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夫達と対面しました





案内された部屋は、さっきまでいた部屋から一階まで下りたところだった。


エレベータに乗るときに見たけれど、この建物は20階建てみたいだ。そして、私が目覚めた部屋は19階。

この建物は何の建物かよく分からないけれど、細かく聞いていると質問が尽きないのでまたの機会にしよう。


「こちらでございます。」


田中さんは、部屋の前まで来ると、ドアをノックする。

すると、中から返事が聞こえてきたので、そのまま入っていった。

その表情は少し生き生きとしているのだけど、もう少しゆっくりドアを開けて欲しい。緊張しているのに、あれよあれよという間に夫と対面になってしまったではないか。

対面が長引くよりもさっさと会って安心した方が良いってことか?


「どうぞ、お入り下さい。」


ドアを開けて田中さんが私を促す。


仕方ない、なるようになれ!




「失礼します。」


第一印象は大切に。不仲にならない程度に関係性を保てれば良いのだから、あまりいろいろ考えないでいこう。

軽く頭を下げて部屋に入ったら、






目の前に三人の整った顔をした男性が立っていました。




待て待て待て、顔の偏差値が高いよ…!!



「はじめまして。向井智(むかいさとし)と申します。」

石川俊介(いしかわしゅんた)だ。」

武田真人(たけだまこと)です。」


初めに挨拶してくれた人は、茶髪で同じ歳くらいの男の人。うん、かっこいい部類だ。男の人を見てかっこいいとかあまり思わない方だけど、これは整っている。身長も私より断然高い。


次に挨拶してくれた人は、私より年上かな…、大人の余裕を感じさせるような風貌で…髪色は少し紺色に見える。こちらもイケメンでした。身長は一番高いです。190センチくらいあるんじゃないかな。


最後に挨拶してくれた人は、少し年下みたいで、まだ純粋そうに見える。これから社会人なりたてって感じの雰囲気というか、あどけない。それでも身長は向井さんと同じくらいで、完全に男の子です。こちらはかっこいいしかわいさもある。


って、何の観察をしているんだろう。


「高野えりです。」


とりあえずは自己紹介をする。この三人が私の夫と決まったわけではないから、よろしくお願いします、は言わない。うん…例え夫であっても、よろしくお願いしますと私から言うのは癪だ。


「こちらの三人が、貴女様の夫となる者たちです。」


やはりか…!!


田中さんは、「ふむ、最善の者たちを選びましたね…」と誇らしげに呟く。

確かに顔面偏差値は高いけれども…!

私が重視するのは内面だからね…!!

さっきの最低条件をクリアしてないと、私の心の平穏はないわけだから!


「高野えりさん、というのですね。素敵な名前です。えりさん、とお呼びしても良いでしょうか?」


ちょっとちょっと!初対面でぐいぐい来るんだけど…!

向井さんはとても嬉しそうにそう尋ねてきた。

良いも悪いも、夫婦になるのなら名字呼びはおかしいから名前呼びになると思いますが!


あれ、そういえば、この世界って結婚したら名字はどうなるんだろう。

男の人が三人いるんですけど…どれかに統一するのかね。


なるほど、分からないことがたくさんある。

そのための結婚でもあるし…また後でこの三人に聞いてみよう。


「えりさん、って呼んじゃだめですか?」


私がなかなか返事をしないから、武田さんが不安そうにそう聞いてきた。

申し訳ない、思考がトリップしていました。


「どうぞ、好きに呼んで下さい。」


なんでもいいや。これから長い付き合いになるんだし。

呼びやすいように呼んでくれたらそれでいい。


「ほう…じゃあ俺はえり、って呼ぶわ。」


「え!俊太さんずるい!俺もえりって呼びたい!」


「でも、いきなり名前の呼び捨ては馴れ慣れしいと思うのですが…」


いや、向井さん。呼び捨ては確かに馴れ慣れしいけども、いきなり下の名前にさん付けの許可を取ろうとしたあなたも、私からすれば十分馴れ慣れしいです。


「えり、呼び捨ては嫌か?」


石川さんが、私に伺いを立てる。

それで嫌なんて言えるわけないでしょう。

頭に血が上っているのならまだしも、初対面で良好な関係を築こうとしているところで、断れるわけがない!


「嫌ではないです。」


ただし、友好的に話すかどうかは別である。

男の人は、仕事でない限りはなるべく関わらないようにしてきた。

だから、どう接して良いのかわからない。


書類や会議の話ならいくらでも会話できるのに…!


しかし、私の素っ気なさを見ても、三人とも眉をひそめたりしない。

「じゃあ、えり呼びで。」とさっさと決まっている。

私の反応をまったく気にしない。

うん、ありがたい。


「それでは、お話したいこともあると思いますが、もう日が沈む時刻ですので皆様の住む家に案内させて頂きます。」


え!もうそんな時間なの!?


私の心を読んだのか、田中さんはこっそりと私が起きた時間を教えてくれた。

お昼超えて起きてます…相当仕事の疲れが溜まっていたのだろうか…それとも、こちらの世界に来るときにたまたまお昼超えた時間帯に飛ばされて本当はそれほど寝ていないとか…?

まあ知りようがないので、どちらでも良いのだけど。




移動は車なのだけど、どう見てもリムジンである。


「おおよそ15分程度で到着します。」


リムジンには、私と田中さん、向井さん石川さん武田さんと運転手の六人が乗り込む。

他の人達は、外で見送りだ。


あ、その前に。


「あの、」


「え?」


さっき、部屋で話している時に、ドアの前からどいてと迫った男の人と、それ以外の部屋にいた人達に話しかけた。

驚いた表情をしているが、さっきのことは謝っておかなければいけない。


「部屋で、頭に血が上って失礼な態度をとってしまいました。先ほどはごめんなさい。」


ぺこりと頭をさげると、慌てて男の人たちは首を振る。


「そんな…!お怒りはもっともなことです。謝らないでください…!」


名前を知らないまま、お別れになってしまった。ここで名前を聞いても、私は家から出られないのでもう会うことは無いかもしれないから名前は聞かない。だからこそ、謝るのは今しかないのだ。

でも、このまま謝ってもこの人達は謝り返してきそうだし、そうなったらお互いが謝り続けそうだから、一度だけの謝罪にしておこう。そして、もう一つ伝えないといけないことがある。


「ケーキと紅茶、とても美味しかったです。」


ありがとうございました。と微笑むと、男の人たちは、嬉しそうに笑い、最後に頭を下げて見送ってくれた。


その間、田中さん含めて車内のみんなは黙って待っていてくれた。

車が発車して、そのことに礼を述べると、みんな気にしないで良いよ、と柔らかく笑ってくれる。


今日から私はこの夫たちの嫁になる。

どうなるか分からないし、分からないことだらけではあるけれど、

どうか、私の人生が平穏でありますように。





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