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少年イサラ  作者: 森島小夜
7/13

 「なぜ()()()いる」イサラが言った。

サルマンは近くにやって来たミンガムに、目で合図を送った。

「ぼくが、この場所を、オアシスを見つけたからだ」ミンガムが言った。

「この泉は......砂漠の民のものだ」

「あおれは分かっている。だが、この場所は(砂漠は)君達だけのものではない」

「そうだ......だがこの泉無しでは、砂漠の民は生きられない......お前達とは違う」

イサラとミンガムは、数秒の間見つめあった。


 「私から話そう」ザイラスが言った。

「お前は誰だ?ぼくを捕まえにきたのか」イサラは怯えた目をして、ザイラスを見た。

「私の名はザイラスだ。そして、ここにいるのは私の部下達だが、決して君を捕まえに来た訳ではない」

ザイラスは穏やかな声で言った。だが、イサラは身構えながら、一歩後ずさった。

「君はイサラだな......我々は君と話がしたい。話が済んだら、すぐにもこの場所から離れよう」

イサラは疑いの目を、我々三人に向けてきた。その瞬間(とき)、ミンガムがイサラの目を捕えた。

「イサラ......ぼくの名前はミンガムだ」

「............」

「ぼくは、君と話がしたい。砂漠の民と呼ばれる君と、話がしてみたいんだ」

ミンガムがそう言うと、イサラは驚いた顔で、ミンガムを見た。

「この場所に、オアシスが現れたことが分かれば、()()()は必ず()()()やって来るはずだ。イサラ......君も、そう思っているんだろう」

イサラはミンガムから目を離すと、怯えた目でザイラスとサルマンを見た。


 「なぜラシアのことを知っている?お前達は......母さんが言っていた卵に(XXに)支配されているのか?」

「それを訊いてどうする?」ザイラスが落ち着いた声で言った。

「お前達が寄生されているなら......殺す」

「どうやって、我々を殺すつもりだ?」

サルマンがからかう様に言った。

「素手でやられる程、私の体はやわじゃないぞ」ザイラスが身構えた。


 「イサラぼくは、XX()を殺す銃を持っている」

驚いた顔で、イサラがミンガムの方を振り向いた。

「この銃は、XX()に寄生された人間を見分けることが出来る。この銃を今から君に渡す......ぼくの中にXX()を見つけたら、この銃でぼくを撃てばいい」

ミンガムがイサラに近づき、銃を渡すとイサラは素早い速さで、ミンガムの顔に銃を突きつけた。

「撃つな......!」

サルマンが銃を取り出し、イサラに向けた。

「待て......ミンガムに任せよう......」ザイラスが言った。

サルマンがゆっくりと銃を下ろした。


イサラはミンガムの頭に着き付けた銃を少しずつずらしながら、体内に(XX)が潜んでいないか捜し始めた。ミンガムの中に、(XX)がいないことが分かると、イサラは心底「ほっ」とした顔をした。イサラの張りつめた顔が穏やかになり、イサラは静かな足取りでザイラスの前にやって来た。

「ぼくになんの用だ」イサラが言った。

「我々は未知なる生物(XX)のことを、もっと知りたいのだよ。この砂漠で唯一生き残った君なら、何か重要な()()を、知っているのではと、私は思っているんだが」

ザイラスは口元に微かな笑みを浮かべていた。

「我々に、協力して欲しい」

「............」

「その代償として、我々も、君の望みを叶えよう」

「......分かった。お前達に協力する。そしてぼくは......あいつ(イサラ)からラシアを取り戻す」

イサラだって......?

イサラが、もう一人いるのか?

ミンガムは、イサラの痩せた手足を見つめながら、首を傾げた。

「ぼくは......必ずラシアを救い出す......その為なら何だってする......」

「そうかよく解った。我々もラシアを救い出す為、君に協力しよう」

ザイラスは笑みを浮かべながら言った。

「約束するよイサラ。必ず君の期待に応えよう」とサルマンが言った。

ラシアを救い出す......イサラから?

一体どういうことなんだ?

イサラは一体、何を言っているんだ......?

ミンガムは不思議そうに眉をひそめた。


 ザイラスの前を通り過ぎたイサラは、ミンガムの前で立ち止まった。

「ぼくは、あの二人じゃなく、お前と話をする」

イサラはミンガムに、笑顔を向けた。

ザイラスとサルマンは、泉を離れて停めてある(ジープ)に、向かって歩き出した。

「どうして......あんな無茶なことを?万が一にも感染していたら......ミンガムにもしものことがあったらとは考えなかったのですか?」

あれ(ミンガム)の、私を見る時の目は、何も変わってはいない......」

「それだけのことで......」

「今でも、私を憎んでいる目だ。母親を死に追いやった私を、決して許すことはないと......あの目は言っている......」

「やれやれですね。訳ありなのは認めますがそろそろご自身で、面倒をみたらどうなんですか。私に押し付けないで」

「ミンガムのことは、君に任せたはずだが」

「それなら、断ったはずですが」

「あれは、私を嫌っているからな......君にしか任せられんのだよ」

ザイラスは笑いながら言った。



 イサラとミンガムは、泉の直ぐ側に並んで腰をおろした。

緑の葉が、微かに揺れて、生温かい風が二人の頬をなでる様に通り過ぎた。ゆったりとした時間が、二人の間を通り過ぎていった。

「ここは素晴らしい所だな」

ミンガムが、ため息交じりに言った。イサラは、真っすぐ前を見つめたまま、こくんと頷いた。

「ぼく達は、母さんとラシアと三人で......この泉の近くで暮らしていた......あの日......」

イサラは言葉を詰まらせた。

「あの日母さんが、突然妙なことを言いだした。それから、あの恐ろしい何かがぼく達の所にやって来て............

テントは砂嵐の中で空へと舞い上がり、そして母さんを恐ろしい何かが取り囲んでいるのが見えた──それは......母さんの口の中へ吸い込まれて消えた。その何かを、母さんは〝卵〟だと言っていた。ラシアの体内に入り込んだ卵がラシアを支配して......母さんの体に入り込んだ全ての卵を外へと吐き出させた。その時、ラシアは奇妙な歌を口にしていたけど、よく思い出せない......その後、ぼくは残っていた卵に寄生されて、気を失った。

「気付くと、ぼくの側にもう一人のぼくが......()()()がいた......」」




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