心臓に悪い。
リーリアちゃんと仲良くなろうと努力すること約一週間。
成果はイマイチだった。
そもそもリーリアちゃんに話しかけようと思った矢先に、私に声を掛けてくる人がいたのだ。
「ヴィオレット、一緒に昼食を食べないか」
「…ですから、私ではなく他の令嬢方と召し上がられたらいかがでしょうか?」
…何故かここ数日、殿下が私にこうやって昼食の誘いをしてくる。毎日、断っても飽きずに繰り返し誘ってくる。
「俺はヴィオレットを誘っているのだが」
「それよりも、名前を呼び捨てにされるのは止めていただけませんか?婚約者でもないですし…」
少し気になっていたことを口にしてみる。しかし、殿下は僅かに首を傾けて不思議そうに言った。
「一応、婚約者みたいなものだろう?それと、どう呼ぶかは俺の自由だ。…何か問題があるか?」
「いえ、そういうわけでは…」
「だったら良いだろう」
当然のような顔で言われてしまい、返答に困ってしまう。
(そんなこと言われても、心臓に悪いのですが…!?)
正直言って、目の前での名前呼びはしんどい。破壊力がすごいのだ。
「明日こそは絶対、一緒に食べるからな、ヴィオレット」
殿下はそう言うと、フッと微笑んで去っていった。
(何なの、あの笑顔…!?)
殿下は自分とは結ばれることのない運命。そんなことはわかっていたはずなのに。
……どうしても、ときめいてしまう私がいた。
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