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思い違いと理解

大変お待たせいたしました・・・!




「おはよ~・・・。あ、あれ、もしかして、俺が最後・・・!?」


ちょっぴり寝癖がついて、大きめのあくびをしながら武田さんがリビングに入ってきた。


私たちの顔を視界に入れるまでは、ちょっぴり気の抜けた顔をしていたけど、三人の顔、というより私の顔を見てから、眠たそうな顔がシャキッとした。


・・・うん。もういつもの顔だけど、さっきの気の抜けた顔は年相応な感じがして、ちょっと可愛かった。



「お、俺、顔洗ってくる!!」


さっとリビングを通り過ぎて、洗面所に行った。ああ、そういえば、石川さんも顔を洗ってないんじゃないかな?


「あぁ、俺も顔を洗ってくるか・・・。」


本人も気がついたようで、武田さんの後を追いかけていった。


そこで、私は向井さんに対して、さっきの石川さんと向井さんのやりとりに関して、質問してみようとした。


「あの、向井さ」「あ!えり!向井さん!」


私の声を、向井さんではない誰かが遮った。

誰だろう、とそちらに顔を向けると、前髪をゴムで上にまとめた武田さんが、慌てたように私を呼び止めていた。


「起きるの遅くなってごめんね!ご飯ありがとう!!」


言い逃げとはこのことで、言うだけ言ったら、用は済んだとばかりに洗面所へ行ってしまった。

顔を洗おうとして、邪魔な前髪をゴムでまとめていたんだろう。その姿は、さっきのあくびをしていた顔よりも幼く見える。んだけど・・・。


「えり、先ほど何か言いかけていませんでしたか?」



なんだ。私の思い込みだったのか。


石川さんや向井さんが“当たり前”って認識するだけで、それがこの世界での常識とは限らないよね。

現に、武田さんはあっさりと、私と向井さんにお礼を言っていたわけだし。


何かをしてくれた時に、お礼を言うのが普通だよね。世の中で、して当たり前なんて認識が、男尊女卑や、また反対の場合にあるべきではないんだ。でも、それがそれぞれ個人の認識なんだとしたら、それはその人の考え方の否定になってしまうし、十人十色と言うくらいだから、これから先ゆっくりと「私はその感覚が好きでは無い」と言えば良いだけだ。

私と、彼らの常識が違うならば、今後(ここ最近のように)揉めないよう、早急に話し合う必要があると思うけど、

個人の考え方の違い程度なら、少しずつ理解して、理解してもらえれば良い。



うん。

なんか、過敏になってたのかもしれない・・・。


「えり?」



「向井さん、卵とウインナーを焼いちゃいましょうか。」



何はともあれ、今日は武田さんに助けられた。起きて早々に、妙な揉め事が起きなかったし。

それにどうやら、私は常識の違いに過敏になっていたみたい。


武田さんに助けられたな。


感謝の気持ちを込めて、武田さんのウインナーはしっかり焼かせてもらおう。






「あ!そうそう、俺、ウインナー好物なんだよね!」


ご飯を食べていると、思い出したように武田さんがそう言った。

武田さん…ウインナーが好きそうな性格だとは思ってたけど、まさか本当に好物だったなんて…


でも、結果オーライだよ。

図らずも、彼の好きなものを知れて、提供できたわけだし。



武田さんは、ウインナーが好き。

覚えておこう。







ご飯を食べ終えて、石川さんと武田さんが食器を洗ってくれてる間に、私と向井さんはテレビを見ることにした。

食後の休憩だ。


昨日は動物の番組だったけど、お昼の今の時間は、ニュースが多いようだった。


「えりが楽しめそうな番組が無いですね…」


番組表とにらめっこする向井さん。何をそんなに悩んでいるんだろうと思ったところで、気がついた。

もしかして、向井さん…動物の番組を探しているのでは…。


もしそうなら、私が動物好きとして、さっそく彼の記憶の中にインプットされている気がしてならない。

誤解なんだってば!

やっぱり昨日のアレでは説得出来なかったか・・・!


