眠気よ・・・。
更新がかなりあいてしまい、すみません。
ちょっと仕事が忙しくて、徹夜で仕事をする日々が続いており、10月は更新できると宣言できません。
不定期更新になります。
未だ読んでいただいている方がいるそうで、本当にありがたく思っております。
これからも、よろしくお願い致します。
「それで、眠れないってことは、何か気がかりなことでもあったんですか?」
「い、いいえ。気がかりなことなどは・・・。」
単刀直入に質問しても、返ってくる言葉は「何もありません」のみだった。うん、そりゃそうか。出会って三日程度の人に対してそんなにべらべら喋れないよね。
それともアレかな。
寝ないで徹夜した後に、妙に頭が興奮して、反対に眠れないってヤツかな。
となれば、彼が眠たくなるまで話し相手くらいは買って出たい。責任感じてるし。
「えっと、それじゃあ眠たくなるまで私とお話しませんか?」
「え!!え、えりとお話・・・!?」
そう言って向井さんは突然立ち上がった。
その顔は、私の提案に対して「信じられない」と言わんばかりの驚愕が全面に表現されており、思わず私の言った言葉が不味かったのかと疑ってしまうほどだ。
お話は今もしてるから別にわざわざ言う必要が無いかもしれないけどさ。そんなに驚かなくてもいいんじゃないかな。
「えりとお話をするなんて・・・私がそんな大役を任されても良いのでしょうか・・・!」
どんな大役なんでしょうか。
むしろ貴方を眠たくさせるという私の役割なので、大役を任されるのは私の方である。
「向井さんが眠れなかったのは私の責任なので、せめて眠たくなるまで私が話し相手になれないかな、と思って提案したのですが・・・」
「な!と、とんでもない!!えりが気にするようなことはありません!昨夜眠らなかったのは私の失態なのですから!!」
向井さんはさらに興奮して、声が大きくなっていく。
部屋の中とは言え、廊下にも聞こえるんじゃない?武田さんと石川さんはまだ寝ているので、できればもう少しボリュームを下げて貰いたい。
「向井さん、もう少し声を抑えて・・・。」
「あ、ご、ごめんなさい・・・。」
私が軽く指摘すると、すぐにしょんぼりして、静かにイスに座る。
いや、そんなあからさまに落ち込まなくても・・・。
ちょっと注意しただけだよ・・・。
まあ、静かにしてくれたんだったらいいか。
さて、このまま向井さんとどちらが悪いか悪くないかの話をしていても、きっと埒があかないので、話をする目的を変えさせてもらおう。そっちの方が、話をすることに対して向井さんが気負わずに済むだろうし。
「私が、何が嫌だったのかちゃんと言わなかったから、こんなことになったんです。そうだ、せっかくお話をするなら、お互いのことを少し話しませんか?今後、同じようなことが起きないように。」
ちょっとわざとらしかったかな・・・。
強引に話をすることに話題を移したけど、向井さんは気がついただろうか、とちらり彼の表情を伺うと、
なぜかとても嬉しそうな顔をしていた。
「えりのお話を聞けるんですね・・・!わかりました。是非、お話させてください!」
いや、貴方のことも話して貰うからね。
ちゃんと話をする機会を得られたからいいけどさ。向井さんも多少興奮気味だけど、話をしていると眠たくなってくるよね。
というわけで、私たちは向井さんが眠たそうになるまで、おしゃべりをすることになった。
「向井さんは、休みの日なんかはどういう風に過ごしているんですか?」
「そうですね。私は、あまり体力がある方ではないので、休みの日は午前中にジムに行って、午後からはゆっくりして身体を休めています。」
「ゆっくり身体を休めるってことは・・・テレビを見たり?」
「はい。気が向いた時には、DVDをレンタルしてきて、それを見ながらお菓子を食べたり・・・。」
「この世界のテレビ番組や映画なんかを私は知らないので、またおすすめなんかがあったら教えて下さい。」
「はい!私のおすすめの映画で良ければ、ぜひ!!えりが楽しめるようなものをピックアップしておきますね!あの、差し支えがなければ・・・えりの好きなジャンルなんかを教えていただきたいのですが・・・!」
んん!?ちょっと待って、比較的穏やかに会話ができるように、日中の過ごし方っていう世間話をチョイスしたのに、向井さんのテンションが少しずつ上がっていってない?気のせい??
会話文にビックリマークが出てきているように感じるんだけど、彼の眠気が吹き飛んでる感じがしますよ・・・!
えっと、これどうやってかわせばいいんだ・・・。
本当のことを言っとく?まぁ、変に話を流したら、妙な雰囲気になりそうだし・・・。
彼のテンションをクールダウンさせよう。
嘘を言っても、後でばれたら意味がないので、好きなジャンルは置いといて、別の切り口で会話を成立させよう。
ええっと・・・。
「これと言って好きなジャンルっていうのは無いんですけど・・・。ホラーやバッドエンドものは苦手ですね。」
「ホラーとバッドエンドが苦手なんですね・・・!えりが苦手なものは、この家から抹消しておきましょう・・・!さっそく、今日のうちにあの二人にも伝えておきますので、ご安心を!!」
だめだ。
なぜかテンションが上がるだけじゃなくて、義務感まで抱かせてしまった。
というか、私が苦手な映画のジャンルだからって、家から排除する必要は無いんじゃないか!?
そこまで徹底してくれなんて言わないしさ、むしろ、私が嫌いな映画もリビングで見て欲しいよ。
変に遠慮されたら、それこそストレス溜まるわ!
「いや、別にそんなことはしなくてもいいです・・・。三人とも、私が苦手な映画でも見て下さい。」
「そんな!そんなわけにはいきませんよ!だって、えりが苦手な映画やドラマを、えりがたまたま見かけてしまったら・・・!ホラーやバッドエンドものを見て、えりが夜眠れなかったら・・・!!」
ただ寝不足になるだけだと思うんだけど。
それは運が悪かっただけでしょうよ。誰の責任ってことも無いよ。
「えりの苦痛と引き替えに、一瞬の娯楽を得るくらいならば、そんな娯楽などいりません!えりが眠れない方が、私にとっては苦痛なのです!!」
ああだめだ。
ヒートアップしてるよ。
完全に目が覚めたよね。もうこれで寝ようなんて言っても眠れないよね。絶対無理だ。
私の苦痛とか言いますが、別に苦痛とか思ってないし、それほど私が苦痛を感じることに敏感に反応しなくて良いと思うし、むしろ過保護に度が過ぎる今の状況の方がストレスなんだけど・・・
これを言うと、さらにヒートアップして、全力で謝罪してきて、離婚しますとか言い出すんだろうな・・・うん、正直に言えないな。
となれば、なんと言えば良いのか・・・。
もう彼を寝かせることは取りあえず置いておいて、今は彼があの二人を変な理屈で妙な説得をしないようにするために、どうするべきかを考える。
しかし、良い案が出てこない。
「えっと、あのね、向井さん・・・。」
と、私がまとまらない考えを、なんとかまとめようとしているところで、ドアをノックする音が聞こえた。




