婚約解消は難しい
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「───おい、ヴィオレット」
「…殿下?」
私が殿下に婚約解消を申し出てから数日後。私は殿下に声を掛けられていた。
ここ二日、彼は早退していたので、話すのはあの時ぶりだった。
(陛下に婚約解消の話をすると言っていたから…その報告かしら?)
ヴィオレットとしての記憶にある限り、毎日のように話しかけていたみたいだから、数日でも話さなかったのはとても珍しかった。
「どうなさいましたか、殿下」
「婚約解消の件についてだが…。婚約を解消することは父上も了承してくださった」
「…そんな簡単に解消できますのね」
「父上が言うには、面白いから良い、らしい」
さすがにこんなに上手くいくとは思わず、かなり驚いた。
(でも、面白いからって…この国、大丈夫かしら)
つい心配になってしまった。
しかし、そんな陛下の言葉のおかげで婚約解消できたのだから、感謝しなくては。
そう思い直した私の思考は、殿下の付け加えた言葉のせいで停止してしまった。
「婚約は一応解消ということになったが…、今は“仮”婚約という形になっている。覚えておいてくれ」
「……“仮”、婚約?」
聞き慣れない言葉に戸惑いを覚え、繰り返す。
「あの、仮婚約、とは…?」
「そのままの意味だが?」
聞き間違いではなかったようだ。
そのままの意味とは、仮の婚約ということで良いのだろうか。
「…つまりそれは、実質的には婚約解消していないことになるのでしょうか」
「そういう見方もできるな」
(結局、何の意味もなかったの…!?)
驚きと落胆で頭を抱えて叫び出したくなった。実際、人目の無い場所だったらそうしていた。
とりあえず、もう一度これからについて考えた方が良い。
そう考えた私はこの場を離れることに決めた。
「あの、それじゃあ私、失礼しますね」
「は?おい、ちょっと待て……」
殿下が何か言いかけていた気もするが、気付かないふりで立ち去ることにした。
今は頭を整理するのが先決だ。
(本当にどうしたらいいのかしら…?)
───婚約解消をするのは、難しいようだった。
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