ヒロイン リーリア・ジェイド
私は仮婚約について考えて考えて───、結局考えることを放棄した。
正直、考えても意味がない気もした。
それに、今日はついに『ライラックの絆』のプロローグの日なのだ。
(やっとリーリアちゃんに会えるのね!)
朝起きた時からずっとワクワクしていた。今日ぐらい、他のことは忘れたいのだ。
私は逸る気持ちを抑えながら、時が来るのを待った。
◇◇◇
「り、リーリア・ジェイドです。よろしくお願いします…!」
(実際に目にするともっと可愛い!!ヴィオレットはちょっときつそうな美人だから、あんな感じに憧れるわ…)
サラサラのビスケット色の髪は艶やかで、不安に僅かに揺れる翡翠の瞳は輝きを失わない。桜色の小さな唇は微かに開いたまま。
ザ・ヒロインといった出立ちで、庇護欲を掻き立てられる、私とは正反対のタイプだった。
(あんなに可愛いんだもの、皆が夢中になるのも無理はないわ……殿下だって)
ずっと会いたかったリーリアちゃんを目の当たりにして嬉しいはずなのに、何処か寂しさを感じている私がいた。
そのことを不思議に感じながらも、まずはリーリアちゃんと話してみないと…と思い、いつの間にか始まっていた授業にとりあえず集中することにした。
◇◇◇
「えっと…、リーリア・ジェイドさん?」
「は、はい…!あの、何かご用でしょうか…!?」
さすがに初対面でちゃん付けで呼ぶ訳には…と思い、さん付けにしたのだが…、どうやら怖がられてしまったかもしれない。
普通にしていても少し吊り上がった目のせいか、怯えられている。
そもそも転入初日で不安なところに、こんな風に声を掛けられたら、目をつけられたと考えられてもおかしくない。
(ちょっと失敗したかしら…?)
心配になりながらも、少しでも印象を良くしようと、できる限り優しく微笑んでみる。
「私、ヴィオレット・イキシアといいます。よろしくお願いしますね?」
「はいっ…!こ、こちらこそよろしくお願いします…!」
……やっぱり怖がられている。
それでも、優しく(当社比)微笑み続けると、リーリアちゃんもぎこちなく笑い返してくれた。
(ぎこちなくても、こんなに可愛いなんて…。さすがヒロインといったとこかしら。恐るべし…)
そう感じながらも、やはり心からの笑顔を見たいと思ってしまう私だった。
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