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おいでませ二人目





ドアがノックされたので、取りあえず中に入るように「どうぞ」と促したら、ドアの外から声をかけられた。


「えり、そこに向井がいるのか?」



この声は・・・



「石川?」



向井さんのその言葉に、ドアの外から「やっぱりか」と返答があった。


こちらとしても"やっぱり"案件だよ。やっぱり声が聞こえてたよ。

石川さん起こしちゃったよ。

謝れば良いのか?あーでも、今までの様子だったら、私が怒られるようなことは無いような気がするな・・・。となれば、向井さんだけが怒られそうだし、私がこの部屋に彼を呼んだことを告げれば誰も怒られずに済むかな?


「向井、なんでえりの部屋に入ってるんだ。」


ほれ来た。

私が出て行ってから話した方が、角が立たないね。


というわけで、向井さんが何か答えようとしたところを制して、私がさっとドアのところまで行って開ける。


「あ、石川さん。ちょっと、向井さんとお話をしていたんです。それで部屋に入ってもらっていて。」


ちょっと不自然すぎたかな。でも、彼が何か言う前に何をしていたのかは言ってしまいたかったので、まくし立てた。


「ドアを開けますので、ちょっと離れてください。」


ドアは廊下側に開くようにできているので、ちょっと声をかけてからドアを開けた。

すると、寝間着なのだろう。Tシャツにスウェットというラフな格好をした石川さんが立っていた。


「えり、ちゃんと眠れたのか?」


ドアを開けてからの台詞がいきなり私への心配。そんなに心配されるようなことでもないし、むしろ全員の寝不足は私の説明不足のせいなので、申し訳ないと思うのは私の立場だ。そんなに気を遣わないで欲しい。


「寝てませんけど、私はある程度寝ていたので、眠気がまったく無くて。心配していただいて、ありがとうございます。」


間髪入れずに寝ていない理由と、心配してくれたことに対するお礼を言うと、石川さんは心配そうな視線を向けながらも、「それならいいんだけどな」と言って、部屋の中にいる向井に視線を向けた。


「それでも、こんな早朝にえりの部屋に入るのはちょっとデリカシーが無いんじゃないか?」


石川さんの棘のある言葉に、向井さんは少しむっとした。

向井さんは泣きそうな顔だったり嬉しそうな顔だったり慌てた顔や驚いた顔、個性豊かに表情をころころ変える人だと思っていたけど、むっとした怒ったような表情を見るのは初めてだ。

ちょっとビックリしてしまい、向井さんのフォローを咄嗟にできなかった。


「確かに、こんな早朝にえりの部屋に入るのは失礼なことだとは思いますが・・・それは今言う必要はないでしょう。」


そう言いながら、向井さんは私の方をちらっと見た。

あー・・・。私の目の前で指摘されたことに対して、不機嫌になっている感じなのかな。

男の人ってプライド高いもんね。

って言っても、こういうのは男とか女とか関係ないかもしれないけど。私もこの歳になって、他の人の目の前で注意されたらちょっと恥ずかしいし。


下手に私にかばわれたら、向井さんのプライドが傷つくかなぁとも思うが、事実は話しておかないと、向井さんについて石川さんが誤解したままなのは良くない。というわけで、ちょっと妙な雰囲気になってしまっている二人の中に入らせてもらおう。


「えっと、向井さんは私の部屋に入るのには躊躇していて・・・。」

「えり・・・。」


私が石川さんに向かって話し始めると、向井さんは私の言葉を制止するかのように名前を呼ぶが、それはそれは弱い呼び方だったので、制止にはならない。

というか、さっきから思っていたんだけど、二人は睨み合っているだけで、お互い一向にそれ以上言葉を発しようとしていない。石川さんの方はなんで何も言わないのか分からないんだけど、向井さんの方は、これ以上何かを話せないのかもしれない。

彼がこの部屋にいるのは私が連れ込んだからであって、彼の希望ではなかった。それで話をしているのも私からの提案なので、彼は私の要望を通してくれただけなのである。さっさとそう説明すれば良いものを、石川さんの(おそらく)誤解を解こうとはせず、石川さんの注意してきたことに対する反論しかしなかった。そこから、ある仮説が立てられる。

女が男を部屋に連れ込んで話し込むことは、外聞が悪いのではないか。


向井さんは私の女としてのプライドというか、外聞を守ろうとしているのではないかな。

考えすぎ・・・?

まあ、そうでなかったとしても、そうであっても、私のとる行動は一つだ。


「向井さんが廊下にいたので、私が部屋に招いたんです。向井さんも眠れない様子だったので、お互いを知るために話し相手になってもらいたいと思って。」


嘘をついたり、誤魔化したりするのは苦手だし、いつかボロが出る。一緒に暮らしているのだったら尚更だ。

だから、私の方の意図(向井さんが眠たくなるように誘導しようとしていたこと)に関しては隠しておくが、事実はきちんと話すべきだろう。


というか、外聞が悪いとか悪くないとか、気にしろと言われても私達は(本意ではないけど)夫婦なのである。お互いの部屋に行き来するのに制限がある方が面倒だろう。

別に部屋に入ってきても気にしないし。

自分の父親が勝手に部屋に入ってきて部屋のものをあさったりされることなんてしょっちゅうだったから、感覚が麻痺しているのかもしれないけど。

この世界じゃあ私は暮らしていくのにもいちいち人に聞かないといけない、右も左も分からないのだから、部屋に彼らが入って来れない方が面倒なのである。

と、言うわけで・・・。


「石川さんも、眠れないようなら、部屋に入って話しませんか?」


これで彼も部屋に入れば、夫三人コンプリートである。




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