予想外の事態のようですよ?
ゴブリンの巣へ移動している途中に使う武器や役割を聞いた。
リンはスタンダードな剣士でこれまでは回避盾のように基本相手を引き付けながら戦っていたらしいが、本来は、アタッカーらしい。
エチカは、猫耳からわかるように獣人で基本的なスペックは人族より高い。
耳や鼻、目も並みの人よりは良いため、スカウトだ。
武器は短剣や投げナイフなど、その身軽な身のこなしを生かして戦うようだ。
エリンは、魔法使いらしいが……いまだにフードを深くかぶっている。
リンによると、人見知りらしいが…まぁ、まだ信用されてないだけだろう。
これからクエストを一緒にやっていくうちに打ち解けてもらえるように頑張ろう。
そんな感じに打ち合わせをしているうちに、ゴブリンの巣に到着した。
「これは…まずいかもしれないな」
そこにはゴブリンの見張りがいたのだ。
ホブゴブリンがリーダーの群れなら真面目に見張りをしているゴブリンなんかいない。
そこまでの統率力を保てるなら最低でキング級の存在が考えられる。それなのに村への襲撃の規模は大したことがなかった。これは群れの規模を意図的に小さく見せようとしていると考えられる。
単純に急速にホブゴブリンが進化してキングになっただけならまだいいが、人間相応の知能を持ったボスがいるとなると、ゴブリンの巣の討伐難易度は一気に跳ね上がる。
「…引き返してギルドに報告しよう。今回のこれは危険すぎる」
「なにがですか?」
「……これ、中にいるゴブリン多すぎじゃないですか…?」
リンはわかっていない様子だが、エチカは中の異常さに気づいたらしい。
「これは最低でもゴブリンキングはいそうですね」
「最低でもキングって…」
リンはエリンの発言に顔が真っ青になっていく。
「そうだな、君たちが挑むにはまだ早すぎる、引き返すぞ」
「……待ってください!今引き返したら他のパーティがくるまでにどれくらいかかりますか?」
「最悪のパターンまで考えてAランクパーティ以上を呼ぶことになるでしょうから、早くても3日後くらいですね」
この場合の最悪とは、ゴブリンキングのさらに上位種、ゴブリンロードがいる場合だ。
ゴブリンロードはゴブリン種の最上位種といわれ、3mを超える体躯と硬い皮膚、高い生命力を持ち、それに加え、高い統率力を持つ。
巣の中にいる限り、Aランクでも討伐が危ぶまれる存在だ。
「……シン様、なんとか討伐できないでしょうか。3日も待ってたら周りの村が…」
リンとエチカの目がやる気に満ちている。
エリンはあきれた様子だが、二人についていく気のようだ。
「……わかったよ。本当は止めなきゃいけないんだけどな」
俺は二人の純粋な熱意に負け、ゴブリンの巣に突入することに決めた