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新居です





車でだいたい15分程度で新居に着く。


だから、車内でいろいろお話をしようかと思っていた。だけど、それどころではありませんでした。

なぜなら…



「物珍しいものあったりする?」


車外の景色を見るのに忙しいからです。


武田さんの問いに、首を振って答える。

私の住んでいた世界とあまり変わりがない。

もちろんお店の名前だとかは違っていたりするけど、コンビニみたいなものはあるし、銀行とかスーパーとか飲食店とか、私のいた世界とあまり違いが見られない。

言語の一致に関してもそうだけど、この世界って、私のいた世界の日本となんでこれほど似ているんだろうか…。

私の世界から女の人を連れて来ていると言っていたけど、これはもしかして私の世界の日本人だけしか連れて来ていないかもしれない…。

外国人だと、言語不一致で相当苦労するし、記憶もないなら赤子も同然だ。結婚とか卵子提供とかそれどころの話ではない。

まぁ、神なる者が、言語に関して補助してくれるなら別だけど…

神なる者がどこまで何をできるのか分からないから、ただの妄想になってしまうけど。

また今度、機会があれば聞いてみようか…。いや、日本人だとか言って聞いてもわからないし、この件はもう頭の中にしまっておいてもいいかな…。


「えり、何か気になることでもありましたか?」


私が外の景色にずっと集中していたからか、横に座っていた向井さんが心配そうに話しかけて来た。


「いえ、あまり私の世界の景色と変わらないな、と思って…」


「そうですか。それなら、すぐにこの世界に馴染めるかもしれませんね。」


すごく嬉しそうに笑ってくれました。

この向井さん、私の言動にいちいち嬉しそうに反応する。

この世界で出会った男の人たちは、今のところみんな優しいし、私の言動に一喜一憂するところがあって反対にこちらが戸惑うのだけど、向井さんは群を抜いているかもしれない。



「到着したようです。」


田中さんのその言葉と共に、車がマンションの地下駐車場へ入っていく。


地下に入っていく前にちらりとマンションの全体が見えたのだが、やはり15部屋くらいありそうに・・・でかい。


「お部屋は8階になります。先ほども説明させていただいた通り、8階全てが皆様の住居になりますので。」


部屋割りは早急に決めてしまわないといけないよね。ああ、そういえば着替えとか早く買わないといけない。今日はもうどうしようもないだろうから、明日からの分だ。給料を前借りできないかな・・・。


田中さんにこっそり聞いてみようか。

ちらりと田中さんに視線を向けると、田中さんはタブレット?を操作していた。

今は話しかけないほうが良いかな・・・

今は諦めて、車から降りてからにしようかと、思案していたら、田中さんがふいにこちらを見た。


「高野さん、何か質問があれば、気兼ねなく言って下さいね。」


田中さん、察してくれたのか・・・!


「あ、あの・・・」


着替えの話だし、給料前借りの話だから、ちょっと周囲に聞かれるのは恥ずかしくて、こっそり小声で聞いてみる。

すると、田中さんは心得た、というように笑顔で対応してくれた。


「1週間分の服は、もう部屋に用意しております。給料は毎月月末にお渡ししますが、慰謝料として別に、今日お金をお渡しする予定なので、それで当面の生活必需品を購入してください。」


準備が早いな・・・!!

それに、至れり尽くせりだ!


まあ、この世界にいきなり連れてこられたのだから、慰謝料は分かるけれど、それでも率先していろいろと世話を焼いてくれるのはありがたい。


「ありがとうございます、田中さん。」


「気にしないでください。せめてもの罪滅ぼしです。それに、全ての女性が平等に受けられる権利なので、遠慮もなさらないでくださいね。」


おおう、私が遠慮する可能性を考慮して言ってくれているのかな、なおさらありがたい。

そう言われたら、至れり尽くせりなこの状況に対する戸惑いが少しは薄れる。



そうしている間に、車は駐車場に停まる。

運転手が、到着したことを田中さんに伝え、車のドアを開けた。レディファーストなのか、向井さんに先に下りるように促されて、後が詰まっているしとさっさと降りる。


駐車上から降りて、すぐのところにエントランスホールへ向かう部屋があり、そこに上へ登るためのエレベータがあった。


「ここから上に上がります。」


エレベータはこのマンションに一つらしい。

それじゃあ、たまたまエレベータで別の階の人と鉢合わせることってあるんじゃない?


「生憎、このマンションには現在、皆様以外は住んでいませんので、出勤時にエレベータが混み合うことはないと思います。」


え!それじゃあ、偶然女の人と会うことってないの!?

この世界の女の人と会って話してみたかったんだけどなあ・・・。


「やったー使い放題だねー」


そうやってにこにこ私の方を見てるけど、私マンションから出られないんだよね?何も良いことないんだけど・・・。


「それでは、案内させていただきますね。」


田中さんがエレベータに乗り込んだので、私もそれに続く。

運転手の人は、エレベータの前で頭を下げたので、ここまでの案内なのだろう。


「ありがとうございました。」


ここまで車を運転してきてくれたのだ。礼を言うのが礼儀だろう。

運転手の人は笑顔を返してくれた。







8階に着いてエレベータから降りると、目の前にドアがあった。


なんか豪華そうなドアだ。


あれ、でも変だ。


マンションなのに、入り口が一つしかない。



・・・・・・まさかとは思うけど、これ、見た目はマンションだけど、少なくともこの8階は、この階だけで一つの住まいなんじゃ・・・


「基本的に、このマンションに他人は入ってこれないようになっていますが、この部屋のカギを持っている者がいれば、警報が鳴りませんので、外出時はカギをきちんとお持ちになってくださいね。」


私以外の三人に、田中さんは説明する。


セキュリティ対策とかしているのかな、と不安になったけれど、なるほど、知らない間に、私たちはクリアしていたらしい。田中さんがカギを持っていたからズカズカとマンションに入っても、警報が鳴らないんだね。

結構防犯対策されているんだなあ・・・私の世界にこんな対策あったっけ・・・


「どうぞ、部屋にお入り下さい。」


「はい。」


またレディファースト。私を先に部屋へ入れ、その後に田中さん、向井さん、と続いて入る。


入ってみて分かった。




ここは金持ちの住まいか・・・!?






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