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「じしん」の刃は砕け散ったようですよ?

~side リン~


「GGuuooOOoOOO!!!!」


ゴブリンロードが雄たけびを上げながら腕を振り下ろす。

その際の衝撃で地が揺れ、洞穴が崩れたかのように錯覚する。

いや、実際どこかは崩れただろうが、この大部屋は頑丈にできているようで崩れていない。


しかし、そのいわゆる威嚇と呼ばれる行為だけで、大した修羅場もくぐっていない私は挑んだことを後悔し、逃げ出したい衝動に駆られる。


自分たちを守ってくれていたシン様は既にゴブリンロードの目の前に立っており、その大盾で圧倒的体格から繰り出される暴力の権化のような攻撃を受け止めていた。


「おーい、早く攻撃してくれ!!」


シン様はどこか気の抜けるような声で私たちに攻撃を催促しているが、恐怖に塗りつぶされた自信は発揮されない。

足は拘束されてもいないのに動かず、声は言葉を忘れてしまったかのように舌が回らない。


それは、エチカやエリンも同じようで二人とも固まったまま何もできずにいた。


私たちが固まっている間にも、ゴブリンロードの攻撃は続き、衝撃による暴風は収まることはなかった。

そんな私たちに気づいたのか、シン様は一瞬焦ったような顔をした。


……これは失望されてしまったでしょうか。

自分で倒すとか言っといて、対面したら動くことすらできないとか…


「信用できないのはわかるが、安心しろ!絶対に守ってやる!それが俺の役目だからな」


「っ!」


その言葉を機に全員が動き出す。

これで動き出せないなら、そんなのは冒険者ではない。

尊敬する人に絶対に守るといわれているんだ、攻撃に集中するだけでいい!

私はシン様が攻撃を受け止めた隙にゴブリンロードの腿を切り裂こうと横薙ぎに剣を振り回し、エチカはその素早い身のこなしを生かしゴブリンロードの全身の皮膚を切りつける。


「嘘っ!」


「皮膚が硬すぎです!こんなの切れませんよ!?」


私のはなった剣戟はゴブリンロードの腿を切り裂くことなく、切りつけた点で止まり、エチカの短剣で切ったはずの皮膚に切れた様子はない。


「空より来たる雷の精よ、わが魔力を糧に敵を貫け!『ライトニング』!」


薄暗い洞窟がまばゆい光に照らされ、けたたましい音が鳴り響く。


その音が鳴りやむより先に再び衝撃波の暴風が始まる。

ゴブリンロードの皮膚は焦げているものの、攻撃の手はさらに激しくなっている。


「効いてないの!?」


「いや、ナイスだエリン。今なら肉が柔らかくなっているはずだ!リン、エチカ、関節を狙え!」


私は右足の健を切り、エチカは膝の裏を切り裂く。

先ほどと異なり、刃が通りゴブリンロードは膝をつく。


「いける!」


私は首を裂き、とどめを刺すためにゴブリンロードに走り寄る。


「おいっ!先走るな!」


「え」


隙だらけだと思われたゴブリンロードの腕が振り下ろされる。

走り出した私とその腕の間には何も遮るものはない。

私は、無理やり剣を切り上げ腕を受け止めようとする。


しかし、切りあげた剣は砕け散り、私は死を覚悟した。

私は恐怖のあまり目を閉じ、その瞬間を待った。


目の前で音がはじけた。


「……い、生き…てる?」


私は恐る恐る目を開けた。

目に映るのは腕を振り下ろした姿のまま止まるゴブリンロードの姿だった。


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