疑問点
まぁ、三人の反応は置いておくとしよう。
画面が変わるごとに、「可愛いな。」「可愛いよね。」「可愛いですね。」と明らかにこちらを生暖かい目で見ていて訂正したくて仕方がないが、言い返しても強がりに見えてしまって結局生暖かい目線を向けられることに変わりないだろうし、
何よりちょっと気になることが出来た。
そう、この動物たち。
さっき最初に画面に見えたのは、パンダだった。
パンダって、日本にもともといた動物じゃないよね…。
あ。
そういえば、前に友達が、パンダの語源って初めてパンダを見た人が中国語を使って「パン(太ってる)だ」って言ったところからだって言ってたな。
もしそうなら、パンダは中国語ありきの名詞になる。
中国語がなければ存在しなかった言葉だ。
そういえば、ふつうに使ってたけど、インターネットとか、テーブルとか、って…もともと日本語だったか?
違うよね、あれってもともと英語だよね。
うわ…何も疑問に思わずに使ってた。
通じてたし、違和感なかったけど。
これじゃあ、
日本語が共通語
というより、
ここ最近日本で使われている言葉が共通語
にならない…?
私の考えすぎ?
それとも、この世界は前からインターネットって言葉を使ってたりしたのか?いやいや、いずれにしろ、ピンポイントで名詞が同じになることが奇跡だよ。
言葉が通じるんじゃなくて、物を指す言葉も一緒なんだもんな。
この世界に来た時に、田中さんに説明されたことは「今我々が話している言葉が、この世界の共通語であり、異世界からいらっしゃる女性は皆この世界の言葉を難なく話せるので、おそらく同じ言語だと思います。」
というものだった。
初めにこの話を聞かされた時は、ちょっと信用してなかったのもあって流していたけど、言語が日本語で統一されてるってなんか不思議な話だ。それにもかかわらず人種は様々いる、とも言っていたし。
人種が様々ってことは、環境が異なる地域があるってことだよね。それぞれの祖先はどこかで繋がるかもしれないけど、環境によって進化が異なったんじゃないのかな。
それなら尚更、言語が日本語で統一されるのは変な感じだ。たまたま一緒なんて有り得ないし。
唯一考えられるとしたら、この日本語を使う国が、全世界を統一した、ってことだけど…。
あぁ…分からん。
何も分からない上に、仮説だらけで頭が混乱してくる。
これ、この世界で暮らしていくなら、この世界の地理や歴史も一から勉強した方がいいんじゃない?いや、確かに私は家から出ないけどさ。これから先そんな状況が永遠に続くと保障がないわけだし。
むしろ外に出て働ける状態になったら、すぐに働きたいわけだし。そう考えるなら、勉強して損はないね。
勉強することで、あの夫たちの現状を知ることもできるかもしれないし。
さて、それじゃあ資料を集めるところからだけど、何から手をつければ良いか…
私がぐるぐると考えを巡らせていると、知らず知らずのうちに、テレビを睨みつけていたようだ。
ふいに視線を感じた気がして目を向けると、三人はちょっと戸惑いながらこちらとテレビを見比べていた。
「え、えり、嫌いな動物でもいましたか?」
「えっ、いや、いませんでしたけど、…」
「ほんと?なんか、積年の恨みを込めたような視線を向けてたから、ちょっとびっくりしたよ。」
それ一体どんな表情なんだ。
見たことないわ。
「この番組は嫌だったか?」
あの三人の中でも比較的フランクな石川さんが、ちょっとこちらを伺うように聞いてきた。
そんなにひどい顔してたの?
それほど気を遣ったような態度をとられると、ちょっと悪いことをした気がするよ。
「いえ。動物の名前も、私のいた世界と変わらないんだなーって思って、ちょっと考えていただけです。」
その言葉で場が収まるかと思ったが、この言葉が三人の興味を引くことになった。
「えりのいた世界も、同じ名前だったんですね!」
向井さんが食いついた。
「へぇ!じゃあ犬とか猫とか小動物は家で飼えたりできたの?」
「動物の見た目も一緒なのか?」
武田さんと石川さんも食いついてきました。
あぁ、そっか。確かに、異世界から来た人で記憶があったのは私だけだもんね。多少記憶を取り戻す人もいたって言ってたけど、それでも多少だし。異世界のことって興味あるよねやっぱり。
「全部同じ名前か分からないのですが、今見たのは同じ名前でした。見た目もおんなじだと思います。、」
「そうなのですか…!それじゃあ、えりは動物の番組は見ても楽しめますね!」
何を喜んでるのか分からなかったけど、私が理解できる番組があることに対しての喜びだったみたいだ。
ありがとうございます。
でもそんなに尽くしてくれなくても離縁しませんよ。尽くしてもらえなくても心身の苦痛と思わないし。
「犬や猫、その他様々な種類が飼えましたよ。許可されているものに限りましたけど。蛇とかカメレオンとかは比較的簡単に飼えました。」
「え!へ、蛇!?危なくないの!?」
「もちろん、毒がないやつだよな?」
あれ、この世界って蛇は飼えないのか。でも蛇って管理難しそうだからなぁ。男一人暮らしとかで飼えるものかな。無理そうだよね。
「毒がない蛇だったと思いますけど…飼ったことがないのでわかりません。ごめんなさい。」
「あぁ、謝らないで!変に聞いちゃってごめんね!ちょっとびっくりしちゃって。でも、よかった。えりが蛇好きで飼ってたんなら、この世界では飼えない分不自由しそうだから。」
仕事に行けない現状に不自由しそうですけどね。
まぁそれは仕方ないことだからもういいけど。
「他にもえりの世界はいろんな生き物が飼えそうだな。」
「えりの世界の話、聞きたいです。」
向井さんと石川さんが楽しそうだ。こういう話好きなのかな。
じゃあ、相互理解のために元の世界のことを話していこう。私が何を知らなくて何を知ってるのかを、夫たちに分かってもらうのにも役に立つし。
「…じゃあ、それはまた後でだな。お風呂が沸いたみたいだ。」
風呂場からピー、ピー、と音が聞こえる。
向井さんと武田さんが少し肩を落としたけど、これからまだまだ機会はたくさんあるもんね。
取り敢えず動物の話は一旦御開きとなった。




