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夫婦とは(こちらの世界の常識)中

大変お待たせいたしました・・・!!





「取り敢えず、えりの世界との常識の違いを認識できてよかった。俺たちの世界と、恋愛と結婚の順番が逆だってことを知れたから、説明しやすいわ。」


私が向井さんと武田さんの攻撃(えりのお世話をするのが幸せアピール)を躱しているところに、石川さんがそう言って二人の口を止めた。

「えり、そういうことだから、この世界の夫婦は、例え結婚していても朝や夜にお互いの部屋に入ることはあまりないんだ。病気になっていたり、やむを得ない理由がある場合を除いてな。」


「でも、これは男じゃなくて、女性のための制度なんだよ。」


私の納得していない表情を見た武田さんが、先ほどのテンションから一転、穏やかにそう言った。


女性のための制度?

女性にメリットがあるってことだよね・・・。

日常生活を送る上で、相手の部屋に入るのを遠慮した方が良いなんて、いちいち面倒くさいと思うことしかないと思うんだけど。



「女性の出生率が極端に下がっちゃってから100年程度たったんだけど、それまでの過程でいろいろあったんだよ・・・。」

「俺たちが産まれていないころの話だが、だいたい今から70年くらい前にな。今みたいに、卵子と精子を提供させて、胎外で育てる方法が出来るまでの時代は、女性が妊娠して子どもを産まないと人口が増えなかった。」

「二人とも、この話は、今は・・・。」


向井さんが待ったをかける。

でもこれ、聞いておいた方が私は納得するんだけどなぁ・・・。


それに、なんだか嫌な予感がするんだよね。

二人は、この世界の負の歴史を語ろうとしてるんじゃない?


「向井さん、その話、聞いておきたいです。」

「ですが・・・。」


「この世界のことを勉強するってえりが言ってたんだ。それなら、近いうちに知ることになるだろ。今話が出たタイミングで話しておく方が、互いに誤解を生まないと思うぞ。」


石川さんがそう言うと、向井さんも、それ以上二人を止めなかった。

ただ、心配そうに私に視線を向けるだけ。

私がまた部屋に引きこもると思っているんだろうか。

あれは、確かに衝撃が強かったけど、それ以上に自分の自由が予想以上に制限されていて、何か私が勝手にしたことの責任を三人が負わないといけないという現実に対して、理不尽だとか不公平だとか様々な感情が一気に出てきたからであって、

この世界の昔の話を聞いたからと言って、引きこもったりしないよ。

・・・余程クレイジーな内容でなければ、だけど。



「今でこそ、女性にあまり負担をかけずに子供が産まれるようになったけど、昔はそうもいかなかったんだよ。」


お。こういう話は、石川さんがするものと思っていたけど、武田さんがしてくれる様子だ。


「女神なる者のお告げがあったから、表立っては女性に対して長期的な心身の苦痛を与えてはいけないって決まりがあったんだけど・・・。人口を確保しないといけなかったから国も必死だし、今まで一夫多妻制や一夫一妻制で育ってきた男の人たちも自分たちの世代で女性と関係を持てなくなったことに反発があって、女性の合意無しに身体の関係を迫ったり、国もそれを黙認したりした時期があったんだ。」


うわぁ・・・。

まあ、そりゃあそうだよね・・・。

男の人からしたら、自分の父母や祖父母は普通に男女比が同じなのに、自分たちの世代だけ、ろくに結婚もできないし、恋愛もなかなか出来ないってなると、不満は出るだろうな・・・。

だからって、女性の同意無しに関係を迫ることは良くないことだし、

それを黙認する国も、問題だと思うけど。


「もともとは、女性の出生率は今ほど低くなかったんだ。10人に1人の確率で産まれてくる程度の比率で、現状と比べると、それほど切羽詰まった状況じゃないんだけど・・・当時、いきなり女性があまり産まれなくなった時は、それはもう、大変な社会問題だったんだよ。男としては、恋愛も結婚もしづらい世の中になって女性への接し方も見直されたら不満に感じる人がたくさんいたし、国としても、人口が減る未来が分かって秩序が乱れる可能性を無視できないし、何より神なる者の存在を信じ切れないお偉いさん方がいる。その二つの勢力が手を組んでしまったんだ。」


「あー、えっと、そのあとの展開はなんとなく察しました・・・。」


武田さんが頷き、申し訳なさそうな表情をした。


「女性は誘拐されるし、既成事実を作らされたりするし、そこに愛情がある男もそうでない男もいて・・・。女性が外を歩けない世界になってしまったんだ。ストレスで死産になったり、出産の途中で命を落としたり・・・。男にとって不公平な世界になってしまったのは女性のせいだと言う輩もいて、そういう奴らに捕まった女性は・・・。

男として、本当に情けない。納得できないからって、女性の尊厳を踏みにじるなんてこと、許されるはずがないのに。」


三人を見ると、全員が苦しそうな表情をしていた。

うーん・・・。私がされたわけじゃないし、70年前の話だから今概要をさらっと聞いただけでは軽い想像しか出来ないけれど・・・。

その70年前にこの世界に飛ばされなくて良かった、と思う。

今で良かった。

今この世界に来て、彼らに気を遣ってもらって戸惑うことが大いにあるけど、70年前だとそんなことは言ってられなかっただろうな・・・。



「そういうことがあって、さらに女性の出生率が下がったんだ。そこでやっと皆の目が覚めて、女性が守られる社会を作ろうってなったんだよ。結婚制度もその一環で、誘拐されたり女性が酷い目にあわないように保護するかわりに、女性が不自由しないように一緒に住んで身の回りのお世話をする男を複数人用意する。一緒に住む権利を得られた男が女性に対して妙な真似をしないように、必要以上に触れない、プライベートを侵害しない、不快に思わないように部屋に入るのも控える、とか、いろんな教養を学校で学ぶ。その教養を学んで一定以上の成績を修めた者だけが、女性と結婚する権利を与えられるんだ。」


武田さんは、そこまで説明すると、少し誇らしげな表情をした。


彼が誇らしげな表情をする理由は分からないけど、でもここである仮説ができた。


これって・・・。



「夫っていうより、家政婦みたいだよね・・・。」




三人がピシリと固まったことは、気配で分かった。

でも、私は止まらない。だってなんかここでちゃんと聞いておかないと、いけない気がするのだ。

もしかして、私は初めから夫という存在が指すものを誤解していたのかもしれない。


「女性の身の回りの世話をするんでしょ?一緒に住んでるけど、必要以上に接触しないってことだよね。それって、夫と言うより・・・」

「ち、違います!!」


そこまできて、向井さんが必死の形相で遮った。

あまりの勢いに、思わず言葉を飲み込む。


「ただ人のお世話をする仕事ではありません!日頃、女性と関われるのは、夫と、女学校の教員のみなのです!!また、女性のことを知り、女性の心の支えとなり、一生を側で見守ることができるのは夫だけなのです!このような世界に産まれてきてくださった女性のお世話をし、それだけではなく、女性にとって大切だと思われる存在になる、それが叶うのが夫だけなのです。

そ、それに・・・あわよくば・・・」


おおおう・・・。

あわよくば・・・何だろう。あれかな、男女の関係ってやつかな・・・。



「あわよくば・・・じょ、女性の方から手を握ってもらえます・・・。」



誰か、汚れきった思考をする私の頭を殴ってください。


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