサラリーマンを取り囲み怒鳴りつけている。


サラリーマンの服はボロボロで顔には無数の痣がある。


「だっ、誰かー、たっ助けてくれー」


「うっせえ!」


囲んでいる男のうちの赤いパーカーを着た男が、倒れた男の腹に蹴りを入れ黙らせる。


「グァハ…ゴホッ、ゴホッ」


蹴りは男の横腹にストレートに入り、男は血を吐き倒れ込む。

だか、カバンを決して離そうとはせず蹲る。


「うっせえなオッサン。オメエ、俺たちが誰か分かってんのか?あぁ?俺たちは『東京総会』のメンバーだぞ?これ以上痛い目に遭いたくなきゃ、とっとと金出しやがれ!」


メンバーのリーダー格であろう男が鞄を必死で守る男の髪を掴み上げ、鞄を奪おうとする。

それでも男は決して鞄を離そうとはしない。

それどころか、より一層強く鞄を抱きしめる。


「この中には娘の治療費が入っているんです!お願いします。どうか見逃して下さい!このお金が無いと娘の病気を治す事ができないんです!お願いしますぅぅ!どうかどうか!」


男はボロボロになりながらもリーダー格の男に懇願する。


「おい、景ちゃんどうする?このオッサン、このままだと一向に放しそうに無いぞ」


赤いパーカーの男がリーダー格の男に問いかける。


「・・・・・・・チッ、、、メンデェな、あー 代吉・・・やれ」


「うっす」


景と呼ばれた男は後ろにいる190センチ位ある大男に指示を出す。


大男は手に持ったゴルフバットで倒れている男の首を殴りつけた。


ボギィ


鈍い音と共に倒れた男は力を失い、仰向けになり動かなくなった。


「ズラかるぞオメエら。遅くなったら、京極さんがおっかねえかんなぁ〜」


景は鞄の中にあった現金だけを奪いそのまま五人は去っていった。


「馬鹿な親父だなぁー。景ちゃんに金さえ渡せば、命まで失う事はなかったのに、、、」


トンネルのなかには冷たくなった男と、中身の錯乱したカバンだけか残されていた。

トンネルを通り抜けた夜風が、鞄の中の資料を撒き散らした。



五人は誰一人として気付いていなかった。自分達が監視され続けていた事に。いや、1人はどうやら違和感を覚えたらしい。それは本能であろうか、それとも単なる勘なのかは分かったものでは無かったが。




「浜田景、帰りやした」


そう言うと、景はある一室に入って行く。そこにはガラの悪い男達が武器を持ち、真ん中のベットを囲む様にして床でくつろいでいる。ベットには四、五人程の女が全裸で倒れ込んでおり、真ん中に筋骨隆々な巨漢が堂々と構えている。


「おぉ、帰ったか景。んでどうだった?今日の収穫は?」


「5件で計90万円ってとこでさぁね。ただ最後の一件で問題が起きやがって、、、」


「聞いている。やったのは代吉らしいが指示したのはてめえらしいな。親父には手、回しといた。が、また酷く愚痴られたよ。」


巨漢はベットから立ち上がり、裸のまま景の前にゆっくりと歩いて来る。


「ちっ、違うんだって京極先輩ッ!あの親父がごねやがったんだ!代吉には殺せとまでは言っちゃいないんだって!それに・・・」


京極は景の前に立ち、話しの途中であるにも関わらず、腕を大きく振り無言のまま景の腹を殴りつける。景はそのまま壁側にまで約3メートル程吹っ飛んだ。


「ゴホッッッ、、、ゲボッッッ」


「次は無い。お前らのグループは殺す割には額が少ないんだよ。あと景、ふざけた芝居はやめろ。次避けたらぶっ飛ばす。」


「流石に先輩にはバレまっかねー」


景の目が突然鋭くなりる。景は仰向けの状態で、地面を両手で押し跳ね起きる。


「京極先輩、俺、もう今日はあがりやす。」


景はそういうと、部屋から出て行った。



景が部屋から出た後、1人の男が京極に問いかけた。


「檻人さん、やつは何者なんですか?あなたのパンチを受け流すだなんて信じられません。」


京極はフンと言い、遠くを見つめつぶやく。


「奴は俺の右腕で、、、三下の皮を被った化け物だ。」


京極は何事も無かったかのように、ベットに倒れている女を再び犯し始めた。

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