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興味

今回はアレス視点です。

 ───俺の婚約者は、何があったのだろうか。


 医務室でヴィオレットと別れた後、俺は今日の彼女の様子を思い返していた。


 朝一番に会ったときは、いつも通りだった。いつものように寮の門前で俺を待ち伏せ、登校中も纏わりついてきた。


 …おかしくなったのは、おそらく教室で彼女が倒れた後だろう。


「殿下の関心を引こうとしているのでは?」

「どうせわざと倒れたんだろ」


 そう囁かれていたが、あれは違う。俺も最初はわざとだと思った。しかし、ヴィオレットの額には脂汗が滲んでいた。


「こん、やくは、き……」


 苦しげに彼女が呟いた一言に困惑する。


 漢字を当てはめれば、婚約破棄、だろうか。言葉の意味はわかる。だが、何故ヴィオレットがそんなことを言ったのかがわからなかった。


 (俺に婚約破棄されるとでも思ったのか?)


 意識のない時に口に出す言葉は、心の底で強く思っていることが多いと聞いたことがある。

 実は心の中で不安に思っていたのだろうか。


 ◇◇◇


「───殿下、私と婚約解消していただけませんか!?」

「…は?」


 …まさかそんなことを言われるとは思わなかった。


 しかも、つらつらと明らかに嘘だとわかる言葉を並べてくる。


 いつも自信に満ち溢れていたスミレ色の瞳は、何処か不安気に揺れていた。


 尋ねたいことは山ほどあった。しかし、きっと何を言っても無駄だ。

 俺はヴィオレットの申し出を一応了承することにした。


 そうした方が良い、と理由もなく思った。…何故かはわからないが。


 (…だが、このまま婚約解消するのは惜しい気もするな)


 気付けばそんなことを考えていて、ふと足を止めた。


 (───俺は、何を考えているんだ?)


 これではまるで、俺が婚約解消したくないみたいではないか。


 別にそういうわけではない。

 ただ、ヴィオレットの様子がいきなり変わったのが気になっているだけだ。


 あんなに鬱陶しく思っていたはずなのに。興味をそそられている自分がいた。


 (…さて、どうするか)


 俺は再び歩き出しながら、口元が微かに緩むのを感じていた。

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これからもお付き合いいただけると嬉しいです!

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