動物番組は嫌いじゃないけどさー。そんなあからさまに可愛い物好きの女子を演出してるように思われるのが本当、戸惑う。そういうのは可愛くてか弱い女の子なら似合うけど、私がそんなの好きなんて似合わないんだってば。


やっぱり早々にこの世界のことをたくさん知って、動物番組以外にも興味を示していかないといけないね。


なかなか実行に移せてないけどさ!でも仕方ない。この世界のお勉強は、頼んでくれるって言っていた教材が届いてからの話だし。

それまでは、この誤解を上手いこと解く方法を思いつかないので、この戸惑いや羞恥心は我慢するしかない。



「えり、ニュース番組ばかりになりますが・・・私が持っているDVDでも見ますか?」


「あ!それなら、ファンタジー系のDVD俺いっぱい持ってるよ!」


遠くの方から武田さんが声をかけてきた。

台所でお皿を洗っているのに、よく私たちの会話が聞こえたな。


二人の親切は有り難いけど、DVDはまた今度見れる。三人が仕事に行きだしたらこの家で独りになるわけだし、DVDはその時に見れるよね。ということで、


「いえ、DVDはまた次回に・・・。この世界のニュースを見てみたいです。」


「そうですか!分からないことがあれば、私に何でも聞いてくださいね!」


あれ。何かテンションが高いぞ?


「説明が親切なニュース番組にしますね!」


手慣れたように、向井さんはパッとチャンネルを変えた。

普段からよくニュースを見るのかな。真面目そうだし、ニュースをハシゴしてそうだなぁ。


昨日一応見たけど、まったく分からなかったニュース。それでも、三人が説明してくれたから、多少は知識が入ったと思いたい。昨日得た知識に関連したことがニュース番組で取り上げられていたら、有り難いな。

まあ、全く分からなくても、向井さんが何でも聞いてくれと言ってくれるし、今日もお言葉に甘えよう。





テレビって、娯楽のイメージが強かったし、実際前の世界ではその通りだったんだけど、この世界のニュースを見ている限りでは、学校で勉強しているような感覚になる。

向井さんが説明してくれる内容を耳で聞きながら、頭で必死に理解していると、気がつけば武田さんも石川さんもソファに座っていて、私の目の前には湯気が立った紅茶と、クッキーが入った籠まで置かれていた。

必死に覚えようと集中したからか、まったく気がつかなかった。

誰だ、置いてくれたの。武田さん?石川さん?それとも両方が用意してくれた?

ええい、考えるのは疲れた。両方にお礼を言ってしまえ。


「ありがとうございました。」


双方にお礼を言うと、石川さんは、砂糖とミルクはいるか?とさらに世話を焼いてくれる。

うん、武田さんも、クッキーの籠を私の方に寄せてこなくて良いから。


「えり、疲れただろう?ニュースも終わったし、休憩しよう。」


「すみません。私も、えりに教えるのに熱中してしまって・・・途中で止めれば良かったですね。」


「疲れた顔してるよ。えり、ちょっと寝る?」


三人がそれぞれ私を気遣ってくる。

共通しているのは、私が疲れていることを気にした、ということだ。

確かに疲れたけど、そんなに疲れた顔をしてる?

私疲れた顔とか、出るタイプだったかな・・・。この三人はよく表情を見ているから、それで気付かれたのかも。

それにしても、さっき起きてきたばっかりなのに、疲れたなら寝る?って発想はどういうことよ・・・。

もしかして病弱に見えてたりするの?体力がある方ではないけど、標準くらいはあるよ私。


「大丈夫です。確かに頭を使ったから疲れはしましたけど、普通のことですよ。気にすることでもありません。むしろ、もっとこの世界のことを知りたいので、また教えて下さいね。」


ここ数日の経験で分かる。

私が疲れたら、この三人、私を疲れさせないように工夫しようとしてくるはず。

気にしないでねーという言葉だけだったら、「えりは遠慮している」「えりは優しいから」とかよく分からない理解をしそうだ。

もっと知りたい。

だからまた教えて欲しい。

この台詞を入れて、私がニュースを見て疲れることも、望んでしていると思わせた方が良い。

うん、たった数日の付き合いだけど、この推測は間違ってないはずだ。


目の前の三人は、私が予想した通り、「えりがそう言うのなら・・・。でも、辛くなったら言って下さいね!」と、納得した様子だ。


彼らが私のことを観察して顔色をうかがっているのと同じように、私だって彼らのことを観察しているし、表情も見ている。

こうやって、お互いに理解し合っていければ良い。


でも・・・。




こういう方向で言葉を考えないといけないなんて、他人が私のことをとても気にかけてくれてるって、自意識過剰になってしまいそうだ。




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