テレビの時間
ちょっとリアルの方が忙しくなりそうで、更新頻度が下がります。
読んでいただいている方、本当にごめんなさい。
夕食を終えて、向井さんと石川さんが皿洗いをしているところで、武田さんがお風呂掃除を買って出た。
えーと、これ、私がまたお風呂掃除手伝うとか言ったら昨日の混乱が再び起きるんだろうな。
手伝えない・・・。
テーブルをさっさと拭いて、やることがなくなった私に、石川さんが気がついてくれた。
「えり、風呂の用意をしに行ったらどうだ?」
「そう、ですね。」
それしかすることないもんね。
仕方ないか、と諦めて部屋に戻ってお風呂の準備をすることにした。
結局、あの夫たちがいろいろと世話を焼くので、家事をすることはできるけど、4人で分担しているのが現状だ。
夫たちが仕事をしだしたら、状況は変わるのだろうし、
私がこの世界の生活に慣れたら、あの三人も多少は安心していろいろと任せてくれるようになるだろう。
それまでは、我慢しなければ。
昨日着ていた部屋着は洗濯してしまってまだ乾いていないので、新たにクローゼットから寝間着を取り出す。
昨日と色と柄が少し違うけれど、ワンピースです。脛を見て挙動不審になる武田さんも、今日これ着たら昨日と合わせてワンピースは二回目になるし、目も慣れてくれるよね。
下着も準備して、化粧室からリビングに向かう。
もちろんまだお風呂は溜まっていないし、三人とも、それぞれやることが丁度終わったところだった。
時間が余ってしまった。何をしよう。
手持ちぶさたで突っ立っていたら、武田さんがこちらに気がついた。
「あ、えり。お風呂が溜まるまで、あと20分くらいだから、着替えを洗面所に置いてきて一緒にテレビ見よう?」
今日は武田さんがぐいぐい来るな・・・。嫌ではないけど、さっきのことで気を遣わせているんだったら申し訳ない。
けれど、その誘いを断るのも余計に面倒なことになりそうだったので、言われるがまま洗面所に着替えを置いて、リビングのテレビのところまでいく。
もちろん、武田さんだけじゃなくて向井さんと石川さんもいた。
向井さんは新聞を見て、「今の時間に放送している面白そうな番組は・・・。」と呟いているし、石川さんもテレビのチャンネルを回しながら、現在放送中の番組を確認しているようだった。
テレビはこの家に来たときに気がついていたし、家にあったテレビより大きめだから、これで映画を見たら迫力ありそうだとは思っていた。けれど、誰も見ようとしなかったから、私が知っているテレビとは違うのかと思っていたけど・・・こういうところも前の世界と同じらしい。
もちろん、芸能人とかニュースキャスターとかは知らない人ばかりだろうけど。
「えり、どんな番組が見たいですか?」
「どういう番組があるのか分からないので、三人の見たいと思う番組でいいですよ。」
「ふむ。バラエティとニュース、ドラマ・・・ドキュメンタリーその他この時間はいろんな番組が放送しているからな。」
三人もあまりテレビを見ない方なのかどの番組が良いと主張をすることはないし、自分が見る番組を探すというより、また別の視点で選ぼうとしている様。石川さんがテレビのチャンネルを変えて、その度に三人でああでもないこうでもないと話をする。
「ニュースの方がいいんじゃないのか?この世界のことも知れるし。」
「ええ!どうせ初めてテレビを見るんなら、楽しいやつがいいよ!バラエティとかは?」
「えりは女性ですよ?ドラマの方が見やすいのではないですか?」
私に見せるのにどの番組が良いのか、という視点の言い合いだ。
別に私はなんでもいいんだけど・・・。何を見てもきっと分からないだろうし。
「でも、ドラマって連ドラでしょ?前の話を見てなかったら、話が分からないと思うよ。」
「それを言うなら、バラエティもそうでしょう。知らない人間がトークしてるのを見ても面白いのですか?」
「じゃあニュースだな。」
「いいえ、ニュースは、もしかすると暗い話があるかもしれませんよ。えりを怖がらせる気ですか?」
別に怖いニュースを見ても、怖がったりしないと思うけど。あ、もしかして、この世界のニュースって情報規制とかないのかな?生々しい殺人事件の写真を載せたりとか?えーそれは夢に見そうだから嫌かもしれない。
ポチ、ポチ、と石川さんがチャンネルを変えながら言い合いをしているので、いろいろな番組が4、5秒ごとに変わる。
私はテレビの前にあるソファに座って、三人の言い合いをBGMに、チャンネルが変わるのを眺めていた。
それにしても、番組数が結構ある。おそらくバラエティとか、ドラマとかニュースとか、たまにそれらのジャンルとは違う番組もあった。料理番組も、夜にやっているらしい。ああ、そっか、男の人がほとんどの世界だし、男の人は日中仕事に行っているもんね。これくらいの時間に料理番組してないと、皆見ないのかな。
そしてまたポチ、とチャンネルが変わる。
「あ。」
「えり?」
「どうした?」
「何かありましたか?」
思わず出た言葉に、三人が言い合いを一瞬で止めて、こちらに顔を向けた。
ええと、そうやってこちらに意識を向けられても、困るんだけど・・・。
「いや、ええと、何もないです。」
ほんと、思わず出てしまった言葉だったので、気にしないでほしい。
そのつもりで、何もないですアピールをしたら、三人が今映っているテレビ画面に視線を向けた。
あー。見ちゃったよ・・・。
なぜかそこから三人が無言で、それぞれソファに座る。あーもう、思わず声が出ただけなんだって。これを見たかったわけじゃないんだからさ。その、空気読んでますアピールをしないでよね!
「えり、子鹿ですよ。かわいらしいですね。」
うるさいな!
動物可愛い~って言うタイプじゃないのは分かってるんだから、黙っててください!
そういうのはかわいらしい女の子が言ったりするもんなんだって分かってるし。自覚しているし。
だいたい、私は動物を見たくて声を思わず出してしまったんじゃなくて、この世界の動物も前の世界と同じなんだなぁってところに驚いて声を出しちゃっただけなんだよ。
別世界に来て、鹿とか羊をテレビででも普通に見れたらちょっと嬉しくなるでしょ?同じなんだねーって安心するでしょ?
それだけなんだからさ、だから、そんな三人とも嬉しそうにテレビ見るのやめてもらってもいいかな!
「アライグマだって。可愛いなぁ・・・ね、えり?」
くそう・・・。




