意外と響いていた
確かに今はまだ5時半。少し眠たいから、一時間くらい仮眠した方が良いのだろう。
だけど、どうにも眠れない。
私はここ二日三日で、男の人に大切にされすぎていた。
私に直接言っていた言葉以外でも、この世界の男の人は女の人をとても大切にするし気を遣うし、嫁に対しては溺愛とも言えるくらいの甘さを披露してくる。
それをどうしようもないからって止め様もなくされるがままにある程度は受け入れていたけれど、ちょっとそれに感化されすぎていたのかもしれない。
普段の私だったら、可愛いと連呼されたりしてもそれを取り上げて反論したりしなかったし。ただの社交辞令、又は何か企んでいるか、テキトーに言っているだけかって相手にもしなかった。
あんな、「希少動物じゃないんだから」なんて夫たちに反論したら、それに対して「希少動物と思ってるわけじゃないんだよ!」って否定が入るに決まってる。それは別に優しい夫じゃなくても誰だってすることだ。
反論して欲しかったからあんなことを言ってしまったんじゃないの?私。
「えりのことを大切にしてるんだよ」って言って貰いたかったみたいな行動みたいじゃん。
構って欲しいアピールみたいじゃなかった?
気持ち悪くないコレ?
余裕がなくなっていたからと言っても、あんな台詞がサラッと出てしまったなんて、私、あの夫たちに愛されたいとか一ミリでも思ってたんじゃないの?
あの台詞に態度、まるでツンデレみたいじゃん。
ツンデレだってね、デレたときに可愛げのある子じゃないと、効果ないんだからな!
今までの付き合ってきた彼氏だって、初めは優しかったけど、慣れてきたら粗雑な扱いだったじゃん!
愛されたいとか思ってても、愛されるような人は可愛げのある女の子くらいなんだからさ。
ああもうどうしよう。あの夫たち相手に、どう接して良いのかわからない。
何が正解なの?
どう行動したら良いの?
私この世界に来てから彼らにどんな態度とってたっけ?
頭がごちゃごちゃして、思考がまとまらない。
なんで私こんなに動揺してるんだ。
初恋でもあるまいし。今まで彼氏もいたし、することもしたでしょ。
目を瞑って精神を安定させようと、深呼吸する。
けれど、落ち着きそうになったら、瞼の裏にはあの石川さんの真剣な表情、その唇の動き。耳に残る「珍しいから可愛いって言ってるんじゃないぞ。えりだから、だ。」という低音ボイス。
石川さんだけじゃない。武田さんも、向井さんも、本当に優しそうに嬉しそうに・・・愛おしそうに私に向けた瞳。
全部、頭の中にしっかり残ってる。とても鮮明に。
それらの光景が流れて、何故か私の胸を揺する。
彼らの全てが本当に私に向けられた情かそうではないのかを見抜けもしないのに、乱されてどうするんだ。
ああ、もう・・・!
「イケメン爆発しろ・・・。」
眠れぬまま時間が経過し、頭の中に流れる彼らの光景も拭えず、結局何か時間を潰すものはないかと考えてネットサーフィンをすることにしました。
昨日は結局できなかったからね。寝間着と部屋着を買おう。それで頭をリセットしよう。
「やっぱり、可愛らしい服が多いよね・・・。」
ワンピースが多いんだよねー。こう、パジャマっていう感じの、ズボンってあんまり無いからなぁ・・・。昨日購入したパジャマと色違いならあるけど・・・。うん、まあ、色違いでもいいか。誰かに見せるためのものじゃないし。「色違いばっかりじゃん。センスねぇな。」なんて思われてもどうでもいいよね。そう、別にどうってこと・・・
(え・・・。えり、またその寝間着?)
・・・なんで頭に武田さんの姿が出てくるんだ。別にいいじゃん、同じのを着てないんだし。色が違うだけだし。女子力も元々ないからね、そんなの望まれても困る。
妄想の中の武田さんの声を振り切って、色違いの寝間着をクリックした。うん、これでいい。
むしろどん引きしてくれた方が、変に可愛いとか言われなくなるだろうし、反対に良いことなんじゃないの?そうしたらあの三人も落ち着くでしょ。
「よし、はい!購入画面にいこう!」
なんか妙な気持ちになりそうなところを無視して、服のサイズも設定して、さっさと購入画面に向かった。
現在の時刻、6時前。またすることが無くなった。
もう起きてしまおうか・・・。でも、一人でリビングにいても、テレビを見るくらいしかすることないしなー。じゃあ朝食を作ろうか、と思うんだけど、一人でご飯作らないでねって言われたし・・・。三人ともまったく寝ていないようだったし、起こすのは悪いもんなぁ。
どうしよう、完全にすることがない!
かと言って眠ろうとしてもまた妙なことを思い出しそうだし。
「何か時間を潰すのに良いものはないのかなー・・・。」
と、ベットに腰掛けてじーっとしていたら、どこかでドアの開く音が聞こえた。
廊下の方からである。
ドアを開ける人物ってことは、三人のうちの誰かだろうけど・・・あれ、寝てるはずじゃなかった?
することもないので、廊下を覗いてみる。
「えり?眠れなかったのですか・・・?」
そこには、寝ているはずの向井さんがいた。




